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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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城へ凱旋



二人の女の子は怯えながらもそれぞれ名乗ってくれた。

「わたくしはネヴァー国第一王女、グロリアと申します」

「私はウェルウィチア氏族長の長子、ハツユキと申します」

どちらも娘を連れてきてどういうつもり?


「…これはなんの真似だ?」

「儂の娘だ。美人だろう!」

本人が名乗ったのだからわかってるわ! どういうつもりかと聞いてるのよ。 

「ハツユキは私の娘です。竜魔王様にはエルフが精霊とどう関わるべきかとても大切な話をしていただきました。次代を担う娘には今後の為にも教えを説いて頂きたく…」

「儂の娘にも人族として精霊とどう向き合うべきか教えを請いたいのだ」

そういうね…。捕虜とか人質として差し出すとか言うならキレるとこだったわ。 

多分近いものはあるのだろうけど…。それぞれの種族から王の第一子という一番大切な娘を預けてくるというのだから。



「話はわかった。しかし大切な娘だろう。護衛なりメイドなり好きにつけてもらって構わんぞ?」

「いや。一方的なこちらからの頼み事だ、その様な者をつけるというのはアスラ殿を信じていないと言うようなものではないか」

確かにね…。たださぁ、世話まで丸投げされるのは面倒なんだけど? 

はぁ…仕方ないか…。


「わかった。預からせてもらう。お互いの今後のためにもな」

「助かる」

「ありがとうございます!」

精霊のためにも教えて損はないからね。

「怯えているようだし、城へ戻るまでは勇者殿に二人をまかせていいか?」

「いいよー。一緒にいるようにするね」

私の隣にいるよりは、母さん達勇者と居る方が王女達も安心でしょう。




今回の首謀者エルフ達の細かい処遇やら、今後の連絡手段等しっかり話し合った。

「では、なにかあれば国境へと使いを送ればアスラ殿へ伝わるのだな?」

「ああ。間違いなくわかるからな。こちらからは我の子に頼むとしよう」 (まかせてー)

「承知した」

「では、伝えた場所へエルフの生活環境を整えておく。こちらでは移送出来るよう用意だけさせておいてくれ」

「任された。 では娘達もよろしく頼む…」

「大切な客人として扱わせてもらうから安心しろ。 しかしな…やはりメイドの一人くらいつけても構わんぞ?娘も見知らぬ土地に一人では心細いだろう」

「よろしいのか?」

「学ぶために来るというのにあの様に怯えたままでは意味もないからな」

「お心遣い痛みいる…。では少しだけ時間をいただけるか?」

「ああ。勇者殿達も旅立ちの用意を済ませるといい。しばらくはこちらへ戻る暇もなくなるだろうからな」

「そうだな…。聖女殿には重い責任を負わせてしまうが…」

「とんでもありません。寛大な処罰に感謝しているくらいです。できる限りの事をさせて頂きます」

勇者達は特に準備もないというから、魔族領へ来る王女とエルフの子、その二人についてくるメイドの仕度が終わるのを待ち、一度全員を連れてみんなの待つ軍を展開している場所へと転移したのはお昼も過ぎた頃だった。



ーーー

ーー


転移してきたら野営地で丁度お昼ごはんの真っ最中。

「ロアール、撤収だ! 昼食がすんだら全員集めてくれ!」

「はいっ!」

うちの子達と魔族軍が集まるのを待つ間に、無関係だったエルフの人達には私から直接の謝罪と、いくらかの食料を持たせていつでも国へ帰っていいと伝えた。もう全部終り、軍も撤退したから戻っても大丈夫だからと。

まだ不安そうにはしていたけど街には彼らを待つ人もいるだろうからね。

私への恐怖心はなくなったのか、皆にお礼を言われてちょっとびっくりした。



しばらくして集まった魔族軍とうちの子達には精一杯ねぎらいの言葉をかけてから全軍撤収。

魔王城の広場へと転移。


ーーー

ーー



「みなご苦労だった! 今日は家族の元へ戻りしばし休め! 何日か休暇とする」

報酬とかはまたあとから考えるけど、今はとりあえず家族の元へ返してあげたい。心配して待ってるでしょうし。



城内を移動しつつ、次にやることを進めなくては…。

「ノア、エノテラ」

「「はいっ!」」

「客人と使用人二人の部屋の仕度を頼む。勇者殿達も何日か城で滞在してもらうからそちらも頼めるか」

「お任せを!」

ノアが客人を、エノテラが勇者たちを案内して行くのを見送り…。



「未亜、行ってあげなさい」

「…うん」

「私も後で顔を出すから心配しなくていいよ」

「わかったよお姉ちゃん」

「不安ならついてってあげるわよ?」

「リアちゃん…お願いしていい?」

「ええ!」

頼もしい限り。 (ティーも行っていい?)

いいよ。見ててあげて。 (あいあい!)


「じゃあティアとシエル、レウィはリズをお願いね」

「まっかせて!」

「はいなの…」

「わぅ!」

リズはまだ眠そうに未亜に抱かれてたからね…。



「姉ちゃん、僕は?」

「スピネルの力も借りたいし、付き合ってもらえる?」

「わかった」

執務室へ移動し、ナギを呼んだらスピネルも来てくれて助かる。


「ユウキ…おかえり」

「ただいま」

仲の良いことで…。



「みんなお疲れ様。 ロアール、ブルガーは今回の作戦に参加してくれた皆への報酬について相談したいから、二人も考えておいてね」

「「はっ!」」

「後は…今回、首謀者となったエルフたちを私が引き受けることになった。勿論魔族のみんなとは隔離させておくし、接触させるつもりもないけど、領内付近に居ることだけは覚えておいてね」

「竜魔王様、どうしてその様な者を引き取られたんですか?あたしには理解できません…」

「そうね、魔族にとっては大敵だからロアールの気持ちはわかるよ。だからちゃんと説明するね」


まずは魔王としての立場で判断した理由を説明。

人族とエルフが今後争いになるのを防ぐのが大きな目的。あちらでの争いはこちらに影響が出ないとも言い切れないから。

あとはこちらに避難した精霊に判断してもらうため。

それは将来的に人とエルフが精霊と共存していく上で重要になってくるだろうという事。

逆に改心しなければこちらにきたエルフに関しては、下手したら氏族単位で滅ぶだろうけど…。

魔族にとっても精霊を疎かにしないという反面教師でもある。


「後はね、ものすごく個人的な理由だよ。主にこっちのが理由としては大きいのよ」

「そちらを聞かせてください!」

「未亜の家族なのよ…。あの子はこちらに来て初めて顔を合わせただけだけど、首謀者二人はあの子の祖父母なの」

「それは…やりにくいですね」

「未亜にも、未亜の母親にも家族が処刑されるような結果は見せたくなかった…」

「お優しすぎますよ…」

「竜魔王様は確かにお優しいが、これを試練として考えておられるのだから厳しくもあると思うぞ、ロアール。だから我々魔族にとっても反対する理由などないのだ」

「えっ?」

「うん。ブルガーの言うとおり。聖女でもある母親には氏族全体をまとめて改心させてもらわなくてはいけないし、一度愛想を尽かした精霊がまた直ぐに力を貸してくれる程甘くも無いからね。敵地で一切の力もなく、隔離された中で生きていくというのは辛いと思う…」

かえって辛い思いをさせるのかもしれない、それでも命を奪うのが正しいとは思えないんだよ…。



「しかし、そのような土地をどこへ確保されるのです?」

「国境の緩衝地帯にある島の一つを利用するよ。場所はこちらで整えるけど、生活は自分たちでしてもらう事になるからね。最低限の手助けしかしないっていうのはあちらとの約束でもあるから」

「ママはその場所の確保にわたくし達精霊の力が必要だと…」

「ううん。ナギ達に直接手を貸して欲しいわけではなく、これからの彼らを見て判断してほしいの。あのエルフたちの行動をね。スピネルとナギには付近の精霊にもそう伝えてもらいたいんだけどいい?」

「うん…わかった」

「わかりました」

精霊たちなら表だけ改心した風を装っても見破るし、ある意味審判者としては一番厳しい存在になる。

本当に考えを改めれば、また精霊から接触がある可能性だってゼロではない。



「つまり、姉ちゃんは見捨てることもできなかったけど、許して終わりにするつもりもないってことか」

「そうだね。私のわがままといえばそれまでだけどね」

見捨ててそこでいきなり一つの氏族が滅ぶか、一度やり直すチャンスをあげるか…。

攻め込まれた魔族側からしたら許せないの一言に尽きるだろうけど、魔王でもある私の身内って事でなんとか…。


「わかりました! なにか必要なら用意いたします」

「いいの?ロアール」

「竜魔王様のお決めになったことです。あたしは訳をお聞きしたかっただけですから」

「ありがとう。でも、これは本当に私のわがままだから、私に任せてもらえる?村の一つくらいなんとでもなるから」

「わかりました。 ではあたしたちは今回の褒賞について案を出しておきます」

「お願いね」

魔族にとってはうちの両親達勇者を含めて色々思うところがあるだろうに…。

飲み込んでくれてありがとう。














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