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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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聖女としてなるために



二日あった文化祭も終わり。

本来は休みのはずの土、日が学校だったため、振替休日もニ日ある。

月曜の朝、アキナさん達を送りがてら、私達もあちらへお土産をもって行くつもりだったのだけど…。


どうやら、アキナさん達は母さんとまたこちらで出かけるらしい。

父さんが朝からレウィをつれて仕事に行ってるから、今のうちに〜とか聞こえたけど大丈夫なのだろうか。またケンカしないでね?


幸いなのはアキナさん達が不自由している様子が全くないところかな。

この数日の滞在で、アキナさんも奥様方もこちらにめちゃくちゃ馴染んでて、服も着こなしてるし家電も平気で使いこなすのよね。適応能力が高すぎてびっくりする。

早めにシルフィー達にお土産を持って行きたかったけど、時間を戻す為には私達だけで行くわけにもいかず…。

文化祭で出してたのと同じ料理を家でも作ったから、持って行きたかったのだけどな。


予定がなくなってしまったよ…。出かける母さん達を見送り、せっかくのお休みをどうしようかとリビングで悩んでたらティーが…

「あ、それならママ、丁度いいの。師匠とメリアさんがママに用事があるって」

「え…? また何かトラブル?」

「ううん、聖女関連!」

それは確実にトラブルではなかろうか。とはいえ無視するわけにもいかないし行くけど。


「あー姉ちゃん。それ、シャーラから僕も聞いてるよ。話そうと思ってたんだ」

「ユウキもきいてたの?」

「うん、昨日来てたから」

あー、会いに来られるようにしてあるものね。私が気が付かなかったってことは近くにいなかった時か。 

ユウキも私を呼んでいると言伝として聞いてるだけで、詳しいことは聞いていないと言うから、もう直接確かめるしかない。


当然、みんなついてくるのだけど、ユウキは来ない。

シャーラも何やら忙しいから〜って、その合間に少し…と昨日会いに来てたそう。

なので今行っても会えないから、今日はスピネルと出かけるんだって。

別にいいけどね…。



ーーーーーー

ーーーー

ーー



いつものお城へ転移し、メリアさんの部屋へ向かう。

リズは相変わらず師匠には会いたくないって怖がってるけど、お留守番もイヤだからってついてきてくれてる。

まぁ未亜もリアもいるから大丈夫よね。

それに最近はシエルとも姉妹みたいに仲良くしてる。

今もティーとシエルに手をつないでもらってるくらい。キッカケという程、特別なにかあったわけではないけど、見ているコチラとしては微笑ましい限り。


メリアさんの私室の近くで師匠とばったり遭遇。

「アスカ! ちょうどよかった。シャーラからきいたのか?」

「はい、言伝を。ティーからも聖女関連だと聞いてます」

「ああ。ちょっと知恵を貸してもらいたい」

「知恵、ですか…」

聖女の力ではないんだね。

何をしたらいいのだろう?と悩みながら師匠と一緒にメリアさんの私室へ。


「アスカが来てくれたぞ!」

師匠はそう言いながらノックもせずに扉を開け放つ。

「本当ですか!?」

メリアさんも怒らないのね。師匠の横暴にはもう慣れたものか…。

「助かりました…。私ではもうお手上げでして」

聖女イアリスさんも来てたんだ。


話の内容が聖女関連という事もあり、イアリスさんから直接詳細を聞かせてもらった。

「アスカ様の…大聖女様の噂が世界中に広まり、アチコチから弟子にしてほしい、と聖女見習いの子達が集まってきているのです」

「…えぇ!?」

「しかも、各国やそちらの教会からも是非に…と」

「それ、もう圧力のレベルでは…」

「だから困ってるんだ…。無碍にしてしまったら軋轢を生みかねん。国と教会、両方を相手にな」

メチャクチャだよ…。私のせいになるのかなこれも。 まぁ、そうなるよね…。



「そこでなんですが…聖女になれるよう祝福してはいただけないでしょうか? アスカ様なら出来ませんか?」

そう言ってにっこり笑うイアリスさん。なんか笑顔がちょっと怖い…。

今回はそれ程に切羽詰まってるのかも。 (出来るの?)

まぁ、聖女にって話ならできるよ。祝福でどうにかする様なものでは無いけどね。 (ママやべー…)


私自身、聖女になってるのよ?方法くらい知ってる。 (どうするの?)

聖魔法を扱えるように伝授してあげればいい。 (そんだけ!?)

そうよ。ただ、適正があるかはわからないけどね。これはどの魔法にも言えるのだけど、適正ってのは生まれ持ったものだから。

幾ら伝えても聖魔法への適正がないと、普通はどうにもならない。

ただ、候補として国を跨いでまで来てるくらいだからその心配はないとは思うけどね。 (ああー)


一応、適正が無かったとしても無理やりなんとかする方法はあるけど、普通の人だと負担がすごいから通常は適正のある人に伝えるものだね。 (じゃあママも?)

私の場合は元々適正があったんだろうってのと、魔法に関してなら見て覚えてしまうから。

聖魔法、或いは神聖魔法と言われるものもそれで覚えてしまって、遅れて聖女っていう称号がついた。 (あ、まだ男の子の姿だったのにってやつ)

そうそう。 素質のある子なら、それを開いてあげるだけだから簡単よ。 (ほえー)


なんにせよ、イアリスさんが困ってるのなら、私に出来ることはしたい。となると…

「まずは素質があるかの確認をして、素質のある子はそのまま聖女になれるよう尽力します。大丈夫だとは思いますが…もし素質のない子がいたらどうします?」

「…なんとかなりませんか?」

「本人の負担がキツイのでオススメはしませんが…。どうしてもと言うのであれば魔道具で無理矢理補うくらいでしょうか」

「それでお願いできますか…?」

うーん…。ま、最終的には本人の意思を確認するか。


「よし、話はまとまったな。 私は二人を教会へ送ってくる」

「おねがいしますアリッサ。 皆様はこちらでお待ちください。今回は教会内の問題ですので、部外者は入れないのです。申し訳ありません…」

仕方ないか…。聖女になる為の手続きというか儀式みたいなものは、門外不出だったりするだろうし。


渋々だけど納得したみんなは、お城でお留守番。

メリアさんと待っててくれるそう。ごめんね…。 (気をつけてね)

うん、行ってくるよ。 (こっちはまかせてー)

お願いします。




例の重たい聖衣に着替えてから、馬車でいつもの様に教会の裏手へ乗りつけ、教会内へ。

師匠とはここでお別れ。

「私は馬車で待っているからな」

「アリッサ様はお城に帰られたほうがよろしいのではありませんか?本来は陛下をお守りするのがお役目でしょう?」

「…チッ。昼には一度様子を見に来るからな」

「わかりましたわ」

師匠をのせた馬車は石畳の道をガラガラとお城へ向かって帰っていった。

  


私はイアリスさんに案内されて、初めて入るエリアに。

「こちらは聖女としての教育等を受ける為のエリアになります。見習い期間中はここから出ることはできません」

厳しいなぁ…。


イアリスさんもここで数年間過ごされたそう。

宿舎もここにあり、適正があるだろうと見込まれた子達がここで過ごし、その中でも聖女になれるのは一人。 (なんで?)

適正の一番高い子を選ぶからだろうね。 他の子は聖女の補佐とかになるのが普通。後は影武者だったりね…。 (おおぅ…)

複数居ると権力派閥的な問題がでてくるの。教会ってのは複雑なんだよ。 (めんどくさいの)

本当にね。私からしたら、人々を助け、教え導く立場にある教会が権力にこだわるのはどうかと思うのだけどね。でもそれはあくまでも私の意見だし。

それに、イアリスさんは本当に凄い聖女様で信頼できる人だよ。 (ママの嫁だしナー)



「こちらが学びの間です。皆様はここで様々な知識を学ばれています。我が教会の見習いもいるのですよ」

イアリスさんがノックして開けた部屋は、学校の教室くらいの広さの部屋。

白を基調とし、清らかさを体現しているような部屋だけど、大きなソファーもあり、ラグなども敷かれてて、寛げるようにはなってるからあまり堅苦しさは無い。

目立つのは大きな書棚だろうか。学ぶための本が並んでるのだろう。

室内では何人かの女の子達が思い思いの場所で一生懸命に本を読んでるし。


「貴女達、こちらに並びなさい。大聖女様が来てくださいましたよ。今から貴女達の適正を見てくださるそうです」

いきなり!?

みんな一斉に駆け寄ってきたよ!?…ああもう。そんなキラキラした目を向けないで。やるからぁ…。


並んだのは十数人の女の子。全員、十才前後くらいだろうか。

一言、ことわりをいれてから、魔力ドームで全員を包む。

それっぽく見せるため、キラキラとさせておくのも忘れない。 (演出大事!)

だよね。 びっくりしてるけど、それくらいのがいいでしょう。

イアリスさんの希望だし、祝福も一応かけておく。 (大丈夫かな)

全員体調に問題はないから、疲れとかが取れる程度だと思うよ。 (だといいの)


鑑定の術式をドームに流し込み、一人ずつ表だけでなく深層まで見ていく。 (深層?)

わかりやすく言うなら、まだ眠ってる力。覚醒してないものとか血筋とかだね。 (ねぇママ、それ聖さんに使った?)

あ…。 (ママぁ…)

普通こんな手間の掛かる鑑定しないもの! (うっかりがすぎる)

元々自分で持ってるスキルでもないから扱いには慣れてないんだよ! (そういうことにしとくの)

しといて! しかも聖さんに使ったのは鑑定の魔道具の方だから。アレではできないのよ。 (なるー)

…ちょっと待って。なんで私は鑑定についてここまで理解してる? (……祝、ママ鑑定スキルゲットー)

慌ててスキル欄の確認。しっかりと対人鑑定のスキルが…。使い込んできたからかっ! (便利だしいいのだー)

うん、そう思っておくよ。対物鑑定の知識のまま扱えてる感覚でいたけど…。 (でも制限はあるみたい)

うん? (魔力で覆った相手のみ)

本当だ…じゃあ今までとさして変わらないね。鑑定についての知識が増えたくらいか。



「アスカ様? どうでしょうか…」

待たせてしまったよ…申し訳ない。


えーっと…魔力はみんなそこそこ高い、けど…。光魔法への適性はあっても…

「(…すみません、全員聖魔法への適正はありません)」

「(そんな…!)」

子供たちには聞かせないよう、イアリスさんにだけ小声で伝える。

恐らくこの年齢に対しての魔力の高さと、光魔法への適正を聖魔法への適正と見誤ったんだろう。 

こっちの世界って鑑定の魔道具がほとんど無かったはずだし。   

それにしても…イアリスさんの跡を継ぐ予定の子も鑑定で確認してないのね。 (ここのお城にはあったのにね)

まぁ…聖女関連は複雑なのよ。多分ね。 (へんなのー)


結果は後で教えると子供たちには伝え、勉強に戻ってもらう。

「アスカ様…、なにか方法はないのですか?うちとしても次代を育てなければならないのです。 それに他国からお預かりした子達も…」

必死なイアリスさんは聖女としての責任感が凄いなぁ。私みたいな、なんちゃって聖女とは違う…。 (いやーどうだろう…)


「方法はなくはないのですが…」

「あるのですね! ではそちらをお願いできませんか?」

「…簡単ではないですよ。それに、先程お伝えしたように子供達にも負担ががかかりますし」

「それでも…そうだとしても! あの子達の覚悟を無駄にするのはあまりにも…」

「覚悟、ですか…。 イアリスさん、あの子達の親はそういった聖女になるという意味や覚悟を理解してるのですか?」

「聖女の修行の為、家を出た時点で家族との縁は切るのです…。聖女とはそういうものなのです。後々、身内だけ特別扱いしていると言われないためにも…」

じゃあ聖女になれなかったらあの子達は…。考えたくもない。


確かにそんな覚悟で、ましてや国さえ越えて来ている子達を突き放すのはあまりにも…。

一度イアリスさんとしっかり話し合うしかないな。







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