新たな案
午後から召喚科のある私と違い、暇になるみんなはお屋敷に帰るなり、学園でのんびりしてていいと伝えて教室へ向かう。
召喚科へ行くのは私とモルチアナだけだから、急に静かになってしまった。
「アスカ様…」
「うん?」
急に腕を組んできたからびっくりはしたけど、そのまま受け入れて一緒に。
「モルルとはあれからどう?」
「メイド仕事の合間にお屋敷で一緒に過ごす時間を取らせていただいてますわ。アスカ様の召喚獣の方たちとも仲良くしてもらえてて、見ていて楽しそうなのですわ」
「前よりも仲良くなれてるみたいで良かったよ」
「はいっ! これもアスカ様のおかげですわ」
「モルチアナがちゃんと向き合って大切にしてるからだよ」
召喚科の教室に行くと、教室内でも喚べるような小さな子は生徒と一緒にいて、仲良さそうな姿を見れるのは嬉しい限り。
私に気がつくと、鳴ける子は鳴いてくれるし、そうじゃない子もリアクションをとってくれる。
挨拶してくれてるんだと思うから、こちらも返すと嬉しそうに見えるのはうぬぼれじゃないはず。
授業はまたキャンディとノアに来てもらい、召喚獣の立場からの意見をみんなが聞いたりと充実してた。
まだみんなは会話感覚でのコミニュケーションは難しいようで、ある程度の意志の疎通くらいが限界らしい。だからこそ明確に会話のできるキャンディやノアに話を聞けるというのは得難い経験だと先生も…。
それでも前に比べたら遥かに改善されているし、何より生徒も召喚獣の子たちも楽しそうにしているのが私にとっては一番素敵な光景だから。
授業も終わり、食堂に行ったほうがいいのかと思ったら、ティーからみんなお屋敷に戻っていると聞いて、私達もすぐに帰路についた。
「みなさん待っておられるかと思いましたわ」
「そうだね。でも帰っててもいいと言ったのは私だから」
少し寂しく感じたのは我ながら我儘だなと思う。
迎えてくれた未亜に、ティーとリズを待たせたくないからとみんなで迎えに行って帰ってたんだと言われて、嬉しくなった。我が子がみんなに愛されてて喜ばないわけがない。
いい時間だから、未亜、シエルと夕食の準備。
ノアの他にもメイドをしてくれてる子達も手伝ってくれるから楽なもの。
「ノア、ピナさんは?」
「アキナ様に呼ばれてドラゴライナへ戻っておられます」
「そうなんだ?」
アキナさん、来てたんだ…。 (多分そのうちママも呼ばれるの)
じゃあ、ドワーフか子供たちの学校関係? (多分どっちも)
了解。もし学校が始まるのなら私はこちらの学園を離れなくてはいけないなぁ。 (そなの?)
ティーやリズが行くのに保護者の私が離れてるわけにいかないでしょう?もしかしたらフィアやニレも呼ぶかもなのに。 (ふふーきてくれたらうれしいの。ママが先生になるかもだし!)
そうだったね…。
子供たちの学校でもステッキを使うというのは間違いないんだけど、こちらの学園でみんなが自分だけのを欲しがったというのが気になるのよね。 (うん?)
ほら、デザイン違いで専用にしてるじゃない?子どもたちもそうしたら喜ぶのかな?と。 (それはそうだろうけど…ママ一人で作るのに大変じゃない?)
そこで、一つ考えたことがあってね。 (わくわく!)
ステッキをパーツ毎に何種類か作って、組み合わせ次第で好きなものにできるようにしたらどうかな?と。それなら一つずつ違うものにするより楽だからね。 (どゆこと?)
例えば、魔石の形を五種類、持ち手五種類、装飾で更に何種類か用意する…みたいにしたら子供たちが好きに組み立てられるという楽しさと、自分で作ったっていう愛着がわかないかな?と。 (すげーたのしそう)
そう思う? (うん!)
ならそうするか…。デザインにはシエルたちの知恵も借りよう。もちろんティーもね? (あい!)
夕食を食べているタイミングでみんなにも思いついた案を相談してみた。
「楽しそうなの…。沢山デザイン考えてみるの…」
「そんな素敵なの私も欲しいわ!」
「だよねー。もうアスカの作ってくれた特別なのはあるけど、楽しそうだし!」
「試作として、みんなにも渡すから意見聞かせてね」
シエルは喜んでくれると思ってたけどあたったね。
リアとティアの反応も予想通り。
「お姉ちゃん、パーツ毎に分けるのなら、可愛くパッケージにするとか、そっちもお勉強みたいにできないかな?」
「未亜、思いついたことがあるなら詳しくおしえて?」
「えっと、一つずつ箱に入れてっていうのは普通だと思うんだけど、例えばその箱をカラクリ箱にしてみるとか…」
「簡単には開かない箱って事ね?」
「そう! 前にね、そういう商品があるっていうのを見かけたんだよ」
工芸品とかにある、寄木細工のやつかな。でも流石にあれは私では作れないぞ…。
「アスカなら魔法とかでなんとかできそうじゃね?」
「奈々は魔法で何でもできると思ってるのかしら…」
「あっ…。奈々! それいいかも」
「嘘でしょ?アスカちゃん魔法でそんなこともできるの?」
「魔法というか、箱も魔道具にしちゃって…。そうね、例えばだけど、ここのロックを外すには1の魔力を、こっちには5を…みたいに繊細な魔力操作の練習も兼ねておくの。そうしたら、いざステッキができたときにも扱いやすくならない?」
「アスカ様、大変じゃありませんか…?そんな繊細なもの…」
「うーん。多少手間はあるけど、子供たちのためになるのならいいかな?と」
いっそパーツそのものを仕掛けとして嵌め込んでおく、とかでもいいか?でもそうすると選べないか…。 (いいと思うの!)
そう? (パーツに互換性があるなら、友達同士で交換とかしてもいい?)
ああ、それもありだね。
一応、ただの箱バージョンと、嵌め込んで解除していくパターンと作ってみて、みんなに見てもらうか。 (うん!)
「ありがとね、後でみんなの意見を元に試作品を作ってみるから、完成したら触れてみて意見もらえる?」
みんなはもちろんオッケーだと快諾してくれたから、デザインを考えるのにシエルと未亜、興味津々のリアと奈々も協力してくれるというから、試作品作成へと取り掛かる。
ちなみにティアや麻帆達は完成品を楽しみにしたいからと不参加。
どちらにしても後から意見をもらうし、作成過程で人が多すぎると混乱しかねないからいいか。 (ティーとリズも楽しみにまつの!)
期待に添えるものにできるよう頑張るよ。




