光と聖
鑑定してわかった事を学園長に説明するため、鑑定結果を見えるようにしておく。
「アスカちゃんこれ…」
「ご説明するにも実際に見て頂いたほうがわかりやすいかと思いまして…」
「情報量が多すぎて、どこを見たらいいの…?鑑定魔道具でもここまでは見えないわよね?」
事細かに鑑定結果を出してるから無理もないね。 (すっげー情報量!)
これぐらいやらないと原因まではわからないのよ。
「魔道具ではなく私のスキルとしての能力になりますから」
「鑑定使えたの!? セルフィーからは鑑定魔道具のを覚えて魔法として使ってるとしか聞いてないわ」
「それが…繰り返し使用していたらスキルとして習得してしまいまして…。つい最近なんですけどね」
「びっくりしたわ。でもセルフィーの言っていた規格外だってのがよーくわかったわ…」
王妃様にも話してなかったわ…。 (言うて知ってるのティーくらい)
確かに…。まぁ個人のスキルやなんかは普通は口外しないものよ。 (それはそう。ママのスキル読み上げてたら日が暮れて朝が来るの)
流石にそこまでは…。 (いやーどうだろう)
……。
「ご説明してもいいですか?」
「ええ、お願いするわ…」
「このコッカトリスというのは、呪いのような一種の病気に感染しています。そのせいで素早さと強靭さに異常な成長が見られます」
鑑定結果の中でも状態異常の部分を指してわかるように伝える。
「コッカトリス病ってやつね」
「ええ。そこをさらに掘り下げると、卵の時に蛇から感染したのがわかります。毒蛇に丸呑みされて卵の時に毒にかかり、本来ならそのまま捕食されていたはずが、蛇の気まぐれで見逃されたようですね」
「普通は捕食したのに吐き出したりしないわよね?」
「はい。ですからものすごくレアなケースとして、記録も殆どないんだと思います」
「なるほどね…。対策としてなにか意見があったら教えてくれるかしら」
「そうですね…。養鶏をしている場所に蛇が入り込めないように対策するしかないかと思います。ですが恐らくですけど、どこも対策をしているはずなんです」
「当然よね。養鶏を生業にしていたら卵もニワトリも狙われたら堪らないもの」
「ええ。だからこそコッカトリスになる確率も低いんだと思います。今回の場合なら、蛇の侵入経路を見つけて、そこを潰すしかないと思います」
「わかったわ。 ありがとう。本当に助かったわ…クロムの事もね」
学園長と今後の対策について意見交換をしていたら、クロムさんとヴィータさん、更に三人の計五人が学園長室に戻ってきた。
「全員集めました」
「遠征から戻ったばかりで疲れているのにごめんなさいね。でもみんなの命に関わるから」
「…すみません、私がついていながら…」
「ヴィータの責任じゃないわ。貴女達を討伐に向かわせたのは私なのよ。当然責任は私にあるわ」
「しかし!」
「うちで一番の回復魔法の使い手だからと危険な場所へ向かわせたのも私よ。ごめんなさいね」
「とんでもありません! 私は学園の教師ですが、冒険者でもあります。その役目を果たすために行くのは当然です。なのに…」
責任を感じて落ち込むヴィータさんを慰めながら、学園長は“治療を始めてくれる?”と。
頷き返し、全員を魔力ドームで包む。
コッカトリスとはいえ、少し大きなニワトリサイズだから大きな怪我はないけど、全員もれなく状態異常にはかかっていた。それ以外の傷は癒えているからヴィータさんの回復魔法の腕は確かだ。
「アスカちゃん、どう?」
「もう心配ありません。状態異常はすべて治癒させましたから」
「ありがとう。本当に助かったわ…」
学園長は心底ホッとしたかのように笑顔を向けてくれた。
「私からもお礼を言わせてほしい。仲間を救ってくれて感謝する。もう引退するしかないと思っていた私自身の事も…本当になんとお礼を言えばいいか…」
「お気になさらず。みなさんが善くなられたならそれだけで充分ですから」
全員で敬礼するかのように頭を下げられてしまい、オロオロするしかなく…。
そんな私を見て学園長は笑ってる。止めてくださいよ!
「あ、あの! どうやって治療されたのですか?」
ヴィータさんは回復魔法を使う方だから気になるか。
「光魔法の状態異常治癒を使いました」 (え…?)
聖魔法って言うとまた騒ぎになるでしょう!? (光でも似たようなものだと思うの…)
「光魔法…!? それって…!」
「回復魔法の使い手より数の少ない…」
「本当に使える人いるんだ…」
「…皆それくらいにしないか。他人のスキル等の詮索は御法度だ。そんなことも忘れたのか」
「でもリーダー! ものすごい人材ですよ!」
クロムさんは事情を知っているから止めてくれて助かりました。
それにしても、光魔法はこちらでは別扱いなのね…。回復魔法も光魔法の一つなんだけどな。
ティーの言うとおりだったね…。 (でしょ?)
「みんな気になるのはわかるけど、アスカちゃんに関しては詮索も口外も禁止よ。うちの娘の婚約者だといえばわかってもらえるかしら」
「は、はいっ!」
「それでなくてもうちと友好を結んだばかりの国の王位継承権一位を持つ王女なのよ?この意味はわかるわね?」
私のなんて借り物みたいな立場なのにそこまで脅さなくても。全員固まっちゃったよ…。 (今の脅しなの…?)
学園長の言った、友好を結んだばかりの国、継承権一位の王女。つまり”下手なことをしようものなら、まだ繋がりの浅い、ようやく友好を結んだばかりの国との友好にケチがつくけど、わかってるわね?“って意味だね。 (こっわいの…)
学園内では学園長だとしても、この国の王妃様だからね。釘を刺しておくくらいはしたってことでしょう。私のためにありがとうございます。 (ニャルほど)
「治してもらった治療費はこちらで払っておくから貴方達はゆっくり休みなさい。長い遠征ご苦労さまでした。ヴィータも数日はゆっくりして、それから学園に来てくれればいいからね」
「はい。 ありがとうございました」
全員に再度お礼を言われ、皆さん退室していった。
「さてと、アスカちゃん? 本当の事を話してくれるわね?」
バレてたか…。 (光魔法じゃないと?)
多分ね…。まぁでも聖魔法が使えるのは話してあっただけ良かったと思おう。




