5話 メッセージの真実
カイリ:どういう意味だ?
タクヤ:お前は異世界に転移したんだよ。
カイリ:だからそう言ってるだろ。
タクヤ:奴らがどういう存在か忘れたのか?
カイリ:はあ?
タクヤ:それも忘れたのかよ。
カイリ:………。
タクヤ:だったら教えてやる。すべては二年前だ。突然、世界各地で謎の失踪者が続出した。
カイリ:それがなんだ?
タクヤ:その原因が外宇宙…いや、別次元世界からの介入だと分かったのは最近だ。
カイリ:その話が俺と何の関係がある。
タクヤ:お前は奴らに攫われたんだよ。
カイリ:またUFOネタかよ。
タクヤ:真面目な話だ。カイリはただ単に異世界に転移したんじゃない。奴らに意図を持って召喚されたんだ。
カイリ:はあ?
タクヤ:お前が言ったんじゃないか。異世界の住人になりたいって。
カイリ:それは冗談だよ。冗談。
タクヤ:謎の球体をいい奴だとも言った。
カイリ:本当にいい奴なんだよ。
タクヤ:カイリ、お前が異世界に転移する前になんて言ったか覚えてるか?
カイリ:えっ!
タクヤ:レナちゃんを攫った奴らを許さないと言ったんだ!
カイリ:!!
タクヤ:自分が言った言葉も忘れてしまったんだな。
カイリ:バカ言え!レナちゃんは異世界転移者専用施設のメイドで…。
タクヤ:レナちゃんは俺たちの幼馴染じゃないか!
カイリ:そんな…そんなはずは…!
タクヤ:それがやり口なんだよ。奴らは地球にやってきた侵略者だ。その方法は星を乗っ取る事じゃない。
カイリ:……
タクヤ:記憶や体の構造をいじって自分達の仲間にしてしまうんだよ。
カイリ:俺が改造されたって言うのか?
タクヤ:それしか考えられないじゃないか!
カイリ:もし…もしだ。それが本当だとしたら、どうして今、俺はタクヤにメッセージを送ってるんだ?
タクヤ:………
カイリ:記憶を改ざんされているならこんなやり取りするわけないだろ?
タクヤ:だから腹がたってるんだよ。以前のままの友人の姿を装ってよくも俺にこんな…。
カイリ:信じてくれ。俺はカイリだ。カイリなんだよ!
タクヤ:ずっと信じてくれって言うだな。
カイリ:当然だ。親友に信じてほしいと思うのは当然だろ?
タクヤ:そうやって、俺も奴らの仲間に取り込むつもりか?
カイリ:そうだ。さっきも言っただろう?タクヤもこっちに来ればいいんだ。それで解決じゃないか?
タクヤ:このメッセージを送ってるお前が本当の親友ならいいのにな。
カイリ:俺は本物だ。
タクヤ:どっちにしても嬉しかった。カイリとこうして話せて…。
カイリ:なら…。
タクヤ:だが、忘れるな。お前たちの手は借りない。今度はこっちから乗り込んでやる。
カイリ:………
タクヤ:何年かかっても必ず親友は返してもらうからな。覚悟しておけ!
メッセージのやりとりは終わった。緊張で手が震えている。
空は今日も薄暗い。奴らが現れてからずっとこうだ。
だが、戦いはまだ始まったばかりなのだ。
親友の居場所は分かっている。
後は行動を起こすだけだ。
タクヤの瞳には決意が満ちていた。