4話 カイリの生活
カイリ:俺もよく分からん。
タクヤ:分からんのかい!
カイリ:まあ、快適には暮らしてるよ。
タクヤ:快適って…こっちは心配してるっていうのに。
カイリ:それはありがたいと思ってる。
タクヤ:本当か?
カイリ:本当だって。信じてくれよ。
タクヤ:まあ、そこまで言うなら…。
カイリ:サンキュー。やっぱりタクヤは優しいな。
タクヤ:なんかカイリにしては素直。怪しい。
カイリ:おいおい。人の善意は普通に受け取れよな。
タクヤ:そうは言ってもな…。
カイリ:なんだよ!俺がカイリじゃないって言うのか?
タクヤ:そんな事は言ってないだろ!
カイリ:じゃあ、なんだよ。
タクヤ:別に…。そういえば、快適って言ったけど具体的にはどんな暮らしをしてるんだ?
カイリ:異世界転移者専用施設があるんだ。
タクヤ:なんだその聞きなれない施設は?
カイリ:そのまんまの意味だ。異世界から転移してきた者を収容する施設。
タクヤ:収容って響き、なんか嫌だな。
カイリ:そうでもないぞ。毎日ごちそうにありつけるし、いろんな世界の人たちにも会えるんだ。
タクヤ:へえ~。例えば?
カイリ:そうだな。あっ!隣の部屋にいる男性の世界の人達は食事をしない種族らしい。
タクヤ:珍しいな。それで生きていけるのか?
カイリ:脳と心臓以外は全部機械だから平気なんだってさ。
タクヤ:なるほど。そういう感じ…。
カイリ:後は俺たちのアイドル、レナちゃんとか?
タクヤ:レナちゃん?
カイリ:転移者たちの世話をしてくれるメイドさんだよ。彼女は100年の間、この施設で働いてるんだって。
タクヤ:その人、長生きなんだな。
カイリ:この世界の人達は歳を取らないんだよ。
タクヤ:マジ?
カイリ:いいよな。俺もこの世界の住人になろうかな?
タクヤ:そんな事できるのか?
カイリ:しかも、どんな姿にもなれるんだ。
タクヤ:人以外の物にも?
カイリ:男にも女にも動物にでも姿を変えられる。制限はないんだ。
タクヤ:そうか。それはいいな。
カイリ:タクヤもそう思うだろ。だったら、こっちに来ないか?
タクヤ:俺もそっちに行けるのか?
カイリ:俺が頼んでやるよ。
タクヤ:誰に?
カイリ:異世界を束ねてる人にだよ。
タクヤ:お前はその人に会えるのか?
カイリ:任せろって。その人はいい奴だからな。
タクヤ:ちなみにその人はどんな姿をしてるんだ?
カイリ:彼はツルっとした球体だよ。
タクヤ:はあ…。
カイリ:どうした。大きなため息なんて付いてさ。
タクヤ:思ってた以上にお前、奴らに浸食されてると思ってさ。