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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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捜索



丑三つ時も近い真っ暗な住宅街をレウィを追いかけて走る。

途中、ふと思い出して全員に隠蔽をかけた。

私達みたいな年齢でこんな時間に外出してたら補導されかねない。

これで安心して全力で走れる。


隣を走るユウキは、セーブしてるとはいえレウィの速度にしっかりとついてきてるし、まだ余裕がありそう。

こうやって並んで走るのもいつぶりだろうか…。

「ユウキ、スピネルを置いてきちゃって良かったの?」

「暗い夜道を女の子に走らせるのは違うだろ…。ああ言えば待っててくれるからさ」

「そう…」

ほんと、大切にしてるね。両親より余程安心だよ…。そしてユウキの中で私は女の子に入らないんだなぁと、軽くショック…。


しばらく走り、方向から行き先の大凡の予想がつく。

「こっちって駅方向だよな?」

「だね…。レウィ、電車で移動してても追える?」

「わう! もちろん!」

頼もしいよ。一度探索を広げた時に近場にいなかったからそんな気はしてたけど…。

先頭を走るレウィは時々少し速度を落とし、確認するような仕草をしながらも、足取りには迷いがない。


ユウキの予想通り駅に到着。

そこから更に線路に沿って移動してるそうだから確実に電車に乗ったな。


「ユウキ、この時間ならもう終電過ぎてるよね」

「まさか姉ちゃん!?」

「線路を行くよ。最短だし、レウィも追いやすいだろうからね」

「はぁ…ったく。見つけたら絶対に一言いってやる!」

営業の終わった駅と線路上は当然真っ暗。暗視があるから私達には関係ないけど、普通は絶対にやってはいけない事をしてる罪悪感…。 (※注 良い子は絶対に真似しないように! ママ達は魔王で勇者でフェンリルだからへーきなだけです!)

魔王でもアウトだよ…。



「これ、住宅街とかを行くより速度出せるから、正解だったかもな」

一度線路内に入ってしまえば諦めもついたのか、ユウキはそう言う。

「確かにね…」

実際私達は電車より早い速度で線路上を疾走しているし。 (100キロ超え)

数字で聞くととんでもないね…。 異世界で何もない平原をこれを超える速度で駆け抜けてたけど、もし何かにぶつかってたら大事故になる速度だな。

ま、探索を使ってる以上そんな事は起こり得ないけどね。



走り続けること十五分ほど。

少し速度を落としたレウィは線路上から飛び出す。

ユウキと頷き合い、私達も後を追う。 (ママ、ここ見覚えがあるの!)

ティーにそう言われて、改めて周りを見渡し、目についたものを見てがっくりと力が抜けた。

「はぁぁぁぁ………」

「姉ちゃん、何だよそのすっごいため息は」

「行き先がわかったからよ…」

「うっそだろ、まさか探索?無理すんなよ!」

「ううん、ティーのお陰。 レウィ、ちょっとストップ!」

「わう?」

「二人ともあれ見て」

私が指差したのは大きく描かれた遊園地の看板。

レウィは首を傾げてるけど、ユウキは理解したようでこちらも盛大なため息。


「はぁぁ…。 姉ちゃんはレウィと母さんたちの所へ先にいってて。僕は未亜姉ちゃんに連絡入れておくよ」

「わかった」

スマホを操作するユウキと別れ、レウィにはもう速度を落としていいからと伝えて移動する。

私の探索にも母さん達が入ってるし。



まさかだよほんとに。

レウィと入ったのは大きなホテル。


こんな時間でもホテルのロビーは当たり前にあいていて、ホテリエの方が対応してくれた。

身分証として学生証を見せ、母親を探しに来たと伝える。

部屋をとるのに住所氏名は記入しているはずだから…。

「確認いたしました。 あの…このような時間にどうされたのですか?」

「なんの連絡もなしに帰らなかったので…。父親も心配していますし、危うく行方不明かと警察沙汰になるところでして…」

嘘だけど、そういえば必ず取り次いでくれる筈。どうやって見つけたかは気にしないでもらえると助かる…。

「お待ちください…」


ユウキにもホテルの名前と、ロビーにいるからとメッセージを送っておく。

誰もいないロビーのふかふかなソファーにレウィと座り、ようやくホッとする。

それにしても…。 (ティー達もお昼寝したホテル!)

だね…。ここは遊園地に併設されてるから、泊まるには便利なんだよ。

いくつかホテルはあるのに、同じところを選ぶセンスは母娘なんだろうな。


「お待たせして申し訳ございません。直ぐに降りてきてくださるそうなので、このままお待ちください。それとこちらを…。幼いお子様も居られますから」

「ありがとうございます」

ソファー前のローテーブルに置いてくれたのは紅茶とオレンジジュース。

そういえばレウィはいつの間に魔道具切り替えたんだろう。これなら私が心配する必要も無さそうだね。


紅茶を飲んでたらユウキもロビーに入ってきた。

「めちゃくちゃ寛いでるじゃん…。ここに母さん達がいるの?」

「うん、今呼んでもらったから、待ってるとこ」

ユウキも来たからか、またホテリエの方が飲み物を出してくれた。

未亜達には居場所を伝え、もう大丈夫だからと寝てもらったらしい。

巻き込んで本当に申し訳ない…。



人のいない静かなロビーに”チーン“とエレベーターの到着を知らせる音がなり、そちらを見ると降りてきたのはアキナさん一人。

母さんじゃないの!?

「どうしたの?こんな時間に…」

「あの、母さんは…」

「えっとね〜さっきロビーから連絡をもらって…あれ、なんだっけ?ほら…アスカちゃんのカメプロみたいなやつ。アレをストレージから出して見た後、真っ青になって震えてるんだよー。だから代わりに私が来たんだけどね」 

スマホか…。父さんやユウキ、私や未亜もメッセージを送ったからな。

プラスですごい数の着信通知も残ってるでしょうし。

それらを見てようやく事の重大さに気がついたんだろうなぁ…。


経緯をアキナさんに説明。

「…はぁ。お姉ちゃんなにしてるの…。私は確認したんだよ?ちゃんと知らせてあるの?って」

「それになんて答えてたんですか?うちの母は」

「”へーきへーき。遅くなるってなった時点で連絡するから。まだ平気だよ!“って」

そのまま忘れたのかぁ…。

「ごめんね、私もしっかり念を押しておくべきだったよ」

「アキナさんの責任じゃないですから…」

その時、またチーンとエレベーターの音。


俯いた母さんがトボトボと降りてきた。

あれは相当落ち込んでるなぁ…。 

ソファーの傍まで来て、泣いてるのがわかったから…私はもう何も言えなかった。

「…本当にごめんなさい」

「無事で良かったよ」 

「…父さんは母さんが浮気してるんじゃないかって落ち込んでたなぁ…。愛想尽かされたんじゃね?」

「…そんな! 絶対しないよ浮気なんて…」

ユウキも釘を指す程度の事は言いたかったんだろうけど、母さんは更に落ち込む。

「お姉ちゃん、浮気してないのは私達が証言するから。ね?」

「あきな〜…どうしよう…もう帰ってくるなって言われたら…」

「その時はうちで面倒見るし」

「いやぁ…一緒じゃなきゃやだぁ…」

はぁ…やれやれ。 


「とりあえず三人は部屋に来て。 大きな部屋だからそのまま休んでくれていいから」

確かに今から帰ってもみんなを起こしかねないもんね。 (いいなー)

ごめんよ。ティーも休みなさいね。 (あーい!)


落ち込んで見てられない母さんを連れてホテリエの方に説明し、追加料金を払おうとしたら、元々大部屋だから人数が増えても構わないと言われた。

「アメニティなども数は足りますからご利用ください」

「ありがとうございます。突然だったのに…」 

「問題ありません。何事もなくて良かったですね」 

ほんとうにね…。









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