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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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立場と想い



ティーとリズがドラゴンの里に一泊するというから、ティアとリアも残ってくれて、私は明日迎えに来る。

少し寂しいけど、仕方ないか…。 (分体はそばにいるの!)

そう…だね。


フィアとニレにも会えたし、一度リコもニレに会わせてあげようと思い、呼び寄せた。

「ママ?何かあったの?」

「ううん。私がリコに会いたかったのと、ニレにも会ってほしくてね」

「私はここにも時々来てるわよ?」

「そっか。ありがとう。リコの方はどう?」

「問題なんてないわよ。ママの強化してくれた木が本体なんだもの。かわったことといえば、こちらの森にエルフたちが増えてきてるくらいかしら」

「そうなの?」

リコが言うにはまた数家族、エルフが増えたそう。

どうやらアクシリアス王国との交流のための中継地点という意味合いもあるようで…。

ただ、やっぱりリコのいる森というのはエルフにとって魅力的なようで、競争率が激しいみたい。

私達は気安く接してもらっているけど、大精霊だもんなぁ、リコ。


「なにか手を貸してほしいとかあったらいつでも言ってね」

「ええ。その時はママを頼らせてもらうわ。ティーに言えばいいのよね?」 (まかせてー)

もし遠慮してるようならその時も教えてね。 (あいあい)

「ティーに伝えてくれればすぐに私に伝わるからね」

「わかったわ」

リコも今は積極的に自分からエルフの人達と関わるようにしているみたいで、家を作りやすいようにとか手を貸してるそう。

身近に精霊を感じられるのは、きっとエルフの人達にとってもいいことなんだろうなと思う。


忙しいリコはニレとも少し話したあと、森へ帰っていった。

私も帰るか…。

一人寂しく転移。


ーーーー

ーー


グリシア王国のお屋敷に戻ると、転移部屋に未亜とシエルいて出迎えてくれて…。

嬉しくなって抱きしめてしまった。

「お、お姉ちゃん!?どうしたの…」

「お姉様…?」

「ドラゴンの里にみんな残っちゃってね…。寂しかったところに二人が迎えてくれたから嬉しくて…」

「そうだったんだ。私もリズちゃんがいないの寂しいからわかるよ」

「うちも…」

二人ともリズをよく見ててくれるものね。


リズ達は明日には迎えに行く予定になっているからと説明して、一緒にいつもの部屋に移動。

「お姉ちゃん、実は話があって…」

「うん?どうしたの未亜」

「少し前にシルフィー様とストレリチア様が戻られたんだけど、元気がなくて…。多分お姉ちゃんじゃないと…」

「ああ…。ありがとう。理由はわかってるから二人と話してみるよ」

「そうなんだ、よかったぁ…」

心配かけちゃったね。


「お姉様、うちからも…」

「シエルも聞かせて?」

「ドレスができたから…お姉様に魔装にしてもらいたくて…」

「もう新作ができたんだね。頑張ってるね。でも…無理してない?」

「大丈夫なの…。すごく楽しいから」

「じゃあその相談も後でしようね」

「はいなの…!」

学園にも通いながらだから、少し心配になるけど…。邪魔はしたくないし、やっぱり今は見守るしかないか…。


先ずは今一番心配な二人と話し合わなきゃな。

自室に戻ると、部屋の角が二箇所…どんよりとしている。なんでそれぞれ離れた隅っこで落ち込んでるの…。

「アスカ、なんとかしてあげて! こっちまで暗くなる!」

「奈々、言い方に気をつけなさい。私達だって他人事ではないのよ?」

「アスカ様…」

「ごめんね、みんなにも心配かけちゃって。少し二人と話してみるから」

「奈々、聖さん、私達は席を外しましょう」

「そうですわね…」

「仕方ないなぁ。後で私達もかまってね…?」

「うん。みんなとも話がしたいし、少し待っててね」


みんなはゲームでもしてると言って、部屋を出ていった。ごめんよ…。

さてと、ちゃんと全員と話し合うためにも、先ずは立場のある二人からだね。

順番に声をかけると、後回しにした方に間違いなく角が立つ。

それだけはわかるから、部屋の真ん中から二人に声をかけた。

「二人とも、私と話をしない? それともそうやって拗ねたまま、時間を無駄にしてしまうつもり?」

ビクッとはしたけど動いてはくれないか…。

王妃様方は二人に何を言ったの?ここまで落ち込ませなくてもいいと思うのだけど…でも根本の原因は私だもんな、責めるのは筋違いだ。

仕方ない、ちょっと強硬手段にはなるけど、二人がその気なら私も遠慮しないからね?


部屋中に魔力ドームを拡散して、魔力操作で二人を抱き上げる。

「「きゃっ…」」

そのまま私の前まで連れてきて下ろす。

「話、しようか」

「「……」」

「ごめんね…二人にも寂しい思いさせたね」

先ずは二人を抱きしめる。多分これが一番効果的なのは私自身、身を持って知ってるから…。

「アスカ様ぁ…」

「うぅ…アスカさまぁ…」

「ちゃんと話し合おう?ね?」

「「はい…」」

泣いている二人が落ち着くまで抱きしめてて、それから話を聞かせてもらった。


二人は王妃様方に、王族として、王女として…とか学園での立場とか、そういうのを話に出されて、恥ずかしくない行動をするようにとこっぴどく叱られたそう。

「他の生徒のいる前でみっともない姿をさらし、アスカ様にご迷惑をおかけするなど言語道断、と…」

「そっかぁ…。確かにお互いに立場というものは意識しなくてはいけないのは仕方ない部分はあるね」

「アスカ様までそう仰られるのですね…」

「うん。これはどうしても仕方ないよ。二人とも王族なのは間違いないし、相応の立ち振る舞いがあるのは理解してるでしょ?」

「はい…」

「ですが! アスカ様の前ではみんな対等だと…」

「それも間違ってないよ。私の前でだけ、ならね。こうやってお屋敷にいるときとか、プライベートならなんの問題もないよ。 私が言わなくても本来そういうのは二人のがしっかりと学んできたんじゃない?」

「……ええ、そのとおりでした」

「幼い頃から…」

「だよね。私と違って二人は生まれた時から王族なんだから。私に言われなくてもわかってると思う。だからそこはもうこれ以上言わないよ。だからね、私が言うのは別の事」

「別の事ですか?」

「そう。私は貴女達二人を本当に大切に思っているし、この命にかけて守る。それくらい大好きだから、もし不安になったりしたらそれを思い出して?人が多いから寂しくさせたりするのは申し訳ないと思う。これは私の責任だから、それは本当にごめんなさい。それでも、みんなの事を同じように大切に想ってる。この想いには立場も何も関係ないからね」


「想いに立場は関係ない…」

「うん。二人はさ、王族っていう立場のせいで、自由がなかったよね?今はそれを殊更強く感じてるんだと思う。王女じゃなければ、次期国王じゃなければ…って。違う?」

「「はい…」」

「でも、その代わりに今まで寝る場所や食べ物、ドレスに宝石、そういったもので苦労してないよね? 例えば未亜は両親がいつも側にいなくて、幼い頃から祖母と二人で過ごしてきて、その祖母も少し前に亡くなっててね、私達と出会うまでは一人で生きてきたの。だからあの子は家事もこなせるのよ」

「知りませんでした…」

「そんな…」

「未亜はそういう事をわざわざ言わない子だから。みててもそんな様子は見せないでしょ?」

「ええ。いつも明るくて、リズちゃんのお世話も…アルフィーの事も見てくれてました」

「だよね。でも貴女達はそういう苦労はしていない、何もそれが悪いとは言わないよ。本来、そういう苦労なんてしないほうがいいんだもの。でも、周りにはそういう子もいるのはわかってあげてほしいの。上にいると、下が見えないなんてのはよくある話だし、敢えて見ようとしなければ見えないからね」

「私は実際に体験してました…。獣人の子達が苦労していたのを…力不足を…」

「そうだね。ストレリチア様はキッカケがあって知ることができた。多分、王妃様達は多分そういう事をわかってほしかっただけなんだと思うよ」

結局私はまたお説教みたいに話してしまってるな…。何様だよって感じだ…。

もっとうまく話したかったのに…。本当にこういう事は私も手探り状態だわ。


「つまり! 私が言いたいのは、他人の目がない場所で私の側にいるときは、二人も未亜も他のみんなも立場なんて気にしなくていいし、気楽に対等に過ごしてて構わないのよ。でも一度外にでて、ひと目のある時だけは少し気をつけようねってだけ。こうやって家にいる時は甘えてくれていいよ?わがままも聞ける範囲でなら叶えてあげる。私は二人から離れていくつもりもない。だって私が離れたくないもの」

「本当に捨てたりしませんか…?」

「もういらないとか、言われませんか?」

「ないよ。そんな不安にさせてた?」

二人は顔を見合わせて、それから頷いた。

これは私が悪かったね…。


「どうしたら安心させてあげられるのか、私も恋愛なんて初心者だからわからないのは申し訳ないと思う。だからね、二人も寂しいとか不安に感じたら遠慮せず、直接私にその想いをぶつけてくれればいいよ。ちゃんと向き合うから。逃げも隠れもしないからね」

「わかりました…」

「では…一つだけお願いしてもいいですか?」

「うん、シルフィーのお願い言ってみて」

「私も、いいですか…?」

「もちろんいいよ。遠慮はなし! もちろん無理な事もあるけど…できる範囲なら叶えるよ」

二人は私の左右に別れて、それぞれ耳元でお願いを言ってくれた。


言ってくれたのはいいんだ…。ただ、それがものすごく私にとってはハードルの高いものだったというだけで…。

「だめ…ですか?」

「お願いします…」

「ダメではないよ、ダメではないけど…えーっと…ちょっと心の準備させてね。私から…なんてのは初めての事だし…」

「アスカ様の初めて…」

「シルフィー様、今だけは序列を無視しても?」

「ダメです! 序列はこういうときのためにあるものです!」

「むー…。でも対等ですよね?」

「それは…」

「二人ともケンカはだめよ」

とはいっても、どうしてもどちらかが先にはなるけど…。

これはまだまだ先が思いやられるわね………。







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