進展
お城では、聖さんと聖弥くんにも部屋を一つ自由に使ってもらった。
なんせ元々側室の方が使っていた別棟だから、部屋数や設備に不自由はないし、ユリネさん達メイドさんも世話を焼いてくれる。
私の部屋には未亜達が集まってるのはいつもの事。部屋いっぱいあるのに…。
でも…多分、一人にされたらそれはそれで寂しいんだろうなぁと、この状況に慣れきってしまった自分がいるのにもびっくりする。
アキナさんに送られて戻ってきた両親は王妃様に言われて、本城の客間に案内されていった。
これは、二人も来賓扱いになるかららしい。 (ママも来賓ではあるけどね)
まぁね、ドラゴライナ王国の王女としてって話だし。ユウキもドラゴライナ王国の王位継承権を持つ一人として参加するから戻ってきたしなぁ。 (ママが送った意味…)
どちらにしてもアルフィーのお披露目の時には戻るって話だったし。大して変わらないでしょ。
今回、お披露目と同時に各国との友好宣言もされるから、かなり大きな規模のイベントになる。
一番最初にアクシリアス王国で発表になるのは、中心地になるから。
当然、夕波王国からも来賓はあるし、そちらはアキナさんが送迎する。
後々、各国でも正式な発表があるのは当然だけど、アクシリアス王国で行われるものだけは特別。
というのも、カメプロで録画して、全ての国で放映される予定になってるから。
その為、私は各国に一つ、カメプロを提供するから作り足し、王族のみが扱えるよう、手渡す時に波長も刻む。
バサルア共和国だけは例外で、私の知り合いでもあるファリスに一任。
ここは元首国が定期的にかわるからややこしい。
カメプロに関しても幾つかカスタム。
プロジェクター側にスクリーン代わりになる真っ白な魔法防壁を展開する魔道具を追加。
魔法防壁は知識と魔力があれば誰でも扱えなくはないのだけど、長時間維持するとなると普通の人には難しいから仕方がない。
翌朝、グリシア王国へ来賓のお迎えに行く私に、みんながついてくると言う。
「構わないけど、来賓の方をこちらへ送る時は別にするからね?」
みんなも理由については言わなくても理解してくれているから、全員でグリシア王国へ転移。
ーーーー
ーー
お屋敷で待ってるかな?っていう期待は脆くも崩れさり、王族で唯一いたのはストレリチア様。
「アスカ様、お手数おかけします」
「ううん、構わないのだけど…誰が行かれるの?」
「兄上以外全員です」
「え?」
「ですから、父上、母上、弟のライアン、それと私です」
「そ、そうですか」
まさかの大集合。でも、考えたらわかるか。一大イベントだし。
長男で次期国王でもあるライオネスト様は国を守るため待機、なのかな。
国王陛下が国を空けるって相当だよね。この間の海戦以来か。 (あの時はドラツーに乗ってただけだし)
これはどこの国も同じような状況になるんだろうね。 (大丈夫かな)
平和だからこそだろうね。前みたいに公爵が居るような状況では不可能だったはず。 (乗っ取られる!)
「えっとですね…申し訳ないのですが、揃って国外に出て他国に長期間滞在するのが初めてなので、準備に手間取っておりまして…」
「待つのは大丈夫ですよ。みんなも来てますし…」
「でしたら、ぜひ学園に顔を出してあげてくださいませ」
「そうね…みんなはどうしたい?」
って聞くまでもなかったか。
サラセニアとモルチアナはまだ学園にいるらしく、そちらで会ってほしいと。
魔法学園と聞いて初めて行く子は大喜びだけど、大丈夫か?
馬車まで出してくれたから、移動中に学園の話をしておく。
学園祭の時の様子も聞きたがったからそれも。
奈々の興奮っぷりはすごかった…。前はお屋敷までしか来なかったしな。
学園では当然みんなに捕まり、お互い近況報告。
召喚科の先生は相変わらず師匠扱いしてくるし、魔道具科でも今作ってるものを見てほしいと言われて見てみたり…。
一つ口を出したのは、事故になりそうな術式があったから改善点を指摘しておいた。流石に危なかったから…。 (どーん!)
最悪、なりかねないね。魔法の暴走と似たようなものだし。
なんか…ほんと、前より楽しそうなんだよなぁ学園。 (またくる?)
それもありよね。
みんなも旧友に再会できて喜んでたし。要相談かな。
「魔法の学園…。素敵ですわ。ファンタジーですわー!」
聖さんどうした? (なんか色々興奮が限界突破したみたい)
大丈夫か…。
学園の生徒にもグイグイと絡んでいくものだから、すぐに仲良くなってる。
社交性ヤバくない?私が不器用ってのはおいといても、びっくりするよ。
弟の聖弥くんでさえ若干引いてるような? (かも)
ユウキとスピネルに懐いてるからいいものの、姉である聖さんがほったらかしにしてるからな。
よほど刺激的なんだろうか、異世界。 (普通はそう)
私には慣れたものだからもうわかんないね…。
暫く学園で過ごし、その間に私もサラセニアとモルチアナに会うことができた。
二人ともしっかりと目標を持って勉強していると教えてくれた。でも、その目標が何なのかは教えてもらえず…。
今は内緒らしい。無理に聞き出すのも違うから、いつか話してくれるのを待つしかない。
気にはなるけど…。
二人と食堂でそんな話をしていたら、ストレリチア様が。
「こちらでしたか。大変お待たせしてすみません! 今から城へお越しくださいませ」
ユウキに目配せし、みんなの事を頼む。 (ティーもいるの!)
お願いね。アクシリアス王国へ送り届けたら直ぐに戻るから。 (あいあい)
また馬車に乗り、グリシア王国王城へ。
「兄上は遠ざけておきましたからご安心を! アスカ様にちょっかいはかけさせません」
ストレリチア様にそう言われて、以前こちらであった事を思い出す。
王子様に言い寄られたんだった…。 (なんで忘れるの…)
いろいろな事が起こり過ぎなのよ。なのに些細なことまで気を使ってられないの! (王子かわいそ…)
それは…すみません。身近に大切な人が沢山いるから手一杯なのよ。 (ほんとそれ)
ストレリチア様に案内されて、以前ライアン様の治療もした部屋へ。
「だからそんなに荷物は必要ないって言ってるでしょう?」
部屋に入るなり、王妃様の呆れた声。
「しかしだな?無いよりはよくないか?」
「運んでくれるアスカちゃんの負担も考えてくださいな」
「う、うむ…」
夫婦喧嘩!? (王様があれもこれもって荷物を山のように…)
え、まさかあの山と積まれた鞄全部!? (そう)
嘘でしょう…。もう引っ越しじゃない。 (だから王妃様が止めてる)
理解したよ…。理解はしたけど、口を出せないからなんともし難い。
「アスカちゃん、お待たせしてごめんなさいね。見てよこれ…ありえないわ! アスカちゃんもなんとか言ってやって!」
無茶を言いなさる。陛下に向かって…。
「多すぎるだろうか?」
「…えっと…アクシリアス王国でしっかりとおもてなしして頂けるはずですので、必要以上に大荷物ですと、かえって…」
「ほらみなさい! うちのもてなしでは不満なのか?と思わせてしまうのよ!」
「決してそのような意図ではないのだが…。なにせ、暫く国外に滞在するなど幼い頃以来なのでな」
楽しみなのもあってやっちゃった感じかー。 (可愛らしい)
陛下になんていい方。でもちょっと同感。
「アスカ様も呆れてみえます! 最低限の荷物にしてください!」
「私は何も…」
巻き込まないでー。
「あ、アスカ様、いらしてたんですね。お待たせしてしまいましたか?」
部屋に新たに顔を出したのは…ライアン様!? (うむ…)
「お元気そうですね、ライアン様お久しぶりです」
大きくなっちゃって…。ユウキと変わらないくらいになってない? (近いかも)
こちらの世界だと魔力のめぐりが悪いってのはここまで影響でるのね。 (シルフィー様も)
変わってなくない? (色々大きくなったって)
…ごめん。聞かなかったことにするね? (ふふっ)




