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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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国の名を背負うという意味



アキナさんのお屋敷にお邪魔すると、もうすでに情報が来ているのか、奥様達が走り回ってる。

「トゥアーレから来た子って誰だっけ!?」

「私知らない。そもそもどこの国?」

「エルフのちっこい集落よ。国と呼ぶには人も少ない小さなところ」

「それは知らなくても仕方ないわよね」

「陛下の嫁として流石に知っといたほうがいいとは思うよ?」

「私は実働部隊だから、そういうのに詳しい文官組と一緒にされても困るわ…」

「これだから脳筋は。実働部隊だとしても救援要請があれば行くんだから把握くらいしておきなよ」

「はーい…数が多いから面倒なのよね…」

「それは言えてる」

なんて奥様達の会話が…。

奥様でも知らない人いるんだ。 


「すみません、アキナさんに報告したいことがあって…」

「あ、王女様! ちょうど良かったです。陛下は執務室に居られるのでそちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

奥様にまで王女様って言われるとなんだかいたたまれない…。

本来なら奥様達のが立場が上だと思うんだけど…、どうなのだろう。

継承権というシステムはあっても、アキナさんが引退するとかありえないとみんなが思っているから、継承権をめぐるトラブルなんて無縁だからかも?



アキナさんの執務室をノック。

直ぐに入れてもらえたから、街での出来事を報告。アキナさんも当然把握していたけど、当事者の私から話を聞けて良かったと言ってくれた。

「ごめんね。嫌な思いさせちゃって」

「アキナさんのせいではないですから謝らないでください」

「ううん。 本当なら相手も望んでいるのだし、他国もしっかりとドラゴライナ王国に組み込んでおけばよかったんだけどね。でも距離もあって、転移魔道具を作ってもらうまでは簡単に行き来できなくてね。ほら、エルフって森から離れたがらないじゃない?だから敢えて国として残しておいたってところがいくつかあるんだけど、まさかあの子が息子にまともな教育をしてないなんて思わなかったよ」

「やっぱりエルフの女王陛下はお知り合いなんですね」

「知り合いというか、元仲間で嫁の親?」

ですよねー…。


アキナさんと話していたら部屋に響くノックの音。

「陛下、失礼します…」

「入っていいよー」

私がいていいのかな?


入室してきたのはエルフのきれいな女性。ああ、そういう事ね。

「この度は愚弟が申し訳ありませんでした…」

「謝るのは私にじゃないでしょ?それに、本来謝るべきなのは弟の方だよね?」

「はい…。アスカ様、本当に申し訳ありませんでした…」

「私の事はお気になさらず。 護衛の方達は平気ですか?」

「はい。今は全員うちに留置いて、弟に教育している最中です…」

アキナさんのことだから大きな問題にはしないだろうけど、奥様の立場としては大変だ…。


「どういう教育をして、ああなったのかわかった?」

「それが…。まともに座学を受けず、森に出てばかりいたそうで、母も頭を悩ませていたと…」

「だとしても話を聞く限り同盟国みたいな認識はあったんだよね?それは誰から教わったの?」

「それを何度も問い詰めたのですが、どうやら誰かに教わったというより、勝手にそう解釈していたようで…」

「困ったものだね。徹底的に教育してから国へ返す事。それと、しばらくはドラゴライナ王国にトゥアーレの人は入国禁止だからね」

「はい…」

かなり寛大な処置だなぁ。


「私も一度トゥアーレに行って話してくるから、戻るまでに報告書をまとめておくこと」

「はい!」

「アスカちゃんはもう自由にしてていいからね」

「わかりました、あの…アキナさん。一つお願いが…」

「うん?」

「ドラゴライナ王国と、周辺国について学びたいんですが、なにか資料ありませんか?」

「それなら…」

アキナさんはご自身のデスクから一冊の本を手渡してくれた。


「これにまとめてあるから見てみるといいよ。でもあくまでも資料だから、鵜呑みにはしないようにね」

「すでに変わっているものもあるという事ですか?」

「そう。特に財政なんかは毎年変わるし、直接確認しないとわからないものも多いからね」

「わかりました」

確かに小さな国の財政なんて、その年の天候やなんかで収穫量が変わればすぐに影響が出る。

そんな苦しい状態の国をいくつも見てきた…。私達が呼ばれていたような世界は特にだろうけど。



帰宅して、玄関ホールのソファーでアキナさんに借りた資料を読んでいたらちょうど母さんが帰ってきた。

「アスカが家にいるのも珍しいね。何か用事だったの?」

「アキナさんにね。 母さんにも会いたくて街に出たんだけどちょっとトラブって…」

「もしかして、バカな王子に絡まれたってやつ?」

「聞いてるんだね」

「街で噂になってたから。それに通うはずだった生徒の一人が急遽取りやめになったって…」

まさかあの王子もドラゴライナ王国の学校に通うつもりだったの?


母さんにも詳しい話をしたら呆れたように大きなため息。

「私だったら国一つ潰してるよ。娘にそんな態度されたら許せないし」

「気持ちは嬉しいけど、無関係の人もいるんだから…」

「あまいよ。 王子っていうのは他国へ入れば国を代表してるんだから。国の命運さえ背負うんだよ。その自覚がないのなら国を出たらダメだし、責任も取らないと。私も最近そういうの学んでるんだから」

母さんも王族の一人だものね。 だからこそそう言いたいことはわかる。少し前に私もシルフィーやストレリチア様とそういう立場の話をしたばかりだもの。



「それより母さんは学校関連でなんの仕事をしてたの?」

「あ、そうだよ! その事でいくつかアスカに聞きたいことがあったんだ」

「うん?」

母さんの聞きたい事っていうのは、私の作った魔道具に関してだった。

防犯ブザーを兼ねたアクセサリーとか、授業で使う予定のステッキに関してとか…。

母さんはまだ現物を見てないらしく、話だけアキナさんに聞いたそう。


「アクセサリーの方はもうアキナさん経由で各家庭に配られたと思う。 私が今も持ってるのは試作の物だけど、ほぼ同じだよ」

手持ちにあったのを見せて説明しておく。

「相変わらず魔道具に関してプロだよね…。でも防犯ブザーなのに、これピアスよね?」

「うん。一番人気だったのもそれ」

「防犯ブザーって大きな音がなるやつでしょ?耳元でなるのに子供たちは平気なの?」

「もちろんだよ。周りに響くだけで、つけている本人には影響ないようにしてあるから」

「意味わかんない…」

「と言われてもなぁ。防犯ブザーを鳴らすってことは緊急事態とみていいから、子供を守るために魔法防壁が発動して覆ってて、周りにだけ音が響くといえばわかる?」

「なんとなく…。子供に影響がないのはわかった」

うん、それならいいか。


「ステッキに関しては、ちょうど今日試作品を見せに来てたんだよ。母さんも見る?」

「うん! 気になるし…。教える側になるのなら知っておきたい」

母さんもやる気だから、予備のを渡して見てもらい、実際に謎を説いて箱を開けてもらうところまでやってもらった。

「面白い事考えたね」

「みんなにも意見を聞いたからこそできたんだけどね」

「へぇー。アスカの嫁たちは優秀だね?」

「う、うん…」

母さんにまで言われると複雑なんですが…。まだ嫁というよりは恋人だし。


「それ、母さんにも渡しておくから持ってて」

「いいの? じゃあ私もこれを鞄代わりにしようかな」

母さんにも気に入ってもらえたのならなにより。



「ママ!」

「お母様!」

玄関ホールに駆け込んできた可愛い二人。

「二人ともどうしたの?」

「帰ってきたのにちっとも部屋に戻ってこないから迎えに来たの」

「なのです…」

「ごめんね、ちょっと本を読んでたら母さんも帰ってきて話してたから」

「二人とも久しぶり。げんきにしてたー?」

「あい!」

「げんきなのですー」

母さんは二人を抱きしめて、撫ぜてくれてる。それは嬉しいし、いいのだけど、離れていた時の私やユウキの事を二人に聞くのはやめよう?


「ユウキはずーっといちゃいちゃしてる!」

「そうなのです! アツアツなのです」

ほらー…。子供って素直だから聞かれたことをそのまま話しちゃうから!


「ママは忙しいのにちゃんとティーたちのこともみてくれるの」

「はいっ! 時々寂しいけど、お母様も大変なので我慢するのです」

そっか…リズにも我慢させちゃってるか、ごめんよ…。


「アスカと嫁たちは?」

「そっちはいつもどおり!」

「お母様達はいつも仲良しなのです!」

母さん、何を聞き出したいの!?全くもう…。


「何を玄関で騒いでんだ?」

そんなタイミングで帰宅したのは父さん。今日は早いね?

「久しぶりに会えたから色々聞いてたんだよ。夕夜の方は大丈夫だった?」

「ああ。今日も売れに売れたぜ! アスカ様々だな!」 

はぁ…。まるで父親に売られた気分だわ…。 (許せん!)

気分ってだけ…。 そろそろみんなも学園から戻るよね? (うん!)

じゃあ私達も帰ろうか。 (あーい!)


父さんは母さんが帰る時間を見計らい迎えに来ただけらしく、二人はすぐにまたでかけていった。

これからが一番混む時間だそう。

確かにお酒やツマミなんて夜のが売れそうだもんね。


お祖母ちゃんとお祖父ちゃんに挨拶をして、グリシア王国に転移。


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