私の○○の事実 一
「尚侍。主上に呼ばれております。」
「今向かいます、静子。」
翌日、私は主上との謁見が決まっていた。
きっと、父上からの手紙のことだろうと思いながら、裳唐衣を着させられていた。
ちなみに、裳唐衣とは十二単のことで、簡単に言うと、十二単は裳唐衣の別名、みたいなもの。
って、重っ!
初めて着る裳唐衣の重さに私は驚く。国語便覧で見たことがあるけれど、本当に20㎏ありそうでコワい…。
私は、ゆっくり歩きながら清涼殿に向かう。
幸い、女官という立場だからお付の人は桃花のみ。それは、私の出生が関係しているらしいけれど、本当の所はよくわからないんだよね。
なんとか力を振り絞り、清涼殿に到着した。
「主上。伊勢尚侍、参りました。」
「近くに寄れ。」
「失礼いたします。」
一度座ってからすぐに立つの大変なのよ!
と思いながら、私は母屋に入る。
言われた褥に座ると、主上は自分と私付の女官達を下がらせる。
内密にしたいことなのかなぁ。
「伊勢尚侍。」
「は、はいっ。」
名指し、超緊張する。
「そなたは、伊勢国守から文を貰ったそうだな。」
「はい、その通りでございます。」
ちなみに、伊勢国守は私の父上の役職名。
「この度は、その手紙のことについて話すことにしている。」
「して、その要件とは一体何でしょうか?」」
清涼殿の中がシンと静まり返ってから、主上はとんでもないことを口に出した。
「実はな。伊勢尚侍、そなたは近衛家の当主の長女なのじゃ。」