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Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第2章 異世界での冒険 
20/59

オーガとの契約

「簡単な話だ。当時の犯行現場を俺達が見ればいいのさ。」


 クリスタルの一言に、ボスオーガはさらに怒りを露にする。


「そんな事が出来ると思っているのか!? それが分からないくらい、人間はバカなのか!?」


「そうかぁ?」


「大体『時間を遡る魔法』は一部の者を覗いて禁忌とされているだろう! それも分からないのか!?」


「俺達『オールメイト』が出来る、って言ってるんだから、出来るんだよ。な、ルーグ?」


「……絶対俺を使うと思った。」


 クリスタルの言った『オールメイト』という言葉に、オーガ達は固まる。その後一気に騒めきだした。


「『オールメイト』って、あの『オールメイト』か……?」


「確か『神をも殺せる集団』だと聞いたが……。」


「本当に『オールメイト』っていたのか……?」


 一同が騒めく中、ボスオーガはクリスタルとルーグに問う。


「証拠はあるのか? お前達が『オールメイト』だという証拠が!」


「証拠はこれから見せる。ルーグが。」


「はぁ……。仕方ないな。」


 ルーグは種を一粒取り出しその前で手をかざす。すると種は芽を出し根を張り、みるみるうちに成長し洞窟全体を緑で覆いつくす。洞窟が緑一面になったところで、今度はかざしていた手でパチンと指を鳴らした。今度は植物の成長過程を逆再生するかのように戻っていき、最後は一粒の種になった。


「これが俺の能力の『時間操作』です。信じて貰えましたか?」


 その場に居るオーガ達は唖然としており、開いた口が塞がっていない。クリスタルが固まっているボスオーガの頬をペチペチと叩く。


「で、信じるのか? 信じないのか? 何なら俺の『空間操作』も見せるぞ?」


「あ、あの、いや、ダイジョウブデス……。」


「それなら『オールメイトだと信じた』って事だな。」


「ハイ。」


 未だ固まっているボスオーガに、ルーグが問う。


「そろそろ本題に入ります。俺がさっきの『時間操作』でブヤマキ領主の過去を『見ます』。過去で貴方達を嵌める計画を実行している現場を見たら、俺達は貴方達の仰ったことを信じます。」


「そ、それは有難いが、信じて貰っただけでは何も解決しないし……。」


「お前達が俺達に『依頼』すればいい。『今回の事を無かった事にしてくれ』ってな。」


 クリスタルの言葉にオーガ達が騒めき、ボスオーガがクリスタルにすがる。


「そんな事が出来るのか!? 本当に、あんな事を無かった事にできるのか!? 俺達は、元の生活に戻れるのか!?」


「出来るさ。ルーグが『時間操作』した世界が正史となるんだからな。今のお前達を変え、『何事も無かったお前達』になる。嵌められた時間軸そのものが無くなる。それだけだ。」


「それなら、頼む! 種族を代表として、貴方方に頼みたい! ブヤマキ領主に嵌められたことを無かった事にしてくれ!!」


 ボスオーガはクリスタルとルーグの目の前で土下座をする。続いてその場に居るオーガ達も土下座をする。


「お願いします! オールメイト様!」


「病で亡くなったあの子を返して下さい! お願いします!」


「どうか助けて下さい!」


 そのオーガ達の様子を見て、ルーグがクリスタルに言う。

 

「クリスタル、オーガ達が嵌められた事が本当なら、契約書を書いてもらって手助けしたい。いいか?」


 ルーグの願い出に、クリスタルはニヤリと笑い頷く。


「いいぞ。まず『犯行現場』を観ようじゃないか。」


 クリスタルはオーガ達に向けて、こう言った。


「今から『犯行現場』を見る。確認出来たら契約書を書いてもらう。書く物の準備でもしておいてくれ。」


 ______


「これはこれは……。真っ黒な領主サマだな。」


 クリスタルとルーグの目の前には『犯行現場を映したディスプレイ』が浮かんでいる。ルーグはディスプレイに触ると、ディスプレイの中の時間を『戻す』。


「クリスタル、ここ。さっき誘拐の犯行を証言した冒険者が、ブヤマキ領主と話してる。」


「どれどれ……、音声でも聞くか。」


 クリスタルがディスプレイの画面をタップする。すると何処からともなく声が聞こえ始めた。


〈よくこちらの依頼通りの護衛と証言をしてくれた。これが報酬だ。〉


〈ありがとうございます。ところでさっき『メツマ嬢がオーガに攫われた』っていう『嘘』、何でつく必要があったんですかね?〉


〈オンシー集落には、希少な鉱石を採掘できるヤマイワ坑道がある。それが欲しいだけだ。後はオマケでオンシー集落の名産があれば、という所だ。〉


〈嘘つくなら、俺達が本当にバチク領までの護衛をしなくても良かったんじゃないのか?〉


〈『護衛を付けて外出していたのを見た』という裏付けも必要なのだ。これだから庶民は……。〉


 この言葉を聞き、ボスオーガが怒号を上げる。


「このッ、腐れ外道領主が! そんな事のために我々を……ッ!」


「今の発言が証拠だな。」


 クリスタルがディスプレイをスワイプすれば、ディスプレイは何もない空間に消えていった。ルーグはボスオーガの目の前に、『契約書』と書かれた紙を置く。


「俺達に『嵌められた事を無かった事にしたい』場合、文章を読んでサインをして下さい。文字が書けないなら、インクで指の跡をとります。」


「文字は書けるから大丈夫だ。文章を読ませてもらおう。」


 ボスオーガが『契約書』の文章を読む。


 1,オールメイトは必ず依頼を達成する事。

 2,依頼者は必ず対価を支払う事。対価は金や物以外も可とする。

 3,契約内容は他言しない事。

 4,依頼達成後、どのような結果になってもオールメイトは責任を負わないものとする。

 5,依頼遂行中に依頼破棄を希望の際、遂行した分までの対価を支払う事。


 文章を読んだボスオーガが、クリスタルとルーグに問う。


「お二人さん、俺達が払う『対価』は何だ? 金も食料もない俺達が支払えるものなんて、何もない。これじゃ契約できない。」


「対価は『何事も無かったお前達』に支払ってもらう。契約を覚えていなくても、ちゃんと貰うぞ。」


「も、もし! 仲間を引き渡す事になる場合、契約書を見せて俺を連れて行ってくれ! あんな事が無くなるなら、奴隷にでもなってやる!」


「俺、人身売買あんまり好きじゃないから、そういう事はしない。安心しな。」


「そうか、仲間に何も無いならいいんだ……。なら、サインをさせてもらおう。」


 ボスオーガはガリガリと軽石で契約書にサインをする。それを受け取ったルーグが宣言をする。


「では確かにご依頼を承りました。今から遂行します。」


 続いてクリスタルが言う。


「次会う時は知らない他人になる。が、あえて言っとく。またな、オーガさん達よ。」


 クリスタルが『空間移動の門』を作り入り込む。それにルーグが続く。大勢のオーガ達に見送られながら二人は空間と時間を移動する。目指すは2か月前のブヤマキ領だ。


「クリスタル。さっさと片づけよう。あれはあんまりだ。」


「奇遇だな、俺もだ。」

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