レターキャリアー 前編
ドラゴライナ王国へ転移して、そのままお隣のアキナさんのご自宅を尋ねた。
私が来るのは当然わかっていたようで、奥様の一人に案内してもらい、直ぐアキナさんの執務室に。
「また呼び出しちゃってごめんねー。学園はどう?」
「楽しく過ごさせてもらってます。こちらからの留学生の方も馴染んでいるようでした」
「よかったよ。見ててくれてありがとね」
「いえ。私は何もしてませんから…お二人のお力だと思います。後は同じ科に通っているうちの子達のお陰でしょうか」
「そっかそっか! 話を聞けてホッとしたよ」
軽い世間話しの様に近況報告を済ませ、本題に。
「まず一つ、うちの属国にドワーフが顔を出したの。理由はわかる?」
「ええ…。ティーから報告は受けてますから。そちらへ向かったほうがいいですか?」
「ううん。大丈夫だよ。あまりにも自分勝手だったからこっちで手を打ったからね」
「ご迷惑をおかけしてすみません」
「どちらかというとありがたい結果になったけどね」
「そうなんですか!?」
アキナさんによると、数人のドワーフはドラゴライナ王国から少し離れたエルフの小さな国に現れて、いきなり”アスカという名の武器を作った女を出せ“と言ったらしい。
ドラゴライナ王国にはアキナさんの保護する小さな国がいくつがあるけれど、どこの国にも私の名前などは周知されているらしく、”突然現れて王女を名指しで呼び出すとは何様だ?“と即取り押さえられて捕まったらしい。
「捕まってるんですか?」
「エルフの女王…うちの嫁の母親なんだけど、一国の女王にもそんな態度だったから無理もないね。礼節を弁えない相手に厳しいんだよあの子達」
それは仕方ない…。私へだけ態度が悪いのならまだしも、その国のトップへの礼節を欠いたのなら首がとんでも文句は言えないもの。
「私も会いに行ったんだけどね、元々他種族との交流を殆どしないから礼儀とかに疎いみたい」
「なるほど…。だからといって許されるものでもないですけどね」
「うんうん。だからバツを与える代わりに、ちゃんと交流を持つのを提案して、正式に国として交流を持つ事にしたよ」
「流石ですね」
「アスカちゃんのおかけだよ!」
「私はトラブルの元を作っただけの気もしますが…」
「キッカケには違いないのだから気にしないの。それに、落ち着いたらアスカちゃんの実演を見たいっていうドワーフの希望は叶えてあげてほしいの」
「それくらいでしたら…」
見せるくらいは手間でもないし。
ドラゴライナ王国には、ドワーフが国に店を出す方向で話が進んでいるらしい。それが落ち着いたらまた私が来ればいいみたい。
この国にはドラゴンやアキナさんの身内も多いから、武器も相応のものが求められる訳だし、ドワーフ製なら確かに…。
「他国への接触もうちが仲介するから、アスカちゃんの手間は一度で済むからね」
「ありがとうございます」
あちこちの国にドワーフが顔を出して、その度に無礼を働いて捕まってたら…そんなのどちらも大変だ。
「二つ目は、来週末に私の生誕祭があるからみんなで来てくれると嬉しいよ」
「必ずお邪魔します!」
お世話になっているアキナさんのお誕生日だもの。絶対に来なくては。
「準備とか、なにかお手伝いする事はありますか?」
「そのへんはうちの子たちがやってくれてるから。でも一つだけ、前にも使った花火。あれを追加したいんだけどお願いできる?」
「わかりました。お任せください」
「ありがとー。お願いね。と言う訳ではい、これ」
手渡されたのは何通もの手紙。招待状なのは間違いない。
「アスカちゃんから渡してもらえる?どこも王族はお父様お母様でしょ?」
そういっていたずらっぽく笑うアキナさん。
確かに宛名はアクシリアス王国に、グリシア王国。夕波王国は違いますけど…。でもシラハ陛下は喜びそう。
ドラゴンの里に、バサルア共和国…。
こちらもリアとティアの故郷だったり、ファリス達魔族の人がお世話になってるから…。
「確かにお預かりいたしました」
直ぐに渡しにいかなきゃ。送迎が必要ならそちらも請け負うと伝えておこう。
アキナさんのお屋敷を出たその足で、先ずはバサルア共和国へ。
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ファリスに仲介を頼んでお手紙を渡し、送迎も必要なら声をかけてもらえるように話しておく。
ロウは、リズを連れてこなかったからかしょんぼりしてたけど、あちこち行かなくてはいけないから我慢してほしい。
次は夕波王国。
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頂いた島へ飛ぼうかとも思ったけど、ハルナさんのユリズ・シーへ。
挨拶しようかとお邪魔したら、お忙しそうだったから断念。魔族の人達に言伝だけして夕波城へ。
お城へ向かう途中に白さんが来てくれて、直ぐにシラハ陛下に会わせてもらえた。
執務の最中だったのに、嫌な顔一つせず迎え入れてくれて…。
アキナさんの生誕祭にも必ず行くと言ってくれた。
少し一緒にお茶をしながらお話しした後、お暇。
次はグリシア王国。
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お屋敷に戻ると、みんなも学園から帰宅してて囲まれた。
ピナさんが説明してくれたのでは!? (それはそれ?)
私も話し合わなきゃと思ってたからいいけど…。でも今はお役目の最中なの。
出かけていた理由を説明をしたらみんなちゃんと理解してくれるから助かります。 (理解のある嫁)
そうね?
「じゃあアスカはドラゴンの里にも行くのよね?」
「うん。だからリアとティアは行きたかったら一緒に送るよ」
「そうね…。でもあまり時間はないのよね?」
「また迎えに行くくらい手間ではないからいいよ?」
「なら行こうかなー。フィアとニレにも会いたいし」
「そうね。みんなはどうする?ついてきてもいいわよ?」
リアはそう声をかけたけど、未亜達は遠慮するらしい。
じゃあ私はこちらに滞在されているアクシリアス王国王妃様と、学園長に会ってこよう。いきなり陛下に会わせてなんて言えないし。 (普通に会えそうだけど…)
でもほら…ね? (わかんなーい)
緊張するのよ! (もっとわかんなーい)
なんでよ!? (魔王なのにー)
それとこれとは話が別! (ふひひ)
ほんと、毎回わかってて言ってるな。この子…。 (王妃様達は二人ともお城にいるよー)
ありがとう。助かったよ。
お城に行くなら…とストレリチア様も一緒に来てくれるからありがたい。
「お母様とアルフィーもそちらにお邪魔していますから私も行きます!」
「シルフィー様はお留守番でも大丈夫ですよ?」
「ストレリチア様とアスカ様をお二人にはしません!」
ケンカしないで…。二人とも連れて行くから。
現状、一番うちで揉めるのはこの二人だから少し話をするにもちょうどいいか。 (王女だから未亜達は強く言えないし…)
でしょうね。ハッキリ言えるのはリアやティアくらいでしょ。 (そうそう)
未亜達にリズを任せて登城。
リアとティアにはドラゴンの里に行く準備をしててもらわないと…。




