対応に追われ
しばらく保健室で休んだあと、ちょうどお昼も近いし着替えるため更衣室へ。
その間、奈々が“今度は絶対に守る”といって離れなかった。
着替えた後はドレス姿で歩く訳だし、当然目立つ。一人じゃないのはありがたい。
化粧のリングもつけて、ドレスに合うものに設定。
リハーサルや昨日は忘れてて使わなかったから、今日だけ特別。
雰囲気が変われば、さっきのトラブルも多少なり王女姿になった私からは切り離せないかなと…。
「おぉ…今日はまたとびっきり美人! さすがアスカ」
「ありがと奈々。教室までエスコートお願いね?騎士様」
「はっ! 任されたー」
廊下に出ると、たくさんのお客さんに見られてるのはもう諦め、教室へ向かう。 (ママ後ろ…)
え?
振り返ると、ぞろぞろと人が付いて来ててちょっと意味がわかんない!
「奈々、急ごう」
「うん?うおっ、やばっ!」
完全に客引きみたいになって、更衣室から教室迄引き連れてきてしまった。
おかげでその後のお客が増えたのは言うまでもない。
改装のため、一旦閉めている教室に入ると、みんなが心配してくれた。
「アスカ、大丈夫!?」
「うん、心配かけてごめんね花凛」
「そんなのは全然いいけど…」
「アスカ様!」
駆け寄ってきた聖さんは私の頬を触ったりとくすぐったい…。
「よかったですわ…お怪我も痣もなくって…」
「一応、加減してくれてたんじゃないかな?」
ということにしておこう。
麻帆は何も言わないけどホッとしているのは表情でわかる。心配かけたよね…。
クラスのみんなも似たような表情してるから…
「みんな、ごめんなさい。心配かけてしまって。この後は気持ちを切り替えてよろしくお願いします」
せめてこの微妙な空気だけは壊しておきたい。
「そうよね、トラブルはあったけど、本番はこれからだもの!」
「うん! 頑張るぞー!」
麻帆と奈々も私の意図を組んでくれたのか、そう言ってくれて。
二人の元気な声のお陰でようやくみんなも気持ちを切れ替えられたみたい。
テキパキと内装の変更をして、料理担当の子も仕度を始めた。
「じゃあ私は抽選結果を伝えてくるわ」
麻帆はそう言うと、私の肩をポンと叩いて教室を出ていった。本当にごめん…。
抽選方法とかは教室の外に大きく書かれてるけど、今日も結果の発表は校内放送を利用させてもらえる。
生徒会が味方だとやりたい放題よね…。
一回目の抽選はお昼少し前。二回目は一回目のお客さんがはけたら直ぐに始める予定。
抽選で選ばれた十数名だけが教室に案内されて入ってきた。
…うちの子たちがちゃっかりいるな?ティー、リア、リズがいたからびっくりした。 (ふふんっ)
それと、スノウベルさんも…。今は髪色が茶色いから見逃しそうになった。さすが幸運持ち。
ティー達はさっきも食べてたけど大丈夫? (あれは味見!)
平気ならいいけど…。
廊下の見学者もすごい人数で、その中にいる悔しそうな生徒会長はまたハズレたらしい…。
魔法使いの格好をしたクラスメイト達が召喚したっぽい演技も行い、怪しく光る魔法陣。
「ようこそ勇者様。突然の召喚で驚かれたことでしょう。説明の前にまずはおもてなしさせてください。 皆、勇者様方をご案内して差し上げて」
「「「はいっ」」」
予定通りの寸劇を行い、テーブルには豪華な料理が並ぶ。 (すっげー!)
ティーを始め、どのお客さんも喜んでくれてるから成功と見ていいかな。
リズもようやく笑顔を見せてくれててホッとする。
予定通り、召喚した理由などの説明をしながら食事をしてもらい…。
慌てて駆け込んできた騎士役の奈々も迫真の演技で盛り上げてくれた。
デザートまで済ませ、食べ終わった人達から順番に鑑定とプレゼントの手渡し。
昨日とは違い、名前の記入は聖さんも手伝ってくれたから早かった。
因みに、ティーは剣士、リズは聖女。リアは魔法使い。
ようやく遮音の範囲に入ったから、リズたちと普通に話すことができた。
「リズはお母様と同じ聖女様なのです! わぁ…カードもピカピカ」
リズが当てたのはSランクのギルドカードだから、白銀色をしている。
ティーとリアはAランクでちょっと残念そう。
「アスカ…帰ったらお説教よ」
「…わかったよ」
リアにも心配かけたもんね…。
スノウベルさんはしっかりとSランク。
目線から聖女になったリズをうらやましそうに見てたから、聖女様に。
「ありがとう…これもかわいい」
アクセサリーも気に入ってもらえた様子。廊下で待っていたアキナさん達と合流して、手を振りながら移動していった。
二回目の抽選、ここでようやく生徒会長と、二人の生徒会役員が入ってきた。
よかったー…。校内放送とか使わせてもらってるのに、生徒会長が選ばれないまま終わらなくて。
うちの子たちからは流石にもういなかったのは仕方ないね。
あの競争率の中、三人もいたのが奇跡。
後日、リズがポロッと言ってて知ったんだけど、リズのは父さんが当てた整理券を交換してくれてたんだって。
ティーいわく、私には内緒にしてほしいと言ってたそうで、直接お礼は言えなかったけど、私の中で父さんの株は上がった。 (たまにはいいこともしてる)
普段の行いがアレだと、もの凄く良い事してくれたみたいに感じるよね。 (ママも言い方…)
ごめん…。 (でも気持ちはわかる)
だよね!
話は戻って…。
食後、当たり前のように私の前に並んだ生徒会長。
イメージ的に剣士か弓士のどちらかだろうと思い、2つを当時に押して先に反応したほうを選んだ。…結果は弓士。
名前の記入も頼まれたから書き込む。カードとアクセサリーを渡す時に手を握られて、なかなか離してもらえなかったのは怖かった…。
「とても美味しかったわ。ありがとう。これも…大切にするわ」
「あ、ありがとうございます」
残りの生徒会役員は先輩の男子で、こちらもクラスの男子と同じ様に相変わらずビクビクされてて傷つく。
そんなに怖がらなくてもいいのに…。 (……)
大体、怯えるくらいなら聖さんに書いてもらえばいいのに、私の前に来る理由がよくわからない。
二回目のおもてなしの後、内装を戻してオープンさせた途端、見学をしていた一般のお客さんがなだれ込むように入ってきて、私は慌てて着替えに行く羽目に。
模様替えの手伝いとかしてる場合じゃなかった!
本来行うはずの寸劇もできないくらいお客さんが入り、冒険者として屯しているだけだったはずの生徒も接客に追われ、私と聖さんもカードへの書き込みや、さっき程質の悪い人はいなくても“時間が空いたら遊びに行かないか?”と声をかけられたり連絡先を聞かれたりと無駄に時間を取られる。
むしろ貴方たちのせいで時間がなくなってるんだと言いたい。
そんな人達は担任によってすぐに追い出されていったけど…。 (あれからずっと教室にいるね)
本当にすみません…。 (ママは悪くないの!)
ありがとね…。
お昼過ぎて間もなく、食事類はすぐに売り切れてしまい、プリンチュ○ルで凌ぐしかなくなった。
しかもあれだけ作り足してきたのも結構早い段階で減ってきて、元々数量制限してたものを更に制限した程。
食事がなくなったから接客側には余裕も出てきて、当初の予定通り寸劇を挟む。
ただ…リアルトラブルがあったから、そっち系のものは自重したそう。
おかげで、受付をする冒険者ばっかりになるっていうね…。
結果として私と聖さんが忙しくなったけど、お客さんのウケは良かった。
来店しているお客さんまで真似するくらいに。
「おねぇちゃん、わたしもなにかおしごとうけられる?」
「カードを見せてもらえるかな?」
「はいっ」
5歳くらいの女の子が渡してくれたカードはEランク。
「お花を集めてきてほしいって依頼があるけどお願いできますか?」
「おはな! うんっ、だいじょうぶ! ママといってくる」
隣にいた母親らしき人は苦笑いしつつお辞儀をして、女の子を連れて教室を出ていった。
「幼い子の対応に慣れておられますわね」
「まぁ、ね?」
あそこまで幼くないとはいえ、もう私も子持ちだし…。 (…♪)
「あ、あの…僕もなにか依頼受けられますか?」
「…カードを見せていただけますか?」
男性から渡されたのは最低ランクのF…。運が悪かったね。 (ぷふっ)
「こちらのランクですと、街なかの清掃等の外に出ないものに限られますが…」
「そ、そうですか…」
がっかりして出ていってしまったね。なんかごめん、嘘でももう少し難易度の高い依頼を出してあげるべきだったか…。
経験上、最低ランクって子供だったり、雑用仕事を受けるために取り敢えず冒険者登録してるっていう戦う力はない人が殆どだったから。
そんな事を考えてたら、また行列が…。
アドリブで依頼を割り当てるのには本当に難儀した…。
そして、聖さんまで巻き込んでごめん!
途中、聖弥くんがユウキとスピネルと一緒に来てくれて…。なんだろう親子かな? (あながち)
今はもう師弟ではあるか…。 (うん!)
「ユウキ、師匠になるのなら格好は考えなさい。真似したらどうするの?」
「…わかったよ。気をつける」
わかってくれたならいいけど…。流石に学校で特攻服はやめようね。
偽物とはいえ、ギルドカードが余程嬉しかったのか聖弥くんは大切そうに握りしめていた。
いつか本物がもらえるといいね…。
「ママー、ティーとリズにも依頼ください!」
元気な声に振り向くと可愛いうちの子が。
「カードを見せてもらえる?」
「はいなのです!」
「SランクとAランクですから…ダンジョン攻略とか如何でしょう?」
「それがいいー!」
「ティー姉と行ってくるのです!」
二人は依頼を受けるだけの為にまた教室に来てくれたのね。リア達は外で待っててくれたようで、こちらに手を振ってくれたから振り返しておく。
こんな感じに受付をしていたらプリンチュ○ルも全部売り切れ、うちのクラスはすべての在庫が無くなった。
…そろそろ文化祭も終わりかな。
ちょうど校内に文化祭終了の案内が流れ、お客さん達は帰宅していく。
ここからは各教室とかの大掃除になる。
準備段階から色々あったし、疲れたけど…いざ終わると寂しく感じるものだね。
言葉少なく静かに掃除しているみんなも同じなのかもしれない。




