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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第一章

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閑話 ユウキの冒険者活動 3



魔獣の子供を肩に乗せ、怪我人を抱えて巣から飛び降りる。

もう夕方も過ぎ真っ暗に近い。


「怪我人は降ろしました。誰か明かりをください!」

「どうぞ」

うわっビックリしたぁ。騎士の人だね。いつの間に後ろに…。


「ありがとうございます」

「いえ」

ランタンの明かりを受け取り怪我人の確認。

鎧脱がさないとだな。


兜を脱がすと黒髪に整った顔立ち…女性かっ!

「すみません、怪我人は女性なので鎧を脱がして怪我の確認をお願いしていいですか?」

後ろで待機してる2人の女性騎士にお願いする。

「わかりました」


2人に任せて背を向け、その間に姉ちゃんから渡された解毒薬や治癒薬を取り出す。

この治癒薬は最終手段だけど…。


「ユウキ様、振り向いて頂いても大丈夫です」


騎士の一人に呼ばれ振り返る。


「外傷は頬の傷くらいですが、しかし…あちこち骨折している可能性があります。これ以上動かすのはおすすめできません…」

「治癒は使えますか?」

「多少なら…」

「一度頬の傷に治癒をお願いします」

「はい」


騎士の手から暖かな光が頬へ注がれる…が、治癒しない。

毒になってるね、なら姉ちゃんから貰った解毒薬の出番。

意識はないから直接傷口にかける。

「もう一度治癒をお願いします」

「はい。ですが、全身の骨折まで治すほどの治癒は使えません」

「大丈夫です、毒が消えたかの確認のためなので」

「そういうことでしたら」


治癒の魔法で今度は問題なく頬の傷は癒えた。痕は残ってしまったけど…。

解毒できてる。

後は…この姉ちゃん特製の治癒薬を使うしかない。

これならおそらく傷痕さえ消える。


ただなぁ…この治癒薬、飲ませるのが一番いいんだけど…意識ないし。

「ユウキ様、どうされました?」

治癒薬を持って悩む僕を不思議に思ったのか騎士の一人に尋ねられる。


「いえ、これ姉特製の強力な治癒薬なんですが飲ませるのが一番効果が高くて…どうしたものかと」

かけて使うと2割〜3割ほど効果が落ちるって前に姉ちゃんから聞いた気がする。

そこが改善点だけど元々難度の高い治癒薬だからまだ改善できてないとか。


「それなら〜口移し! ですよ」

今まで一言も発してなかった騎士がとんでもない事を言いだした。

「ならお願いしていいですか?」


「そこは〜助けたご本人の役目では〜?」

この騎士、絶対面白がってるな。


「おい、緊急時だぞ」

「でも先輩、私達はあのお薬の効果とかよくわかりませんし~」

「それはそうだが…」

あぁもうわかったよ! ここで時間をかけてられない。


怪我人の体を少し起こし、薬を口に含む。

そのまま口移しで薬を流し込む…頼むから目を覚まさないでよ。

「おおっ〜」

騎士が煩い。


もう一度、これで全部だから。

二度目の口移し。

「んんっ…」

まずい! 急いで寝かせて離れる。


あっぶなぁ! 間一髪。


「んんっ……。 あれ?ボクは魔獣と戦って…みんなは!?」

「大丈夫です、助けに来ました」

「え?…貴方は…」

「その人は〜命の恩人だよ〜?大怪我してた君を魔獣の巣から助けて〜 口移しでお薬飲ませてくれたんだから〜。あのままじゃ死んでたよ〜?」


くっそ…あの騎士! 

わざわざバラすのかよ!


「…え?」

怪我の治った女性冒険者は唇に手を当てる。


思わず目を逸らす。

「あ、あの…ありがとう、ございます…」

「…いえ」


「おーい。そっちは大丈夫か?一応周りを見回ってたが他にはいないぞ」

「こっちもだ」

盾持ちと斥候の冒険者が戻ってくる。


「はい。姉に持たされた薬で怪我人もこの通り無事です」

「なら、急いで野営地へ戻るぞ、あっちの様子が気になるからな」

「わかりました」



「あ、ボクも行きます」

いや、病み上がりなんだから無理したら…。

案の定立ち上がろうとしてよろける。

慌てて抱き止める。

「…あぅ」


「いいねぇ〜ひゅ〜」

あの騎士絶対アリアさんに言いつける。決めた。


「あの、鎧は取り敢えず預かりますね。街へついたらお返しします」

「はい…」

ストレージに鎧をしまい、怪我人だった女性に向き直る。


「すみません、ちょっと我慢してくださいね」

「ふぇ?」

そのまま女性を抱きかかえる。まだ身体強化かかってるしね。


「野営地へ戻りましょう」

「おう、いくぞ」


「ひゃ〜お姫様抱っこ〜!」

くっそ〜あの騎士ホントに。

「戻ったらアリアさんによーくこの事報告しますね」

そう騎士に告げ走り出す。


「ちょっと〜それはダメ〜ズルい! ホントにシャレにならないやつ〜」

走りながら叫んでるが知らん! 


「あの…」

抱えてる女性が話しかけてくる。


「はい?どこか痛みます?」

「いえ、それは大丈夫です。胸が苦しいくらいで…」

「それは大丈夫じゃないんじゃ?」

「いえ! 怪我とかじゃないので…」

「…?そうですか。なら舌を噛むといけないので話はまた後で」

女性が頷くのを確認し、速度を上げる。


先行している斥候の人へ追いつき並走する、

「人を抱えて俺についてくるかよ。 俺も歳かねぇ…」





野営地へ戻ると魔獣は無事討伐されていた。

怪我人も出たが姉ちゃんの解毒薬と治癒師のおかげでみんな無事だった。



運んできた女性を治癒師に診せ、他のパーティメンバー三人の無事等を伝えた。

お互い自己紹介をし、女性はシーナと名乗ってくれた。


「その人が怪我人か、大丈夫か?」

ギルマスがきた。


「はい、姉から預かった薬で治療したのですが一応確認をと思いまして治癒師の方に」

「そうか、ならばこれで任務達成だな。君たち姉弟には本当に世話になってばかりだ」

「いえ、これでも冒険者なんで」


「そうだな! ところでその肩の魔獣について説明してくれるか?」

あっ…おとなしくて忘れてたよ。


「巣にいた子供です…流石にとどめを刺すのは忍びなくて」

「ふむ、まだ小さいし、その様子だと随分懐いているようだが…」


「あの…ギルマス、その子どうなるんですか?」

治癒師の診察が終わったシーナさんが尋ねる。

「そうだなぁ…引き取り手がなければ最悪処分するしかないが…。 後は冒険者が従魔獣として登録するかだな」

そんな事できるんだ。ただ僕はこっちにずっといる訳じゃないからなぁ。


「ユウキ君は引き取れないのか?」

「そうですね、姉にも相談してみますが…おそらくは無理です」


「じゃあ…ボクに預けてくれませんか?今回ボク達があの魔獣の縄張りに入らなかったらこの子は…」

あの場所だといずれは誰かが遭遇していたとは思うけど、今言う事でもない。

それに食べられかけてたのに…。たくましいなぁこの人。


「ユウキ君次第だがどうする?」

「引き取ってくれるなら有り難いですが、大丈夫かな?」

肩から降ろし、シーナさんの方へ近づける。

キィ?


恐る恐る手を出すシーナさん。

キィキィー!

そう鳴くとジャンプして彼女の腕の中へ飛び込んでいった。


「大丈夫そうだな」

「ですね、ならお願いします」

「ギルドへ戻ったら忘れず登録してくれ」

「わかりました。大切に育てます」

何食べるんだ?あの子…。



「よし! みんな聞いてくれ! 怪我人の救助、魔獣の討伐無事完了だ。 ご苦労だった。帰ったら特別報酬を出すから期待してくれ」

「「「おおーーー!!」」」


「今夜は野営、日の出とともに帰還する。見張りは交代だ。休めるものはゆっくり休め」


その後ギルマスは盾持ちと斥候と何か話していたけどなんだろう?

知り合いっぽかったから、元パーティーメンバーとかか?



取り敢えず見張りの交代まで休もう。


って思ったのにテント壊されてるじゃん…。

いいよもう、その辺で寝る。

姉ちゃんがいたらなぁ…。


いや、頼ってばかりじゃ守れないよな…。





次回からアスカ視点へ戻ります。

(そろそろボクの出番?)

もう少しかな?

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― 新着の感想 ―
このまま仲のいい家族で終わるのか、感情ドロドロ姉弟愛に突き進むのかはアスカの反応に掛かってる ……頼むぞ!
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