新エリア
朝イチでユウキ達を迎えに行き、ドラゴライナ王国にできた新エリアへ。
学校エリアと隣り合わせになるけど、もう規模がすごい。
大きな観客席はもちろん、森エリア、市街地エリア、水辺エリアに全天候型の小型室内エリアが幾つか。
国全体を魔法防壁が覆っているとはいえ、船につけたのとは違い、雨風までは防がないから。
これは、畑や牧場などの天候が必要な物もあるから当然。念の為、嵐とかになれば防げるようにはしてあるけど、こちらの天候は安定しているそうだから使うことはないかもしれない。
流石にうちの子たちもここまでの規模にはびっくりしてるね。 (もうテーマパーク!)
近いものがあるね。うちの屋台の遊具も、お祭りが終わったらこちらに移動させたいって話だし。
アキナさん本人もステッキでの試合をするから、プレイヤー目線でもしっかりと作られてるのは流石としか言いようがない。
うちの子達が奥様と対戦してる間に、カメプロやスクリーン、簡易無線の魔道具、国を守る魔法防壁の魔道具の調整など私はやることがいっぱいだった…。
ごめんねシエル。手伝えないや。マネージャー頑張って。
………
……
…
「こっちはこんなものかな?」
「そうですね。後は遊んでいる子達からの感想待ちでしょうか」
「まだかかりそうだし、学校エリアの安全面だけ先に見てもらえる?」
「大切ですね」
新しく拡張したエリアだから当然国の一番外側になる。つまり、壁のすぐ外は危険地帯な訳で。
こちら側は港もあるし、ほぼ安全が確保されている方角ではあるらしいけど、子どもたちに万が一があってはいけないから。
壁そのものも今までより強固で、二重になっているそう。
前回の氾濫でも壁は壊れなかったから余程大丈夫だろうけど、一応許可をもらって強化しておいた。
職人さん達の作った壁ではあるけど、所々弱い部分があったから…。
これは多分、単純に工事した人の魔力で差が出てるんだとは思う。魔力を流して強化してるんだから当然と言えば当然。
上は魔法防壁で守られてるから心配はないし…。
「これで安全面に関しては問題ないと思います」
「ありがとう、助かったよー。あともう一つ見てもらいたい物があるの」
アキナさんに案内されたのは学校の入り口になるであろう場所。校門といえばいいのかな。
そこにはドラゴライナ王国で見慣れた転移魔道具。
「住宅街から直接ここへ子供たちを来れるようにしてあげたいんだけど、距離があってね。これでは一回では無理そうなの」
「確か今までも街の移動には、いくつか転移魔道具を経由して…とかでしたよね?」
「うん。住宅街が広いから、こちら寄りのエリアならなんとか届くのだけど、離れてるとどうしてもね」
「距離を届くように改良してしまうの自体は簡単ですが、学校帰りに友達と寄り道、なんてのも交流としては有りだと思うのですが…」
「そうなの!?」
私の知ってる知識、魔法学園にも学園街っていうのがあったってのを伝える。
「なるほどね…。ただ通うのが基本は幼い子になるから、あまり寄り道して遅くなるのも考えものかなー」
「それですと確かに…。親御さんも心配ですもんね」
「うん。一番頭を悩ませてるのもそこなんだよー」
ふむー…。 あ、そうだ!
「アキナさん、この転移の魔道具って普段はギルドカードなり、身分証を使って利用しますよね?」
「そうだね」
「子供たちもですか?」
「うん。普段は親と一緒に移動してるから、子供たちには学校専用の身分証を作るつもり」
「でしたら、そちらにGPSみたいなものをつけましょう」
フィアに付けた物と同じ物を量産するだけだから簡単だし。
「じーぴーえす? えっと、それなに?」
ちゃんと説明しなきゃ伝わんないか…。迂闊だった。
アキナさんに、こちらの常識で伝わるように噛み砕いて説明。
「じゃあ、それがあれば子どもたちの居場所が親にはわかるわけだね?」
「ええ。もしもの為に防犯ブザー等もつけておきます」
「それもわかんない…」
試作品を作ってみるか。
とりあえずキーホルダー型にして、ギルドカードの様な個人情報の書き込み、GPS、引っ張るとブザのなる紐…。
親に渡すのはネックレスなり指輪なり好きなアクセサリーにするとして…、とりあえず今は指輪に。
簡単にリンクだけさせて、使い方の説明をして実際に体感してもらった。
「ほんとだ! 感覚的に場所がわかる! え、すご…」
「防犯ブザーっていうのは、緊急時に周りへ助けを求めるためのものです。 大きな音がなりますけどいいですか?」
「わかった。いいよー」
紐を引くと、ビーービーー! とわかりやすい音に今回は設定。
「びっくりした!! そっか、子供が危険なりを感じたらそれを鳴らせば…」
「ええ。街の治安を守る方々にこの音を周知させておけば、すぐに異変に気がつけるかと」
「うちの国、治安はいいと思うけど、もしもはあるからね」
「はい…。迷ったとか、そういう困ったときでもいいですし。この音が聞こえたら子供が困ってる、と伝わればいい訳ですから」
「なるほどね。いいねそれ。親も安心できるし! ただ作れるのはアスカちゃんだけになっちゃうけど…」
「これくらいさせてください。子供たちのためですし」
「ありがとう。本当に助かるよ」
形に関しては改良の余地はあると伝えて、子供が失くしにくいものってなんだろう?って一緒に悩んだ末、多分何にしても同じだろうって結論に。
「幾つかデザイン違いで用意して、選ばせてあげるのもありかもしれません」
「そだね。そっちは任せてもいい?」
「はい。うちの子達にも相談してみます」
転移の魔道具は、住宅エリアと学校が直通になるようにカスタムしておいた。
幼い子が多いならあまり寄り道してもね…。多分私も心配で仕方なくなると思うし。 (にゅふふ)
その代わり、ステッキエリアに出来るちょっとした繁華街には学校エリアから行けるらしいから、そこで我慢してもらおう。 (そこなら寄り道していい?)
少しだけよ? (はーい!)
アキナさんもそっちに子供向けに何かを追加出来ないか考えてみるって。 (楽しみ!)
うちの子たちはステッキの会場、全エリアを制覇して遊んできたと報告してくれた。
私も設置したカメプロの映像を見てみたけど、かなり楽しんでたね。
すべて固定カメラにはなるけどよく見えるし。
奈々と麻帆は途中でダウン。シエルと休んでたそう。
魔力が増えたとはいえ、うちの子達と比べちゃうとね。 (まだまだよゆー)
報告もして欲しいから今日は諦めてね。 (あーい!)
アキナさんと一緒に、うちの子達の感想と、対戦した奥様方からの意見もまとめる。
結論を言えば、細かな手直し程度でほぼ問題はなさそう。 (すっごい楽しかった!)
私も気になってきた…。 (また勝負!)
それもいいね。
みんなからの意見を纏めた資料を持って、アキナさんは奥様達と撤収。
私達も、街で遅いお昼ご飯を食べてお屋敷に帰ってきた。
相当楽しかったのか、ずっと盛り上がってる。てっきり全勝したのかと思ったら、ルールによっては負けたそう。
「なにで負けたの?」
「それぞれのメンバーから一人ずつ人質って扱いで入れ替えたのよ…。その一人を救助したら勝ちってのなんだけど…」
「くじで決めたんだけどさ、僕が人質になっちゃって」
「…ユウキと離れたくない」
ユウキを人質に取られたスピネルが暴走した? (あたり!)
落ち込むスピネルを心配したみんなも何時もの動きができなかったらしく、そのスキをつかれたらしい。運が悪かったね…。 (そういう時もあるの)
そう思えるのなら偉いよ。スピネルを責めたりしないようにね。 (ないない!)
ある意味うちの子たちのチームワークと優しさがネックになって負けたのなら、それで良かったと思う。
そう伝えたらみんな嬉しそうにしてた。




