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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第一章

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閑話 ユウキの冒険者活動 1





~~ギルドでの姉VS弟直後~~


ユウキside



姉ちゃん達と別れ、ギルマスと一緒に訓練場を出てギルドのロビーへ向かう。

「すぐにギルド証を作らせるからな」

「わかりました」

「しかし、君も大概だが姉の方はとんでもないな?」

まぁ…元魔王だし。


「本当に味方で良かったと心から思う」

「はぁ…そんなものですか?」

「うむ、敵にしたら国が滅びかねん」

「そんなことしませんって」


「うむ、だから味方で良かったということだ。はっはっは。 君たちからは悪意なぞこれっぽっちも感じないからな。そこは安心しているのさ」

「それなら良かったです。変に警戒されてしまうと僕はともかく姉は悲しむので」

アスカ姉ちゃんは性別が変わってから特にメンタルが弱くなった気がする。不安定さはだいぶ落ち着いたみたいだけど。


「力を持つと言う事は難しいものさ。使い方も、使い時もな」

「本当にそうですね」

「これでも私はこの辺で最強に近かったからな。理解できる部分もある。 まぁそれも今日粉々に、プライドとともに砕けたのだが…」

「なんかすみません」


「いや、気にしないでくれ。何やら晴やかな気分でな?悪くない」

そうならいいけど…僕らは所謂チート持ちみたいなものだし。

僕もアスカ姉ちゃんも殆どのスキルは戦いとかから学んで得てきたものだから、誰かから突然貰うチートと同じにされたくはないけれど。

特に姉ちゃんの魔道具の知識は長く積み重ねてきたものみたいだからね。

翻訳スキルみたいに、召喚の時に貰ったものも少しはあるけどさ。


「ではギルド証を用意してくるから少し待っていてくれ」

「わかりました」

ホールに集まってる冒険者たちはこの救出作戦の参加者かなぁ。

二人ほど手練れがいるな…。




数分でギルマスは戻ってきた。

「待たせたな、これがギルド証だ。普通は黄から始まるのだが君は銀だ。上から三つ目になる」

「良かったのですか?」

「うん?特別ではないぞ?私が試験をして認めたものは銀になる。まぁ今まで二人しかいないがな」

それを特別っていうのではないのだろうか?


「では救援部隊に説明をするので、君も聞いてくれ」

「はい。ギルド証ありがとうございます」

「うむ」 



ギルマスからの注意事項や、これからの予定を聞いていたら姉ちゃん達がロビーに戻ってきたみたい。

暫く別行動になるけど…。よくある事なのに少し寂しく感じる。

単にアスカ姉ちゃんが心配なのかもしれない。 …何かやらかしそうで。


説明を終えたギルマスは姉ちゃん達に話しに行った。

僕は…いいや。姉ちゃんと目があったから手だけは振っておいたけど。

なんか照れくさいし。



「なぁ、お前この辺じゃ見ない顔だな?新人か?」

「そんなとこ」

「そうか。よろしくな!」

絡まれるか?って思ったけど普通にいいやつだった。

目的地へ移動中にパーティメンバーも紹介してもらった。

ギルド証見せたら驚いてたけど。


ここで冒険者を続けることは出来ないかもだから、あまり親しくするのも気が引けるが、やっぱりこういうのいいよなぁ。

冒険者仲間とパーティ組んでワイワイやるっていうのはさ。

ここ最近は召喚されても、仕事は一人で片付けるほうが早くって。

パーティなんて組まずに目的をちゃっちゃと果たして帰るって感じだったからね。


懐かしいな、アスカ姉ちゃん。いやまだ兄ちゃんだった頃。

こんな風に一緒に組んで大冒険したっけ。


「どうかしたのか?」

「いや、前にパーティ組んでた時のことを思い出して懐かしかっただけだよ」

「それってギルド出てくるときに手を振ってたすっごい美人の人か?」

見られてたか…。


「まぁそうだね。背の高いほうだね」

「マジかよ。羨ましいな! うちなんて男しかいないからなぁ」

「言っとくけど、あの二人姉だからね?」


「は? いや言われたら少し似てるような…」

よく見てるなこいつ。


「じゃああれか?俺が声かけても大丈夫なのか?」

はぁ…?まぁ好きにすればいいと思うけど。どうなっても知らないけどね。

「好きにしたら?」

「やったぜ!」

「……」

冒険者たちと話しながら街をでて街道を歩く。

街道は本当に安全らしくみんなのんびりしたものだ。




街から徒歩で数時間。 街道を逸れて移動し、森に少し入った所でギルマスから号令がかかる。

「そろそろ日が暮れる! 各自野営の準備だ。ここを拠点とするぞ」

ギルマスからの指示が聞こえる。


時間は…陽が傾きかけたくらいか。


ここがいいかな。ある程度視界の確保もできるし、落ち着ける場所だ。

簡易の小さなテントは持ち歩いてるからいつでも野営はできる。

テントを広げ、中に入り少し休む。


今回参加してるのは三十人ほど。

七人くらいはアリアさんと話してたからおそらく騎士の人だろう。

他には二人ほどベテランっぽい手練れの冒険者もいた。

アリアさんと話してた騎士らしき人のうち二人がいつも僕の近くにいるのはきっと護衛なんだと思う。


かえって手間をかけちゃったのかなって思うけど…何もしないままってのは違う気がして。

アスカ姉ちゃんはしっかり自分のできることをしたんだから。

僕だって。 

いや…ただのワガママなのかもだけどさ。




「ユウキ君、少しいいか?」

ギルマス?テントの外から声をかけられる。

「はい。大丈夫です」

「ついてきてくれないか」


テントから出てギルマスについていく。

「すまないな、実は魔獣の痕跡を近くで見つけたと報告があってな。アスカさんが見つけてくれた資料と照らし合わせてみたのだがどうやらアタリらしい」

姉ちゃんそんな事までしてたの? ほんとにもう…。かなわないや。


「その資料見せてもらっても?」

「ああ、構わない。 と言うか君の意見も聞きたくて呼んだのだしな。恥ずかしい話なのだが私は魔獣などには詳しくなくてな…。 魔王討伐パーティにいたからという理由でギルドマスターにされてしまったものでな」

前衛してたって言ってたし、ギルドマスターになる理由は分かるけど…。

魔獣に詳しくないってどういうことだ?


まぁ今はいいや。それより資料だよ。

見た目は小型のグリフォン?顔はちょっと違うけど。羽とかは同じだから飛ぶだろうな。

知ってるグリフォンだと二十メートルはあったけど、こいつは二メートルくらいか。

アスカ姉ちゃんと話した違う世界で戦った毒を使うやつとも外見は違う。

ただ読む限りだと姉ちゃんの言うとおり習性が似てる。そして使う毒も。


引っかかるのは人を襲ったことがないってとこだけど…。

「ここだ。野営の準備をしていた一人が見つけた」

足跡に、木の幹についた体毛。そして爪痕。


これ駄目なやつじゃん。

「ギルマスすぐに野営地に戻りましょう。ここは危ないです」

「なに?どういう事だ?」

「戻りながら話します」


来た道を走りながら説明する。

「姉の言うとおり、おそらくこの魔獣で間違いないと思います。 それで、さっきの場所は魔獣の縄張りを示すものです。木に身体や爪でマーキングしてます。しかもその跡があるのが木のこちら側。つまりこちら側は縄張りの中になります」

「なら我々はヤツの縄張りの真っ只中に野営をしているのか?」

「そうなります。 ただこんな人里近くには今まで来たことがないのになぜ?という疑問はありますが」

「うむ、人里を嫌い、山や森の奥に住むのを好むと書かれていた。 しかし助かった。魔獣など出会ったら切り伏せて終わりだろう?苦労したのは魔族ばかりでな」

脳筋かこの人…。 敵の情報って大切なはず。 いや、魔族を相手にしなきゃだから余裕がなかったのかも。



グォォォォン!!


もう少しで野営地って所で大きな獣のものと思われる雄叫びが響く。

まずい、遅かった。

「急ぎましょう」


ギルマスと野営地にたどり着くとそこは既に戦場となっていた。

ベテランの冒険者二人が、連携し翻弄してることで人的被害はあまり出ていないようだが。

「ギルマスは避難の指示と立て直しを。僕は加勢にいきます!」

「わかった! 気をつけろよ」


頷き、ストレージから姉ちゃんが強化してくれた魔剣を取り出し、走る。

「加勢します!」

「助かる、決定打がなくてな」

盾を持ち、敵を引きつける者と、素早い動きで翻弄する者。

確かに決定打にはならない。 だけど、見事な連携。

ここに自分が上手く入れば決定打を与えることはできるけど…。


しかしここで一つ問題がある。ここで倒してしまうと行方不明の冒険者を見つけるのが困難になる。


どうしたものか…。


「君はアイツにトドメをさせるな?」

盾を構えた冒険者に聞かれる。

「はい、でもそれだと行方不明者が…」


「そっちは任せてくれ。俺はその道のプロだ」

飛び回り翻弄してた冒険者がそう言う。

「わかりました。そういう事なら」

この人達はベテランなのはひと目でわかってた。

だから信じていい。それなら…。




別視点のお話が二、三話続きます。

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