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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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実戦形式での訓練



「マスター、私もお手合わせお願いします」

「ノア…?」

「構わんぞ。私の代わりでギルド試験って扱いにするから希望者は相手してもらうといい。場合によってはギルドカードのランクも考慮する」

はぁ!?ちょっと、ギルドマスター!! (やっふー!) 

みんなやる気満々なのは何なの?実は私、嫌われてるっていうのなら闇落ちするよ…? (違うから! 闇落ちだめ)


はぁ…。

「とりあえず、ノアはわかったよ。かかってきなさい」

「ありがとうございます!」

この中で飛び抜けてるのはノアだし。 (むー!) 

まさかティーも戦いたいの? (ママの胸を借りるの)

じゃあノアの後でね。 (あーい!)



かつて魔王城にいた時にも一度だけノアと手合わせをした。

ファリスに“メイドが完成したから見てやってほしい“そう言われて。

あの時と同じように向かい合う。

「懐かしいですねマスター…」

「そうね。今のノアを見せてもらえる?」

あの頃と違うのはノアが膨大な魔力を身に宿している事か。

「はいっ! 使わせていただきます」

ノアはそう言うと、プレゼントした魔力操作できるナイフを4本上空へ放り投げた。

私も自身で作成した魔刀を構える。


ナイフは不規則な軌道で飛び回り、四方八方から飛んでくるけど、魔力操作している以上、躱したり受けるに造作はない。

魔力の動きが手に取るようにわかるのだから。 (えー、じゃあ正解は?)

死角へ回って飛ばした瞬間に魔力操作を切る、かな。 (ふむふむ)

まぁ、それでも私なら最後の魔力反応から軌道は読めるね。そこから真っ直ぐに飛んでくるんだし。 (……打つ手なしかっ)

今のはヒント。ティーなら思いつかない? (……むぅ)


悩みだしたティーはそっとしておいて、今はノアに集中しましょうか…。

「ノア、魔力操作は上達したね。 でもナイフに集中し過ぎよ?」

無防備な身体に斬りつけると、大型ナイフで辛うじて受けるノア。

「くっ…さすがマスターですっ!」

飛び回っていたナイフは集中が切れ、操るものが無くなれば当然落下。

ノアと斬り結ぶ間にそのナイフを私が魔力操作で乗っ取り、すべてをノアへ向ける。

「なっ…!? 私しか使えないはずでは!?」

「作ったの私よ? 近接で攻撃しつつ、せめてこれくらいは出来るようになってほしいかな?」

「参りました…」

刀による攻撃と、飛来するナイフを受けきれないと判断したノアは降参。 (すっげー! ママかっくいい!!)

これくらいは基本よ。 (基準が高すぎるの…)

そうだろうか…。師匠とは斬り合いながら魔法の応酬もしてたからね。 (今度聞いてみよ…)


ノアにいくつかアドバイスをして、ティーと交代。

「私達も一緒でいいわよね?」

「ハンデがすごいもん!」

リアとティアね…。 (これでも勝てる気がしないの)

「…いいよ。全力でかかってきなさい!」

今後、守るにしろ鍛えてあげるにしろ、実力を把握しておくに越したことはない。

そう思い至り、三人の挑戦を受ける。


ティアは、お狐様うどんとのコンビネーション。

リアは魔法防壁も使いながら、ティアのスキを埋めるように魔法を飛ばしてくる。

そしてティーは、ノアに渡してあるのより小型版のナイフが四本。

ノアの修行が終わった後にプレゼントしたものだ。

此方も不規則に飛び回り、私を狙う。

初めこそ魔力操作で操っていたけど、教えた通り途中から操作を切って、単に投げられたナイフのように飛来する。

私が躱した直後に魔力操作で受け止めるあたりは上手い。 (だめかー)

リアとティアの攻撃の合間を狙ったのは流石だけどね。その程度ではダメよ。 (なんか、なんかないかなー)


……。

「三人とも教えてあげた魔法防壁の訓練だよ。受けきってみせなさい!」

「リアー!」

「わかってるわティー! ねえ様も!」

「りょーかい!」

三人が全力で魔力ドーム型の魔法防壁を張ったのを確認後、氷の槍を数十個展開、不規則に飛び回らせ、その中にヒント混ぜ込む。 (………)


三人の魔法防壁へ絶え間なくぶつかる氷の槍。

「っ…! こんなの反撃に転じるとか無理よ!」

「危なくてうどんに指示も出せないよー!」

「……二人ともちょっと任せるの!」

「ティー、何するのよ?」

「試してみたいことがあるの!」

気がついたかな?



ティーはナイフを二本だけ投げると、此方も魔力操作で不規則に飛び回る。

そのうち片方の魔力操作を切り、更にもう一本をぶつけ軌道をずらした。 (正解?)

うん。よく見抜いたね。それをたくさんの数で同時に何度もやれれば、全ての軌道は私でも読めなくなるよ。 (今はこれで限界!!)

大丈夫、ティーならできる。 (頑張るの!)

私がやったのも正にそれだから。魔力操作で飛ばした後、氷の槍を幾つも空中でぶつけ合い、目視でしか軌道を読めなくしてある。 (目視も無理だよ?)

それでも見抜いてたじゃない。 (辛うじて)


リアとティアにもアドバイスをして、魔力ドームや魔法防壁を使いこなしていたのをしっかりと褒めてあげた。

「あのレベルの守りと同時に攻撃も出来るようになれば攻守ともにバランスが取れるから…そうね、初めは二人で攻守の役割分担をするのも手だよ」

「だとすると、攻撃はうどんもいる、ねえ様に任せたほうがいいかしら」

「うん! また練習するよリア!」

「ええ!」

楽しそうで何より。姉妹ならではの息の合ったコンビネーションが出来たら強みになるはず。


「次は私達かしら。試験の時は途中で離脱してしまったし」

「おねーさまおねがいします!」

「私達にもアドバイスをお願いします」

王族ぅ…。 (諦めてもろて)

魔道具もつけてくれてるし、大丈夫か…。

本当に陛下の目が無いと王妃様は無茶をされるんだから!










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