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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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人は変わる



ピナさんに案内されて、アキナさんの部屋へ…。いや、ちょっと待って。

「ピナさん、先に夕波陛下の部屋に案内してもらえる?」

「もちろん構いませんが…」

ご本人がどう思っているかはっきり確認しておきたい。

現在の夕波王国の最高権力者は陛下であり、何より当事者なんだし。




「陛下、アスカ様がお見えです」

「なに!? ち、ちょっと待ってほしいのじゃ!!」

ピナさんがノックしてそう伝えたら、慌てた様子の陛下の声と、室内からバタバタとすごい音。

「ピナさん、本当に大丈夫だったの?」

「ええ。お嬢様が直々に部屋を尋ねられたらこうなるのは当然かと…」

それってやっぱりよくなかったんじゃ…。


バタバタと騒がしかったのも止み、静まり返る部屋。

「お待たせしたのじゃ。どうぞ…」

「失礼いたします」

ピナさんが扉を開けると、ものすごくいい笑顔で出迎えられた。

「よく来てくれたのじゃ! ささっ…座って」

夕波陛下ってこんな感じだったかしらん…。


陛下の側には白さんがいて、ペコリと一礼された。

やっぱり連れてきてるか。見た感じ元気そうだね。 (こっちもね大きくなった)

言われたら前より幼さが抜けたかも?


「何か用事でもあったじゃろうか?いや、もちろん何もなくても来てもらえると嬉しいんじゃが!」

あたふたとしてて、前のような傲慢さというか、そういうのもなく可愛らしいとさえ感じるほど。

「ご挨拶と、少しお尋ねしたい事がありまして…」

「妾に答えられることなら何でも聞いてもらって大丈夫じゃ!」

じゃあ遠慮なく…。


今、シラユリ様がアキナさんの部屋に直談判している状況、それに関して夕波陛下はどう思っているのか、率直にぶつけてみた。

「母上はまた勝手な事を…。ご迷惑おかけして申し訳ないのじゃ」

「それに関しては私ではなく、アキナさんに。 陛下ご自身はどう思われているのですか?」

「ど、どうとは!? え、えっとじゃな…その…。と、とりあえず母上を止めに行くのじゃ!」

慌てた様子の夕波陛下は、白さんに指示を出す。

多分アキナさんへつなぎをつけたんだろう。


待っている間も陛下は挙動不審で、まともに会話もできず。

白さんはすぐに戻ってきたけど、随分長く感じた。

「アキナからも早く部屋にこいと言われたそうじゃから、ついてきてもらえるか?」

「ええ…」

気まずいまま、アキナさんの部屋へピナさんが案内してくれた。


「陛下、夕波陛下とお嬢様をお連れしました」

「遅いよー! 入って!」

部屋の中ではシラユリ様が平服状態で、アキナさんがものすごく疲れた表情で待ってた。

「シラハ! どうにかしなさい! 仕事ができないの!」

「申し訳ないのじゃ…。 母上、前にも言ったと思うんじゃが…」

「何も進展がないんだもの! シラハは頑張ってるのに!」

シラユリ様はちょっと悲痛な声。いったいどうなってるの…。


「アスカちゃん、ちょっと…」

アキナさんに呼ばれて、少し離れた場所へ。

「ごめんね、はっきり断ってもいいんだけと、話だけでも聞いてあげてもらえる?」

「はい。そのつもりでお邪魔しましたから」

「助かるよー。でも、無理はしなくていいからね」

アキナさんはそう言ってくれるけど、友好国だし、立場上そうも言ってられないんだろう。


シラユリ様はお願いしても体勢を変えないまま…。仕方無く私も床に正座する形でお話を聞くことにした。夕波陛下には止められたけどね。

いくらなんでも目上の人にこんな姿勢をさせたまま、自分だけソファに座ってお話はしにくい…。


「アスカちゃん、お願いよ…。シラハの気持ちを少しでもいいから汲んであげて?」

「先程直接お尋ねしたのですが、答えていただけなくて…どうしたら良いのかわからず…」

「シラハ!? なんでそんなチャンスを無駄にしてしまうの!?だから私がこうやって!」

「母上、妾が話しにくくなったのはこれが原因なんじゃけど…」

「えっ!?」

諦めたように夕波陛下はぽつりぽつりと話してくれた。


「以前、アスカ殿に教えられたじゃろ? 白たち忍びを始め、人を使うという立場の者の立ち振る舞いや、統治者としての務めなど」

「はい、確かにお話させていただきました」

「それを妾なりに実践できるよう心がけてきたんじゃ。変わる事もせず以前のように妾の想いを一方的にぶつけても意味はないじゃろ?」

「だから行動で…ということですか?」

「うむ。何より妾自身、隣に並び立てるような統治者にならねば想いを伝えるのもおこがましいと思ったのじゃ」

「私もそんな立派なものではないです。間違いも失敗もしましたし…」

「じゃが、あの時話してくれたのは基本のようなものじゃろ?」

「そう…ですね」

確かにあれは上に立つものとして最低限の心構えみたいなものだったけど…。

それをちゃんと自分なりに考えて、その後の行動に落とし込んでくれてたのが何より嬉しかった。


「今は本当に頑張ってるのよ、この子。でもそれを見てもらうチャンスもないんじゃあまりにも可哀想だわ…」

「母上…」

「んー、じゃあさ、こうしたら?」

話を聞いていたアキナさんは第三者としての提案をしてくれた。


内容としては、私が時間のある時に時々でいいから夕波陛下を尋ねる。

その上で夕波陛下を見極めればいいと。

「本当に変わったなーと、アスカちゃんが側にいてもいいって思えるようなら考えてあげたら?」

「お願いよー。せめて変わったこの子を見てあげて」

「お邪魔にならないのでしたら私は問題ありませんが…。夕波陛下はよろしいのですか?」

「そんな畏まらず、遊びに来る感じで来てもらえたほうが嬉しいのじゃ。それで妾を見極めてもらえれば…」

見極めるとか、そんな上から目線で見たくはないのだけど…。 (遊びに行くとおもったら?)

そうだね…。忙しくない時をおしえてくれる? (任されたー)

「では、夕波陛下のお顔を見に、遊びに行かせていただきますね」

「来てくれるだけで嬉しいのじゃ…ありがとう」

夕波陛下は嬉しそうにそう言ってくれた。








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