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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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ギルドの仕事と矜持



ユウキに説明してから急いで学園に戻り、学園長室に行くと片腕と片目に傷を負っているのか、ぐるぐると包帯を巻いた痛々しい姿の女性が一人。

「アスカちゃん、来てくれてよかったわ…。ティーちゃんにもお礼を伝えてね」

「はい」 

分体のティーはすでに居なくなってるのね。 (ふふー用事が済んだら消してるし)

ありがとね。 (うん!)


「学園長、こちらは…?」

「紹介するわ。うちの娘の婚約者で、ドラゴライナ王国という国の王女でもあるアスカちゃんよ。今は学園に留学してくれてるの」

「ドラゴライナ王国というと友好を結んだという…?」

「ええ。でも政略的な理由で婚約したわけではないのよ。うちの娘がもうベタ惚れなの!」

学園長、恥ずかしいのでそれくらいにしていただけませんか…。 (自慢する親な感じ)

悪い気はしないのだけど、それより大切な話がありそうなのに…。


「これは失礼した。私は冒険者のクロムです」

私も改めて自己紹介をして、ようやく本題に。


「クロムはうちでもトップクラスの冒険者パーティーを率いていたのだけど、今回ちょっと厄介な相手の討伐に行ってもらっていたの」

「すみません学園長、お話の前に治療させていただいてもよろしいですか?見ていていたたまれないので…」

「お願いしていいの!?」

「こんな時こそ頼ってください。お母様ですよね?」

「ふふっ…そうね。やっと”お母様“と呼んでもらえたわ。じゃあお願いしてもいい?」

遠慮されないようにと言ってみたけど、恥ずかしい…。


”お母様“の許可も貰えたので、魔力ドームで包んで鑑定。先ずは外傷の確認をしたのだけど、これ…。 (どしたの?)

怪我というより、石化してる…。 (相手はバジリスクとか…?)

それかメデューサ系かも。こちらは名前とかも違うかもだから一概には言えないけどね。 (治せる?)

うん。下位の回復魔法では難しいけど、上位や聖魔法の状態異常治療ならね。この石化は呪いの一種だから、放置してるとどんどん石化の範囲が広がっていっちゃうのよ。 (怖っ!)


魔力ドーム内に聖魔法の状態異常治療を流し込み、一度解除。

再度魔力ドームで包み、鑑定での確認と小さな擦り傷とかも治療。

「完全に治癒させたのでもう大丈夫です。根本から状態異常を治療したので、今後悪化する心配もありません」

「ちょっとどういうこと!? ただの切り傷と骨折だと言ったわよね…?」

「……。申し訳ありません。ご心配おかけしては冒険者として失格ですので」

「ふざけないで! そんな事を学園で教えてきたつもりはないわ! すべては貴女達を現地へ送った私の責任なのよ?正確な報告をしてくれなくては困るわ!」

「……申し訳ありません」

悪いことしちゃったね…。


「アスカちゃん、治療してくれてありがとう。助かったわ…」

「いえ…。冒険者の方の矜持を傷つけてしまい、申し訳ありません」

私も戦ってきたからこそクロムさんの気持ちはわかるもの。ましてや王妃様でもある学園長に責任を感じてほしくなかったっていう想いも…。 (ママ…)

今はみんなにちゃんと話すのも大切だってのは理解してるよ。 (ならいいけど…)

「治療して頂いて感謝する。それに…私の想いもわかってもらえて言葉もない」

責めないでくれてありがとうございます…。


「何があったか、本当の事を話してくれるわね?」

「…はい」

クロムさん達は、五人のパーティで王都から馬車で二週間ほどの距離がある村へ遠征していたそう。

というのも、その村の近くに出た魔獣が強敵だったから…。

「アスカちゃんはコッカトリスって知ってるかしら」

「私が知っているのは爪やくちばしによる攻撃に当たるとその部位が石化するというものですね。かなり上位の光魔法か、或いは聖魔法による状態異常治療でのみ根幹治療が可能になります」

「そうなの…?」

「あくまでも私が知っているものの話にはなりますが…」

私が知ってるのはコカトリスだし…。似ててもどこまで同一視していいのかはわからないもの。


「すまない、上位の光魔法でなければ完全な治療ができないというのはどういう意味か聞いても?回復魔法とは違うのだろうか?」

「回復魔法というのは光魔法の一つです。下位の光魔法…つまり回復魔法の治癒で一時的に治ったようには見えても、時間経過と共に再度広がります。この石化というのは呪いという状態異常の一種なので、そちらを治さないとだめなんです」

今回のもそうだったのは鑑定して確認してるから間違いない。

「じゃあ私の仲間も!!」

「他にも負傷者がいるの!?」

「はい…。全員どこかしらに傷を負いましたから。しかしヴィータの回復魔法で治ったものと…」

「アスカちゃん、猶予はどれくらい?」

「現状、治ったように見えるほど治癒されているのなら焦る必要はありません。呪いの進行には猶予がありますから。ですが、早めに治療するに越した事はありませんので…」

「クロム、全員連れて来なさい! 今すぐに!」

「は、はいっ!」

慌てたクロムさんは学園長室を飛び出していった。


「アスカちゃん、本当に助かったわ…。コッカトリスを甘く見ていた私の判断ミスね」

「こちらのコッカトリスというのはどのような外見なんですか?」

「パッと見は普通のニワトリと変わらないのよ。ごく稀に養鶏している所で産まれるのだけど、ある程度の記録が残っているのは数十年前の一つだけなの。他はそういうのがいたってくらい。だから資料も乏しくてね」

私が知ってるコカトリスとは違うな…。 (ママが戦ったのはどんなの?)

見た目もサイズもドラゴンに近くて、顔だけニワトリみたいなのだね。直接的な攻撃にあたるとそこから石化する。傷が深いほど石化のスピードが早いの。 (やば…)


「何が原因でコッカトリスになるかはわかってるんですか?」

「わからないわ。記録にある限り今回のを含め数回だけだもの。王都からは離れた田舎の村とかに出るから無理もないのだけどね」

かなりの低確率なのね。でも原因がわからないのは怖いな。

「もしかしてアスカちゃんなら、コッカトリスを見たら原因わかったりするかしら?」

「見ないとわかりませんが…、その可能性はあります」

「わかったわ…。じゃあ見てくれる?」

学園長はマジックバッグから取り出したモノを見せてくれた。 (ほんとにニワトリサイズ…)

だねぇ…。とはいえ、地球のに比べたら大きいけど。 (倍くらい?)


かなり激戦だったのか、全身にかなりの傷跡が…。小さいからこそ大変だったんだろうな。

魔力ドームで包み、くまなく鑑定。 (原因わかった?)

うん。学園長に説明しなきゃね。 (あいあい!)






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