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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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聖女とクリスマス 2



「前回のアスカ様による奇跡の話は国内だけでなく、諸外国へまで広がり…。陛下による聖なる夜という言葉に一目でも大聖女様にお会いしたいと、国内外から人が集まっています」

「…はい!?」

なんの冗談よ…。 (うわぁ…どおりで)


「陛下は国の復興を助けるお祭りとして、聖なる夜というお話を広められたのですが…」

「それが聖女へと話がつながったのですか?」

「はい。知らぬ間に”聖なる夜には大聖女様が降臨される“そう囁かれるようになり、いつの間にかそれがこのお祭りの本当の目的とまで言われるようになってしまって…」

私がこんな姿にされたのもそのせいなのね…。


「教会としても国内どころか、国外へ迄大きくなった話を今更否定することもできず…本当に申し訳ありません!」

「イアリスさんは何も悪くないですから謝らないでください。元々私にも責任はありますし…。何をしたらいいかだけ教えて下さい」

「以前のように集まった方々へ祝福を…。それだけで充分です」

「わかりました。 でも…折角の聖なる夜です。少し特別にしましょう」

「宜しいのですか!?ありがとうございます…本当に…」

お世話になったイアリスさんに、こんな申し訳なさそうな顔をさせたくないよ…。

と言うか、師匠もメリアさんも説明してくれればいいのに! (ママが怒って嫌がったら困るからとか?)

…否定できないわ。もうここまで来た以上腹を括るけどね。

やれるだけの事はする。聖女の称号を持っている以上、無様は晒せない。

それに、下手したらメリアさんやこの国の評判にも関わる。


夜まであまり時間はないから、イアリスさんや教会の方々と色々と話をまとめた。


………

……


「では、それでお願い致します」

「…これはまた特別な日になりますな! さすが真の聖女様です」

「私は偽物だと?」

「そ、そんなつもりは…」

確かに本当の聖女様であるイアリスさんの前でそのセリフは失礼だよなぁ…。 (じいちゃん失言)


「冗談です。ではアスカ様、参りましょうか」

「ええ」 (楽しみー!!)

待たせてごめんね、 (大丈夫! ちょーVIP待遇だから)

そっち、どうなってんのよ…。 (メリアさん達王族と特別席で美味しいものとか貰ってのんびり)

私もそっちが良かった。 (主役なのに)

モブでいいよ私は。 (ありえへん!)


以前のように教会の偉いさんに先導されて、本堂へ。

相変わらず凄い人だけど、今回はひしめいているというよりは、整然と並んでる。

服装からして貴族とかそういう人達で教会内は占められているな。


ここでは私は何もしない。

大司教様であるおじいさんが私の紹介や、ちょっとしたお話をしするだけ。

私は近くに立っているだけでいい。 (まだー?)

ティーたちは外なの? (教会が見える特等席!)

なるほどね…。


大司教様のお話も終わり、いよいよ外へ。

エスコートされて外に出ると、人、人、人…。

以前の比ではない。見渡す限り人で埋め尽くされていた。

ちょうど正面の建物がティー達のいる場所か…。

前はなかったから新設したんだろうな。シャーラ達暗部の魔力もあるから間違いない。 (合ってるのー)



打ち合わせ通り、イアリスさんと並んで皆の前に立つ。

「では、お願い致します。アスカ様」

「…はい」

いきなり打ち合わせから外れたことしないで。びっくりするから。 (いちゃついてるからみんなイライラしてるの…)

手を繋がれただけでしょ!?


二人で見上げるのは空。

コソッと呼び出したのはチョコ達召喚獣。

かなりの高高度だから下からはほぼ見えないだろう。

お願いするのは降雪のサポート。ノアとキャンディーは臨機応変に対応してくれるだろうから、チョコに乗ってもらってる。


イアリスさんと空に手をかざし…

「「聖なる夜に祝福を…」」

セリフと共に二人の体が光る。 (おーー! ママかっけー!)

氷、水、風…様々な魔法を織り交ぜて上空へ。

上でそれを増幅、管理して均等に雪として降らせてくれるのはラムネとクッキー。


やがて、はらはらと舞い降りてくる雪。当然、その雪一粒一粒に祝福がかかってて、触れた人全てに効果が出る。


「アスカ様、これが雪なのですか…?」

「はい。こちらは暖かいので長くは残らないと思いますが…。寒い地方なら冬にこの雪が降り積もり、一面真っ白になります」

「……きれいです」

見上げるイアリスさんの頬に落ちる雪。

「冷たいです…。でもなんだか気持ちいいですね」

「かもしれませんね」

街の人たちの様子は…と思い、見渡したら全員が空を見上げ静まり返っていた。


正面の建物のバルコニーにはメリアさんや師匠、当然うちの子達も外に出てきて見上げてる。

うちの子達には、毎年見せてあげてる筈だけど、やっぱり雪はきれいだよね。 (わぁ…………)


「あれ…? 手が、手が動く!!」

「俺は足が!」

そんな声があちこちから聞こえてきて、やがて伝播するように大きな大きな喧騒へ。

祝福を織り交ぜてあるのだから当然だけど、喜ぶ人たちの声に嬉しくなる。

魔神騒動から二年たったとはいえ、怪我の後遺症とかで苦しんでいた人もいただろうから…。



「アスカ様! 人々が制御できなくなる前に中へ!」

イアリスさんの鋭い声に我に返ると、皆がこちらへ集まるように動き出している。

念の為、私達の立っていたエリアに魔法防壁を張って遮断。イアリスさんや教会の人に何かあってはいけないし。

私も一緒に教会内へ避難する。

教会関係者も全員無事に中へ避難できたようでなにより。


「この先はアリッサ様達に任せましょう」

「師匠達ですか?」

「ええ。警備を担当しているのは魔剣士団ですし、そもそもの原因は陛下ですからね!」

メリアさんに悪気はないと思うのだけど…。

「さぁこちらへ…」

イアリスさんに案内されて、教会内でも一番奥にあたる静かな部屋。


「ここなら安全ですから、お寛ぎください」

促されて真っ白でふわふわなソファーに座る。

「ここは…?」

「私の私室です。ふふっ…」 (ママ逃げてーー!)

ええっ!?


困惑している間にソファーの隣に座り、もたれかかってくるイアリスさん。

「やっと二人きりになれました。ふふっ…ふふふっ…」

「普段からお忙しいですもんね。 今日の予定はこれで終わりですよね?」

「終わりではないです。このまま私と…」

ドカッとすごい音で開かれた扉。

「させるか!!」

「師匠…!?」

「私達もいるわよ!」

うちの子達も大集合。そんなに慌ててどうしたのよ? (ママが危なかったの!)

別に危険はなかったけど? (はぁぁぁぁ〜)

大きなため息やめてくれる!? (もう少し警戒心をね?)

大丈夫だと思うんだけどなぁ。でも気をつけるようにするよ…。


イアリスさんも諦めたのか、みんなでの聖なる夜。

「アルフィー、はじめての異世界はどうだった?」

「おねーさまのすごいすがたがみれたのでだいまんぞくです!」

大きな魔法を見れたからか嬉しそうにしてる。


「聖さんはどうだった?異世界のクリスマスは」

「刺激的すぎて言葉が出ませんでしたわ…。いっそこちらに住みたくなります」

「お姉ちゃんだけズルい…」

「聖弥を置いて行ったりしませんわ。それに少しそう思っただけです」

「僕はこっちにいたい!」

奈々、麻帆に続いて異世界移住希望者が…。とはいえ、本物のお嬢様達を移住させるなんて私の一存では決められないし。



色々とあったけど、今年のクリスマスも異世界でみんなと過ごし、幸せな聖なる夜になった。

「ちょっとますたぁ〜…私達頑張ってたのよ〜?」

「外、確認してくださいマスター!」

地上に降りてきた召喚獣の子たちに言われてみんなでもう一度外へ。

魔力ドームで保護もしてあるし、メリアさんには師匠がついてるから大丈夫。



「…これが雪景色、ですか」

「ええ。多分、明日一日くらいは保つかと思います」

召喚獣の子たちにもお礼を伝えハグ。キレイな景色をありがとう。そう伝えておく。

「まさか聖なる夜の奇跡が本当になるとは…」

「メリア、これで皇帝としての面目が保たれたな?」

「はい。ありがとうございます、アスカ様」

「聖女の役目を果たしただけですから」



その後、こちらの世界でもクリスマスの聖なる夜というのが浸透し、皇族と教会が中心になって盛り上がりを見せていくのはまた別のお話。

メリアさんは他国からの問い合わせに忙殺された、ってのも別のお話。


「アスカぁー!! やり過ぎるなとあれ程行っただろうが!!」

「アリッサ。気持ちはわかりますが、我が国はどこよりも優位な立場なのです。アスカ様に文句を言うのは筋違いです!」

「くそっ…。毎回、護衛のプランを考えねばならんこっちの身にもなれ! 手伝いに来やがれアスカーーー!」


…………

……


「くしゅっ…」

「お姉ちゃん、大丈夫? くしゃみとか珍しいね」

「うん、風邪引いたりしないはずなんだけどなぁ」

「……噂でもくしゃみって本当に出るんだ」

「ティー?それどういう意味?」

「多分、ママは知らないほうが幸せなのー」

「ちょっとティー!!」

何なのよもう…。












今週はクリスマスのお話、三話のみになります。

みなさまも素敵なクリスマスをお過ごしください。

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