国を護る騎士の卵
副教師のシュラ先生は私の説明を真剣に聞いてくれた。
「使ってみても構わないか?」
「はい。ぜひ体験してみてください」
ステッキを手に持ち、魔力を込める。一気にインジケーターがマックスに点灯。
「これでも多いか…」
先生はご自身で調整し、直ぐに自在に減らしたり増やしたりと魔力を扱う。さすがです。
「ふむ…。これはかなり繊細だな。生徒で扱える者がどれくらいいるか…。鍛えるのが楽しみだ」
そういって不敵に笑う。
私がもう説明する必要もないくらいだね。 (ママの負担がないのはよき)
毎回行く科で何かあるのも困るものね。
シュラ先生と魔力操作について話をしていたら、初老の男性が教室内に。
「来るのが遅かったか?済まないな」
「大丈夫です。予め私が把握しておりますから」
「そうか。じゃあ俺はシュラから聞くとしよう。他国の王女様にあまり負担をかけては申し訳ないからな」
「お気になさらず…」
お互い自己紹介をし、ラルフと名乗ってくれた。こちらも教師としてしか肩書は名乗られなかった。
「…俺では手も足もでんな」
私を見てしみじみとそう言う先生。感覚的に把握したのか…。
「ラルフ様でもですか!?」
「うむ。ライオネスト様が負けたと聞いたときは耳を疑ったが、実際にこうして相対してみると納得だ。今の俺の立場で他国の王女様に言うべき言葉では無いかもしれんが、あえて言わせてくれ。国を救ってくれて感謝する」
「ありがとうございます。お役に立てて良かったです」
「今日は騎士科の小童共を見ていってくれ。出来れば全員の鼻っ柱を折ってやってもらいたいくらいだがな」
「それはご遠慮させてください…」
笑ってるくらいだから冗談なのだろうけど、びっくりした…。
シュラ先生に”間違いがあれば指摘してくれ“と言われ、ラルフ先生に説明するのを聞いていたけど、間違いがない。一度説明しただけなのに…。 (ギルドとの差が…)
規律の厳しい騎士団のトップのお二人だからこそだろうね。
騎士科に関しては、本当に私が口を出す必要がなさそうだね。 (すげー…二人とも使いこなしてる)
うん。魔法科の先生より魔力は少ないとはいえ、戦い慣れているというか、今も鍛錬を欠かしてない証拠だね。
授業には私も参加させてもらい、騎士科の訓練等を見せてもらった。 (厳しい…)
だね。学園の授業というより本当の軍の訓練に近い。気を抜いていたらすぐに怪我をするレベル。
生徒のステッキの扱いも、どの科よりも上達が早い。
「うちの騎士の卵達はどうだろうか」
「すごいですね…。訓練も本格的ですし、習熟度も全体のレベルが高いです」
「そうか! 貴女程の人にそう言ってもらえるとクラスを預かる一人として誇らしい」
先生二人は嬉しそう。私は騎士ではないし、どちらかといえば冒険者よりの人間だからこういう厳しい規律というのはあまり馴染みがないけど、それでも凄さはわかる。 (魔剣師団のトップに鍛えられたのに?)
そこは否定はしないけど、私自身が魔剣団に所属していたわけではないからね。
(勇者だもんなー)
今は、ティーもね。 (ふふっ…)
騎士科はなんの問題もなく、私が力を試されるとかそういうのもなく無事に終わり…。 (ちぇー)
残念がらないの。力なんてひけらかすものじゃなんだから。 (あーい)
今日の予定はこれで終わり。 (なわけもなく)
……ライオネスト様とライアン様に捕まりました。 (ぷぷっ)
「せっかく来ていただいたんです。今日の感想とか聞かせてください!」
「そうだな。食堂で少し話でも付き合ってくれないか?」
「は、はい…」
王子様二人に言われて断れるわけないのに…。
騎士科の授業を見た感想を聞かれながら食堂へ向かうと、何やらにぎやかで。
午後の授業が終わったら大半の生徒が帰ってるはずなのに…。どうしたんだろう。
理由は一目瞭然。うちの子たちが一角を占拠するように屯してた。帰らなかったの!? (ワケは言わずもがな)
「…ストレリチア。まだいたのか」
「こんな事だろうと思いましたよ! どうせ私達がいない間にアスカ様をお茶にでも…と、誘ったんでしょう?そうはいきませんよお兄様!」
「ライオネスト様とはいえ、アスカ様にちょっかいを出されるのは許せません!」
王女様お二人がご立腹ですか。
「アスカもアスカよ! 私達というものがありながら気安く誘いに乗るなんて!」
「ほんとだよー。待ってて正解だったね」
私はドラゴン姉妹を始めみんなに睨まれてます。王子様相手に断れると思う!?
私達が来たせいで更にらにぎやかになった食堂。
他の生徒は逃げるようにいなくなったのは無理もない。 (修羅場かな)
違うと思いたい…。
「お嬢様…なんですかこの騒ぎは」
「ピナさん、助けて…」
「無茶を言われますね」
だよねー。
「…一つお嬢様をお助けする方法はございますけど」
「教えてくれる!?」
「陛下がお呼びです」
あー…そういうね。なんの解決にもならないよそれ。この場から逃げるための口実にしかならない…。
「お嬢様が席を外されればみなさんも冷静になると思いますから」
「そうかなぁ…」
「それともご自身で収められますか?」
「無理かな…」
「ではそういう事で」
「はい…」
台風の目が消えれば落ち着くみたいなものか…と諦めて、転移。
みんなへの説明はピナさんがしてくれるそうだし…。ありがとうございます。
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