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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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文化祭



文化祭もいよいよ本番。

とはいえ、初日は校内だけのイベントだから気楽なもの。

明日は確実に忙しいだろうから、今日のうちに未亜のクラスやユウキのクラスも見に行っておきたい。

そう思っていたのに…。


「大変! 生徒会役員が全員来てる!」

どうして?朝イチから生徒会大集合って…。まさかなにかマズかった…?

「慌てなくて大丈夫よ。整理券配ってるのよね?」

「あ、お客さんでしたか…。よかったぁ〜」

生徒会長が代表で説明してくれて、たまたま近くにいた花凛が対応してくれた。

でも…今日って整理券ないよね?


「すみません、生徒会長。整理券は明日に限ったものでして…。今日はお昼の時間に先着なんです」

「え…?」

そうなんだよね。だって生徒と教師しかいないのに、そこまでする必要あるかな?と。

整理券作るのも手間だし。


生徒会の人達はうちのクラスの前で会議を始めてしまった。

アレはもうちょっとした営業妨害では?

他の生徒も生徒会が集まってる所には入りにくいでしょう…。

「アスカちゃん、多分お昼はとんでもないことになるわ。未亜さんや弟さんの所へ行きたいのなら今のうちよ」

「え、でも…」

「いいから。いってきて。 でもお願いだからなるべく早く戻ってね」

麻帆にそう言われ、追い出されるように教室を出た。


料理の仕込みも、あとは最終確認だけだから大丈夫と言えば大丈夫だけど…いいのかな。

振り返ると麻帆に早くいけとジェスチャーされた。

…お言葉に甘えるか。



高等部の催しも他のクラスは何をやっているのか少し見ながら、中等部へとつながる渡り廊下へ向かう。

別棟とを繋ぐ渡り廊下には、どの教室で何をやっているのか、ポスターが出ていたから見ていく。

未亜は3年の2組…。結局未亜とユウキが何をするのか聞けずじまいだったから楽しみ。

「えーっと、まず未亜は…」

お化け屋敷!?大丈夫なの、未亜…。あの子苦手よね?

心配になった私は足早に未亜のクラスへ向かった。

途中、すれ違った生徒達に驚かれたけど、ごめん、今はかまってられない!


到着した教室は外観から既にもうおどろおどろしくて…絶対に未亜にはキツイって言い切れる。

「あ、お姉ちゃん! 来てくれたの?」

「未亜!? 大丈夫…?」

受付をしている未亜は笑顔で対応してくれた。

あれ…?でもなんか違和感が。私を見ているようで見ていない。

それに、なんていうか…普段の笑顔と違う。

張り付いた、作り笑いのような…。


入場料を払って、代わりに小さな懐中電灯を受け取る時に触れた未亜の手に、魔力安定を流しておく。

多分これで落ち着くはず。 

ビクッとした未亜は、やっと私を見てくれた様で、安心したような笑顔を向けてくれた。

うん、大丈夫そうね。無理せず頼ってくれればいいのに。


お化け屋敷そのものは、まぁ…ね。コメントは控えよう。

頑張ってたと思うよ、うん。…私はこういうのの怖さがわからないから判断できないのよね。


ぐるっと回り、廊下へ出たら未亜が待っててくれて、“ありがとう”と小声で言われた。

バレてたか。

「未亜、一度交代だから休んできていいよーって、アスカ先輩!?来てくれたんですか!」

未亜の親友の明ちゃん。休んでくるよう言うって事は気にかけてくれてたんだね、さすがいい友達だよ。

「見させてもらったよ。明ちゃんもお疲れ様」

「ありがとうございます! あ、未亜。折角だからアスカ先輩と見て回ってきたら?」

「えっ、でも…」

「いいからいいから! 未亜のことお願いしますね」

「任されたよ。 行こうか未亜」

「う、うん!」


教室を離れて、少し静かな場所へ移動。そこで事情を聞いた。

多数決でお化け屋敷になってしまい、なんとか受付ってポジションにしてもらって頑張ってたけど、かなりキツかったらしい。

「さっきので数日は保つと思うから。でも無理しないのよ? 初めから言ってくれたら対策してあげたのに」

「私達のクラスの事だからお姉ちゃんに迷惑かけられないって思って…」

「あのね、未亜。私にとって未亜は大切な家族なの。だから迷惑なんていくらでもかけていいし、頼っていい。未亜だって私がもし頼ったら迷惑なんて思う?」

「絶対にないよ! お姉ちゃんの為ならなんでもする!」

「私も同じ。ね?」

「うんっ! ありがとう、お姉ちゃん」

「ん。よしっ。じゃーうちの弟のクラス、見に行こう?」

「はーい! お姉ちゃんはユウキくんが何をしてるか知ってるの?」

「ううん。教えてくれなかったのよね。というか、最近私に冷たいし…」

「そうかなぁ…」

本格的に姉離れされたんだろうなぁと、最近思ってる。

まぁ恋人のスピネルやシャーラもいるし、仕方がないんだろう。

私自身も周りにいつも誰かがいるから、以前のようなユウキと二人きりだった頃とは状況が違ってるのも確か。

まぁ仲が悪い訳でもないし、もし頼られるような事があれば幾らでも力は貸すつもりでいる。

もちろん私にできる範囲で、にはなるけど。


ユウキは2年1組。

近づいた教室からはにぎやかな声が聞こえる。

何をしてるのかは外観からはわからなくて覗いてみた。

「…未亜、アレなんだと思う?」

「多分、コスプレ…」

なるほどね。夏休みにみんなで見に行った映画の魔法少女がいたり、奇抜な格好の子が接客をして、お茶やお菓子を出してる。

でも、出してるお菓子はどう見ても市販の駄菓子…。

コスプレに資金使いすぎたんだろうな。うちのクラスみたいに手作りできる人は居なかったんだろう。

んで、問題のうちの弟はといえば…。

「ねぇ、私は姉としてそろそろ止めるべきかな?」

「うーん…お祭りだし見逃してあげてもいいかなーなんて…」

それもそっか。例えそれが眼帯をつけて、特攻服を着た弟だったとしても。

「よし、見なかったことにするね、私」

「わ、私も…」

教師が許可してるのなら私がとやかく言うのも違うものね。


とはいえ…、いつまで拗らせてるのやら。

「アスカお姉ちゃん達…よっていかないの?」

「ちょっと様子を見に来ただけだからね。ユウキには私達が来たのを内緒にしてもらえる?」

多分私には見られたくないだろうし。”姉ちゃん達なんできたのさ?“って言われるのが容易に想像できる。

「…うん?わかった…」

ふらっと現れたスピネルは、またふらっと去っていった。

相変わらず当たり前に学校にいるねあの子。


「スピネルちゃん、普通に学校にいるの大丈夫なのかな」

「私達くらいにしか見えてないからね。特に問題もないのなら口は出さないつもり」

「例えばだけど、お姉ちゃんはユウキくんが何をしたら怒るの?」

「うーん…大丈夫だとは思うけど、無責任なことをしたり、泣かすようなことをしたら、先ず事情を聞く、かな。それから叱るか決める」

「いきなり怒りはしないんだ?」

「それはしないよ。だって事情もわかってない相手にいきなり頭ごなしに叱られて受け入れられる?」

「無理かな。やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだね!」

「何よそれ」

「私が好きになったお姉ちゃんは、やっぱり素敵な人だなって改めて思っただけ」

「そう?ならいいけど…」

幻滅されないよう頑張らないとだな…。






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