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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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一方通行の想い



午後、召喚科の教室には各々召喚獣を連れた生徒が集まってくる。


今回、魔法学園にお邪魔してから暫くは魔法科と魔道具科の方が忙しくて、こちらに時間を割けなかったのよね。

それもあって、授業はおじいちゃん先生による基礎の復習と、召喚獣との関わり方についての講義が基本になってた。

こちらに来てからおじいちゃん先生に色々と相談を受けていたのだけど、先に手を付けてしまっていた魔法科と魔道具科のものを終わらせるまで待たせてしまってた。

あっちもこっちも手を出すと、中途半端になりそうで…。そんな失礼な結果にはしたくなかったから現状説明をして、おじいちゃん先生には待ってもらってたのよね…。


「ようやっとこの時が…。師匠よろしくお願いしますのじゃ」

師匠ではないのだけど、もう訂正しても直してくれない…。お孫さんでもある副教師のクローラ先生も同様に。 (ママも諦めよう)

はぁい…。


「まずは召喚獣の子たちから直接お話を聞きたい、でしたよね?」

「うむ…。ある程度のコミュニケーションはとれるとはいっても、明確に会話ができるほどではないんじゃ…情けないことにな」

私はみんなと会話感覚で細かく意思の疎通が取れてるのだけど、違いはどこなんだろう…。

初めて喚んだチョコは少し時間かかったけど、二人目からは喚んですぐに意思の疎通ができてたし。

そのせいで明確な意思の疎通をとれないっていう状況を打開する方法がわからない。

だから今日は直接会話のできる二人に力を貸してもらうつもりで、事前に説明もしてある。


「キャンディ、ノア、おいで」

私の呼びかけに応じて、2つの魔法陣が展開。

ピンク色の魔法陣からはミストサキュバスのキャンディが。緑色の魔法陣からはメイド姿のノアがそれぞれ出てきてくれた。

「お喚びですかマスター」

「やっとますたぁが喚んでくれたわ〜」

待たせちゃってた? (二人ともかなり早くからまだかなまだかなって)

そっか。ふふっ。 


「ま、また知らない召喚獣が増えてる!」

「人型の召喚獣を二人も…」

クローラ先生もおじいちゃん先生、もといコーネリアス先生もかなり驚いてる様子。

私もノアとの再会は本当にびっくりしたからね! (二人のはそーゆーのと違う…)


「来てくれてありがとう。二人とも。 まずはそれぞれ自己紹介をしてもらえる?」

「はぁい。まずは私からね〜。 悪魔種ミストサキュバスのキャンディよ〜。普通のサキュバスとの違いはこうやって…」

ミスト状になって姿を消したキャンディは、すぐ元に戻る。

「ミストになれるの〜。敵対する相手ならこのミストに触れるだけで倒せるわよ〜?」

暗に触れるなと警告してるように聞こえるね。 (ママの嫁だし!)

私もキャンディが嫌がるような事は誰にもさせるつもりはないよ。


「次は私ですね。妖精種、樹木のニンフ、ドリアデス。ノアと申します。マスターの筆頭戦闘メイドですのでお見知りおきを」

キレイな所作で礼をするノア。こちらもしっかりと戦闘能力のアピールは忘れないのね。 

ノアには私が魔王だった事や転生してきてくれたという話はここでは伏せてもらえるよう頼んである。理由に関しては言わずもがな…。


「では先生、お聞きになりたいことを二人に」

「そ、そうじゃな。 こんな機会は二度とないやもしれんからのぅ」

こちらに滞在している間なら、うちの屋敷に来ればいつでも会えるけどね…。


「まず一つ。 師匠のように召喚獣と心を通わせるにはどんな努力が必要なんじゃろうか…」

「そうね〜。これはますたぁがいつも言ってると思うけど、一番は大切に想って欲しいわね〜。人も同じだと思うけど〜ぞんざいに扱われる相手に心を開くなんてあり得ないわよね〜?」

教室の生徒達の中には、以前そういう扱いをしてきた子達も多いからか表情は暗い。

モルチアナも顔を伏せてしまっているね…。


「私達召喚獣は〜仲間内で情報の共有もされるのよ〜。だからここにいるみんなが今は召喚獣を大切にしてくれてるのもちゃ〜んと聞いてるわ〜ありがとう〜。みんな仲間みたいなものだから、嬉しいわ〜」

しっかりフォローまでしてくれて…ありがとうキャンディ。


「わしはずっと友のように接してきたつもりなのじゃが…」

「大切にするというのは〜一方的なものではないのよ〜? 相手からの想いも受け止める度量と覚悟が必要なの〜。時には信じて任せるのも大事よ〜? わかりやすい例で言うならうちのますたぁは命令はしないの〜。どんな時もお願いしてくれる。この違いがわかるかしら〜? 唯一私がますたぁに言われた命令は“死ぬな”それだけよ〜」

それは命令というか契約した時のでしょう。 

戦闘に関してなら、命令すると圧倒的に不便なのよね。何より召喚獣の子たちが危ない。それが私にとって一番容認できない部分。


「命令しない…?それでどうやって指示を出しているのですか?」

「ますたぁはお願いとして指示はくれるわよ〜?」

命令とお願いの違いはわかりづらいかもね…。


「キャンディ、それに関しては私が答えようか?」

「そうね〜。実際にそうしてるますたぁの話を聞いたほうが私もいいと思うわ〜」

「ありがとう、キャンディ。 えーっと、まず重要なのは召喚獣にとって召喚主の命令というのは絶対的な意味を持つんです。 例えば”攻撃しろ“と命令してしまうとそれを最優先にして回避や防御というものをおろそかにしてしまい、結果的に自身を傷つける結果になってしまいます」

「でも、明確に命令しなければ的確に戦えなくないですか?」

コーネリアス先生と旅をしてきたクローラ先生は生徒たちより実戦経験があるからこその質問だね。


「命令しなければ戦えないっていう前提がもう間違ってるんです。 前に召喚科のみんなにも話したと思うけど、召喚獣の子たちには心があります。それは感情だけじゃなく、判断力。適応力等も備えているということを意味します」

「つまり…?」

「召喚主が常にどんな時でも冷静にこと細かく指示ができるというのなら命令でもいいかもしれません。ですが、実際に戦っている召喚獣にしか見えていないもの、その場その場の空気感や感覚というものは召喚主には知りえませんよね? 実際に戦闘しているわけでもなく、戦闘場所から離れてるんですから」

「任せたほうがいいと、師匠はそう言われるのじゃな…」

「すべて丸投げしてしまうのとは違いますけどね。戦闘中にもある程度の指示の更新は必要になりますが、お願いとして頼んだ行動なら臨機応変に、個々で考え一番最適な手段を使ってくれます。もっと言えば、“こうしたいけどいい?”と聞いてくれたり、”こうしたほうがいいよ“と教えてくれたりもするんです。結果的にお互いが成長できますから何も損はないんです。 戦闘になったときに、召喚獣の無事はイコール召喚主の無事も意味しますからね。一緒に戦って一緒に切り抜けるんです」

基本的に召喚獣を喚びだして戦う人は、本人の戦闘力が低い傾向にあるから、召喚獣が倒れればお終い。


「あっ…。以前の召喚科の教師とアスカ様が戦われた時に、教師の召喚獣が放った攻撃が私達生徒の方へ飛んできたのは…。もしかして命令のせいですのね?」

「うん、モルチアナ正解だよ。 あれは教師が無茶な命令を続けたせいで、何とかそれを実行しようとした結果だね。召喚獣に攻撃方法やタイミングを委ねていればあんな無茶はしないから事故も起きないよ」

おかげで私は生徒を守る結果になり、味方が増えたのだからラッキーだった。 (プリンだ!)

うん、あの時の召喚獣は今、プリンとしてティーと仲良くしてくれてるね。 (にゅふふー)



静まり返ってしまう教室。

実際にあの戦いを見ていた生徒も多いから、ある程度は伝わったかな?

でも、申し訳ないけどここでダメ押しさせてもらうよ。召喚獣の子たちの為にも。 (ママのトドメの一撃!)


「皆さんはどうして召喚獣を喚んだかという根本的な所を忘れてはダメなんです。 恐らくみんなが自分にはできない事をしてもらいたい、守ってもらいたい、そういった願いがあって喚んでいると思います。それはつまり、人間より召喚獣のが秀でている部分があるのをわかってて喚んでるんですよ。 なのに、自分より優秀な子相手に命令して、それが常に正しいと言えますか?」

「言えぬのじゃ…。何処かでまだわしは自分が上であると思っておったんじゃな…」

「召喚獣にも種類がいますから、必ずしも人間のが劣っているとは言いません。 得手不得手はありますからね。でもそれは人も同じですよね?」

「そう…じゃな…。目から鱗が落ちたのぅ…わしはまだまだじゃった…」

「そんな事ないわよ〜。貴方とお孫さんの評判は聞いてるもの〜。大切にされてるのは知ってるわ〜。ただ、もう少しあの子達を信じてあげてほしいのよ〜。絶対に悪い結果にはならないし、何よりあの子達本来の力を見れるわよ〜?」

キャンディの言うとおりだね。信じて任せてあげたら命令で縛られるより遥かに本来の力を発揮できるのだから。











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