日の出とともに
早朝、まだ日が昇る前に起きる。外はまだ真っ暗。
元々、目覚ましが無くても起きたいって思う時間に目が覚めるのは体質かな?
動きやすい服に着替えてっと。
森に行くし露出は控えめ。
最近は未亜ちゃんの勧めで割と露出が多かったからね。脚とか足とか…。
未亜ちゃんはまだ寝てるけど…何も言わずに行くつもりはない。 (おはよー!)
ティー、おはよー。早起きね。 (ママが起きたのわかったからー)
もう少し準備にかかるからゆっくりしててね。 (はーい)
「未亜ちゃん、起きて」
「う…んっ…、おねえちゃん…?」
「起こしてごめんね、私そろそろ行くから。行ってきますだけ言いたくて」
「…はっ! ちょっと待って。ちゃんとお見送りに私も行くから」
「わかったよ」
着替えてる美亜ちゃんを見ないように窓の外を見る。
真っ暗だったわ…。
扉がノックされて、
「アスカ様、起きておられますか?」
アリアさんだね。
「はい。少し前に」
「軽食をお持ちしましたが、どうされますか?」
そっか少し食べてくほうがいいかな?
「ちょっと待ってくださいね」
「はっ」
「未亜ちゃん、大丈夫?着替えは…終わったみたいね」
「うん、大丈夫」
「アリアさん、お待たせしました、入ってください」
「はっ、失礼します」
「アスカ様、おはようございます」
「おはようございます、アスカ様」
ユリネさんも一緒だったのね。カートで食事を持ってきてくれたんだ。
「おはようございます、早くからありがとうございます」
「いえ、これもメイドの仕事ですから、また後で下げに来ます」
そう言うとテーブルに食事のセットを済ませ、珍しく早々にユリネさんは退室した。
「アスカ様、今日私が同行する事は…」
「はい、昨夜王妃様から伺ってます」
「わかりました。あと一人、ルニアも同行してもよろしいですか?」
二人なら大丈夫かな。いざって時も守れるし。
「大丈夫です。ただなるべく軽装でお願いします。怪我をしてる相手を刺激したくないので…」
「了解しました。ではルニアにも伝え、準備して城門でお待ちします」
「はい、ではまた後で」
「はっ、失礼します」
せっかく用意してくれたんだし食べていこう。
「未亜ちゃんも一緒に朝ごはんにしよう?」
「うん…」
食べてる間も未亜ちゃんの口数は少なく、元気がない。
理由はわかっているから心苦しい…。
だから私もかける言葉が見つからなくて。
当たり障りのない会話を少ししただけで朝食もおわり。
出発しなきゃ、そろそろ夜明けが近い。
「じゃあ行くね」
「うん、お城の門までいくよ」
二人で廊下を歩く。まだ働いている人も少ない。
夜勤であろう騎士様やメイドさん数人とすれ違う。
さすがに、城門までのルートは覚えてるからすんなりつく。
「…お姉ちゃん」
急に服の裾を引っ張られる。
「どうしたの?未亜ちゃん」
「私もついていったらダメ?」
これは予想してた。だから私の答えは決まってる。
「私の言う事ちゃんと守るって約束できる?」
「お願い、ワガママ言ってるのはわかってるけど… え?」
「約束できる?」
「うん、絶対守る」
「わかったよ、なら一緒に行こ」
「ありがとう! お姉ちゃん」
未亜ちゃんが言い出さなかったら私から言うつもりはなかった。
守る自信はあっても、待っていてくれるならその方が安心。
でも、ただ待つだけっていうのがツライのもわかるから。
「私が離れるように言うまでは傍から離れないように。森で気になる物があっても勝手に触らないこと」
「はいっ!」
後は何かあったときに言えばいいか。
最初にアレコレ言い過ぎたらわからなくなるし。
城門で、アリアさん、ルニアさんと合流って話だったのに…。
王妃様だけじゃなく国王陛下も、王女様もあるある王子まで?
みんなと一通り挨拶をしたあと、国王陛下から謝られてしまった。
ドラゴンの驚異は国の一大事。それを私に押し付ける形になったからと。
確かにドラゴン一匹で国が滅ぶとかあるから分かるけど。そんなに謝られちゃうとね。
大丈夫だからって説明して、なんとかわかってもらえたかな?
王女様も王子も心配してくれてる。
ホント温かい人達だよ。
「その様子だとやっぱり未亜ちゃんはついていくのね?」
王妃様も予想はしてたみたい。
「はい、行ってきます」
「そう、気をつけてね? アスカちゃんの言うことちゃんと聞かなきゃだめよ」
「はいっ」
ふふっ、なんかお母さんに見送られてるみたいね。
「アスカちゃんも笑ってるけど、本当に気をつけてね?」
「はい、朝早くからありがとうございます」
王族総出で見送られるっていうすごいイベントが朝からあったけど。
ルニアさんが操る馬車に乗り、日が昇りかけた薄暗い中、私たちは出発した。
今日はいつもと違い、軍用みたいな装飾のない無骨な馬車に乗ってる。
街を抜け森の近くまではこのまま行くらしい。
ティー。出発したよ。 (うん、見てたー)
そっか。待たせちゃったね。 (大丈夫ー街を出たらユウキのとこへ案内するー)
うん、お願いね。 (まかされたのー)
「アリアさん、街を出たら私の魔法がユウキと合流できるように案内してくれるので」 (ティーだよー)
そうだね、ティー。
「昨日王妃様からお話は伺っていましたが、すごいものですね」
「そうですね、ティーは優秀です」 (ふっふっふ)
「ユウキ様たちの救出作戦の完遂も昨夜のうちに既に把握できてるとか…」
「はい、夜明けに街へ向け出発するとの事だったのでこちらもそれに合わせました」
「なるほど。合流した時にギルドマスターへ渡す書状を預かっておりますので、少々お時間いただけますか?」
「はい、私もユウキに説明しなければいけないのでその間に」
「了解しました」




