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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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学園ギルド



翌日は早朝から学園街を含めた学園のエリア全体に拡声魔法でお知らせがあり、全校生徒は学園に集まるように、と。

「なんだろう。私達も行かなきゃよね?」

「あ、リア。私達家族は大丈夫よ。普段通りの時間に登校すればいいから」

「でも全生徒って言ってたわよ?」

「お姉ちゃんは理由を知ってるんだね?」

「うん。昨日魔法科の授業中に私が学園長に呼ばれたのを知ってると思うけど、正式な依頼として鑑定の魔道具を作ったのよ」

「つまり、生徒は朝から鑑定されてるってわけかー」

「うん。ティア正解。私達はステータスが高いのもあるし、称号によっては秘匿しておきたいものもあるでしょ?だから免除されてるの」

全員”あー…“って感じに納得するから内心複雑ではあるけど仕方ないね。魔王ってつく称号が多々あるし…。

いらない不安の種をまく必要もない。


「私もですか?」

「勿論シルフィーやストレリチア様たちもだよ。もし詳細が知りたいのなら私が鑑定してあげることもできるけど…」

みんなはどうしようかと顔を見合わせていたけど、”別にいいや“となったらしい。


唯一気にしたのは聖弥くん。

でもユウキに詳細なステータスは知らせてあるし、改めて鑑定する必要もないんだけど、やっぱり気になるか…。 

「聖弥、ステータスが気になるのはわかるけど、僕が把握しているし、今は修行に集中しような。大体、数値で見てもわかんないだろ?」

「わかりました師匠…」

「成長したと判断したら姉ちゃんに頼むから、その時はステータスに関してしっかり教えるよ」

「はいっ!」

師匠をしているユウキがそう判断するのなら口を出さない。 (見ないほうがいいの?)

場合によるかな。例えば誰かと比較してステータスが高かったら調子に乗ってしまったりと、驕るキッカケになりかねないからね。 (あー)

多分だけどユウキはそれを気にしてるんだと思うよ。まだ聖弥くんは幼いのもあるし、ずっと闘病していたのなら競うっていう経験すら乏しいはずだからね。 (なにか違うの?)

難しい話になるけど…。競って負ける経験も必要なのよ。失敗から学ぶみたいなね。

何もかもトントン拍子で上手くいくのが悪いとは言わないけど、それが他者を見下す要因になったり、いざ挫折したときに立ち直れない、なんて事になったら目も当てられない。 (よーくわかったの)


特に今は魔力循環をして、突然一気にステータスが跳ね上がったところだから…。慎重になるユウキの気持ちはよくわかる。 (ママは平気だったの?)

何をしても勝てない師匠がいたのよ?真っ先にプライドやなんかはへし折られてる。 (鬼畜だー)

師匠はそういう鍛え方しかできない人なの。悪気があるわけではなくね。不器用なのよ…。

悪意があって〜っ人なら私だって師匠なんて呼んで慕ってないと思う。 (それはそう)



私達はいつも通りの時間に登校。

ただ、私は今日ユウキたちと学園のギルドへ向かう。

みんなは寂しそうにしていたけど、役目柄仕方がないから諦めてもらう。午後からは騎士科に行く予定だし…。 (ママはもう生徒じゃなく、先生みたい)

おかしいな。生徒としてお邪魔したはずなんだけど…。


ギルドへ一緒に行けるのを一番嬉しそうにしていたのはレウィ。

確かに学園で一緒に行動したのなんて学園祭とかくらいだものね。

「わう! 主様と一緒!」

「レウィ達は、普段どんな授業を受けているの?」

「わう? 依頼を受けて街の外に行って狩りとか…」

「座学とかはないの?」

「そこはほら、僕らは元々戦うことができるし、ギルドのシステムなんてどこも似たようなものじゃん」

「つまり、座学はギルドのシステム…依頼の受け方とか失敗した場合のペナルティとか?」

「そうそう。始めは少し座学も受けたけど、今はもう必要ないね。聖弥には僕が教えられるし」

なるほどね…。初めての人とは訳が違うか。

他にも既に街のギルドに所属しているような人は、座学が免除されていると教えてくれた。


「スピネルはどうしてたの?」

「同行してるよ。戦えるメイドって扱いだね」

そういえば初めはメイドとして来たんだっけ。その設定が今も生きてるのか…。

「…漆黒メイドって言われてる…」

スピネルにはぴったりな二つ名だわ。 本人も満更ではないようだし。



ギルドの食事スペース兼、教室になっているエリアにいる生徒達は、普段学園で見る生徒達よりも年齢層の幅が広い。さらに言ってはあれだけど…なんていうか…。ギルドだわ。 (ヤンチャなのが多い)

そうそれ。生々しい傷跡のある人とかもいるのはまさにギルドって感じ。

先生も似たようなもので、スキンヘッドに左目には大きな傷跡。おそらく見えてないと思う。 (よくわかるね)

まぁね。身体の動かし方でわかるくらいだよ。 

副教師の女性も露出過多な上に、あちこちに傷跡が…。 (わざと見せてるって言ってたの)

露出狂なの? (じゃなくて!)

ああ。露出してれば自然と視線が集まる…。それはつまりたくさんの傷跡も目につくと。 (うん! 冒険者はこういう傷が絶えないんだって見せつけるためって言ってたの)

納得したよ。さすが先生だね。



先生二人に生徒達へ紹介されたのだけど、当たり前のように知れ渡ってるのね。 (無理もないの…)

おかげで話も聞いてもらえたし、ステッキで行う授業の説明も問題なくできたけども。


冒険者科の場合、前衛の人…つまり、ほぼ魔法を使わない人のが多いから、聞いてもらえない可能性も考えていたから助かったよ。

「お前たち、質問等あったら今しておけよ。今日だけしか来てくれないんだからな!」

「そうねー。あたし達では教えられないから、今のうちにマスターしなさいよ」

いやいや、先生のお二人も覚えてよ! まぁ何かあれば来るけどね。 (あの二人脳筋だから無理だよ)

…とってもギルドらしいわ。 


数少ない、魔法を主体として戦う人たちからの質問に答えたりしていたら、ギルドの扉を開けて入ってきた人が。

遅刻かな?冒険者ってルーズな人もいるし…。 (違うよー)

じゃあ依頼とか? (依頼は街の本物のギルドから回されてくるから)

あ、そっか…。学園街って生徒とその身内くらいしか普段は入れないんだっけ。


「ただいま…」

「おう。ヴィータじゃねぇか。随分久しぶりだな」

「依頼は達成できたのかしら?」

ヴィータって…。 (魔法科の副教師だ!)

だね。回復魔法の先生だったね。 (イメージと違うの)

そう? (どっちかといったらシーフ?)

ああ。ショートパンツにブーツ、軽装鎧だから言いたいことはわかる。でもローブを着るのなんて聖女様くらいよ?それも旅に出るなら相応の装備になるし。 (へぇー)



「…なんとかね。こちらもかなりの犠牲を払う結果になったけど…」

「まさか!」

「ううん。全員生きては戻ったよ。でも…一人は確実にもう冒険者を続けるのは無理だと思う…。私がもっと強い回復魔法を使えてたらっ…!」

「ヴィータ…。自分を責めないで。うちであなたを越える回復魔法の使い手はいないのよ」

「でも…!!」

「…帰ったばかりなんだ。上で休んでこい」

「うん…そうする」

ヴィータさんは項垂れたまま、ギルドの二階にある部屋へ上がっていった。

二階って何があるんだろ…。 (先生の部屋とか、簡易の宿泊部屋もいくつかあるの)

本格的に街のギルドと遜色がないのね。 (それよりママ!)

言いたい事はわかるよ…。でもこちらのギルドに所属もしていない、ましてや学園の生徒でしかない私が勝手なことはできないよ。 (むー)

後で学園長に聞くから。 (あい!)

おそらく怪我をした人も命に別状はないみたいだから、ちゃんと手順を踏まないとね。

気持ちとしては直ぐに首を突っ込みたくはあるけど…。 (ママが落ち着いただとっ…!?)

失礼ね…。立場的にあちこちに迷惑をかけかねないから仕方ないの! 前みたいに自由なわけじゃないからね。心配してくれる子達もいるし…。 (あーい!)


ただ、それ以後はまともな授業にはならなかった。

先生二人も難しい顔で話し合ってるし、生徒たちも不安そうだったりと落ち着かないから。

ほんと何があったのか今すぐ知りたい! (ふむふむ…。 ママ、学園長が至急学園長室に来てーって)

了解。これに関してね? (多分…)







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