表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

698/772

魔力を使うという事


 

帰りたい麻帆と、帰りたくない奈々の攻防が数日程続き、その間にグリシア王国へは学園に行くのが遅れる旨も伝えに行った。


聖さんについてもティーから報告をもらってたのだけど、此方もちょっと問題が…。

その為、私は今日一人でアクシリアス王国へお邪魔している。


初めは聖さん姉弟には外してもらい、ノアにユリネさん、王妃様からも報告を受ける。

「まずは聖弥君のほうね。言いにくいのだけど、魔力の少なさがネックになってるわ」

「やっぱりそうなりますか…」

本人はいずれユウキの様な冒険者になりたいそうで、ならばまずは魔法や魔力に慣れた方がいいだろうと城内で細々とした魔力の必要なお手伝いをした。

つまり、魔道具の明かりをつけたり、ランプに火を灯したり…。

たったそれだけの事でも夕方には息切れを起こしてしまうくらいには魔力が乏しく、夜には自力でシャワーの魔道具を扱えない…なんていう状態だと。


「本人も落ち込んでいるから心配ね。年の近い男の子達と仲良くはなってるのだけど、仲良くなればなる程、力の違いで…ね」

「そうでしたか…」

ある程度予測はしていたとはいえ、幼い身には辛かったよね。まして病み上がりみたいなものだからなぁ。


「聖ちゃんについてはノアちゃんとユリネから報告してもらえるかしら?」

二人は頷くと順番にここ数日の聖さんについて話してくれた。

「マスター、彼女はメイドの仕事に関して、一つを除いて問題なくこなしていました」

「一つを除いて?」

「はい。掃除等は問題ないのですが…」

「料理に関してだけは壊滅的でした」

ある程度はティーから聞いてたけどそこまでか。 (そこはほら…オブラートに包んでたから)

気を使ってくれてたのね…。 (えーっとまぁ…)


根本的な料理の基礎を何も知らないのもあるけど、教えた通りに作業してるはずなのに何故かおかしな味になるんだとか…。 それは仕方ないかもしれないね。

「ものすごく不味いという訳ではないのですが…えーっと…」

「ノア、報告なんだから正直に話してもらわないと」

「わかっているのですが、なんとも説明しにくくてですね」

「ここは食べていただいた方がわかりやすいかもしれません。アスカ様にお出しするのは気が引けるのですが…」

「わかりやすいのなら頂くよ」

「畏まりました…」

ユリネさんはそう言うとクッキーを出してくれて、ノアは紅茶を淹れてくれた。


「見た目は普通に美味しそうなんだけど…」

「マスター、私は見た目がイコール味に直結しないと学びました」

そこまでか…。

本当に見た目は悪くない。手作りしたクッキーって感じで可愛らしいのに。 (……)

一つ摘み、口へ。

ガチンッ! とおよそクッキーからしてはいけない音が口の中に響く。

え?思わず口から離したクッキーを確認。金属みたいな音したな? (それ一番ハズレ)

あ、これが一番なんだ。少し安心して、齧れなかったクッキーをお皿へ戻すわけにもいかずストレージへ仕舞う。


新しく手に取り、口に入れたクッキーはサクッと解けてちゃんとクッキーしてる…のだけど…。

「なんの味もしない…?」

「ええ、何故か味が消えるんです」

「こちらは塩辛く、そちらは甘さが限界を超えています」

ユリネさんが指差すクッキーもそれぞれ口に入れたのだけど、片方は塩味のポテトチップスみたいな味だし、もう一つは砂糖をまんま口に入れたような甘さ。

慌てて紅茶で流し込み、鑑定…。


「あー…やっぱり」

「え、アスカちゃん原因わかったの!?」

「ええ。此方も原因は魔力ですね」

「どういうこと?」

「以前、魔法はイメージだとお伝えしたのは覚えておられますよね?」

「ええ。あれから研究もしてるから…」

あ、そうなんだ。さすが元賢者様。


「料理に関してもそれは例外ではないんです」

「ちょっと意味がわかんないわ…詳しく聞かせてくれる?」

王妃様は勿論、ユリネさんも首を傾げてる。ノアは流石にここまで言えば理解してるか。あの子も元々魔力が少なくて苦労した子だから。


「料理だけではなく掃除とかでもそうなんですが…。わかりやすく説明するなら、そうですね…。ユリネさん、窓を拭く時って何を考えてますか?」

「勿論、キレイにしなくては、と」

「うん、正にそれなの。そういうイメージがまんま結果につながる様、無意識に微量ながら魔力を使ってるんだよ」

「初耳よ!?なによそれ…」

「掃除の様にイメージしやすい物なら魔力に慣れない、または不安定でも失敗はしにくいんです。ですが、料理の様に工程が多く、複雑になればなる程、経験と魔力量や安定性が結果に繋がる…。つまり、このクッキーは不安定な魔力の塊なんです」

「危険性は…?」

「流石にクッキーはクッキーですから、暴走等の危険はないです」

「よかったわ…」


「ではアスカ様のお料理が美味しいのは…」

「単純に料理スキルが高いのもあるし、魔力が高く安定して扱う事に慣れているからだとおもう。ユリネさんの紅茶が美味しいのも、経験と美味しく淹れようと考えてくれてるからだよ」

「まさかユリネがアスカちゃんと付き合うようになってからお茶がさらに美味しくなったのは気のせいじゃなかったの!?」

「…多分魔力が増えたのもあるとは思いますが…」

「マスターに頂いた称号の影響が強いと思います」

私があげたわけでは…。 (魔王の加護と婚約者なのに?)

うっ…。関与はしててもあげた訳ではないし。


「称号の影響が無いとはいいません。ですが! 積み重ねてきた経験が基礎ではありますから。そこへ更に魔法のイメージで増幅されてると思って頂けると」

「じゃあこのクッキーは…」

「料理の基礎ができてない所へ、不安定で微量な魔力、言葉で教えられただけのふわっとしたイメージ、それらが合わさった結果です」

実際、このクッキーは… (呪物)

そこまでは言わない! でも表現としては近いものが…。不安定な魔力の塊だし。

微量な魔力のおかげで食べた所で不都合はないけど。 (ママはいつ気がついたの?)

元々わかってはいたのよ。魔力を使ってるってのはね。

ただ、地球で買って食べた時のものと比べて違いを実感した。

ほら、初心者の私がメイドをしてても掃除とか問題なくこなしてたでしょ?あれもいい例 (あー! そんなカラクリが)


逆に考えれば魔力による増幅もなく、おいしい料理を作れる地球の人は本当に積み重ねてきた経験や、いろいろな苦労の結果なんだから凄い。 (ママだって経験や苦労もしてるもん!)

そうなんだけどね。増幅効果は高いから。 (じゃあ例えば毒を混ぜたら…)

無味無臭、効果の出るタイミングまで指定できるものを作れるよ。 (こわっ…)

やんないし、そもそも毒がないと無理。それに少しでも毒を入れてると意識しちゃうと結果に出るから、最終的には見つけられると思うよ。 (じゃあ不安定な魔力を込めたら…?)

それにしたって魔石でもないクッキーに込められるのなんて微々たる物だから、美味しくないものになるくらいだね。ある意味このクッキーが答え。 (ほえー)


王妃様は“また研究する範囲が増えたわ…”と頭を抱えていた。 

何かすみません…。


結局、聖さん姉弟の魔力問題を根本から解決するには一つしか方法がないし、それをするかどうかは要検討。

あとは魔道具で補佐させるくらいか…。

料理に関しては経験を積んでもらうしか方法はない。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ