とばっちり
ティーの誘導で、私達も観光組と合流するために街へ繰り出した。
まさかの王妃様達まで同行っていう意味のわからない状況だけど…。
勿論変装はしてるし、こっそり護衛の騎士様もいる。
私も警戒はしてるけど、不安しかない。 (ママも髪色変えたし)
新年の挨拶で顔が割れちゃったからね…。コチラなら黒髪でも姉御とか言われないし! (ぷぷっ)
「アルばっかり手をつないでてズルいです!」
「おねーさまですから」
「シルフはこっちね?」
偽名がギリギリよね。 (突然だったし)
安全のためにも拗ねてるシルフィーはほっとけないから、アルフィーと繋ぐのとは逆の手を差し出すと嬉しそうにしがみついてきた。
「あっ…」
「マスター…」
「ティアとノアは後で交代ね?」
シエルは王妃様と手を繋いでて、あっちはあっちでレウィを散歩させてる親子みたいにみえてて…不思議な光景だわ。 (王妃様からはお母様って呼ぶように言われたし)
いいのだろうか…。 (今更感すごい)
ティーの的確な道案内で、迷うことも無く合流。
よりによってギルドに…。 (見たいって言うから)
気持ちはわかるけどね。奈々達は文化祭の視察も兼ねてそうだし。 (麻帆はそう)
奈々は単にはしゃいでる? (うん。聖さんも)
へぇー。意外だ。
ギルドへ入ると、勝手知ったると言わんばかりに歩き回る王妃様。
変装してるとはいえ、アリアさん達が不安そうにしてるから自重してあげてください…。
「ふふっ、久しぶりだわ。まだギルドカードもあるから依頼でも受けようかしら」
王妃様がとんでもない事言ってますけど!? (ユウキの紹介でみんなもカード作ったよ?)
嘘よね? (ガチで)
無いの私だけ? (あとはノア?)
ティアは? (フレアベルナさんととった)
無双してたんだっけ…。 (今も依頼受けてでかけてるーって)
長老様ぁ…。 (シルフィー様とアルフィーは無いけどね)
当然でしょ。王女様だよ!?
こうなったら…。
変装したまま私もギルドカードとってやる。 (あははっ!)
受付で登録を…
「アスカちゃん、何をする気かしら?」
「…ギルドカード取ろうかと思いまして」
「無理だって言ったわよね?」
「…お母様、さっき依頼受けるとか言ってましたよね? お父様に報告してもいいですか…?」
「ダメよ!! はぁもう、わかったわ。内緒よ?」
「はいっ!」
私達の内緒話をちゃっかり聞いていたシルフィーとアルフィーも欲しがったのはもうね…。
急遽、ギルドマスターの執務室へお邪魔し、手続きをしてもらった。
「王妃様、いや! セルフィー、無茶が過ぎるぞ! いくら私でも限界が!」
「細かい事は私がなんとかするからカードだけお願いよ。ね?タニア。私達の仲じゃない」
「はぁ…。王妃になられてもやんちゃは変わらんな。 ならコチラからも一つ条件を出させてもらうからな?」
「いいわ。どうせあれでしょ? アスカちゃんと戦いたいとか言うのよね」
「ああ! 前回はユウキ君との戦いで疲弊していたからな! 私もあれから鍛えたんだ!」
…とばっちり!! (ママのせいでもあるし…)
うー…。
結局、手合わせしたらカードのランクも高くしてくれると言うから受ける事にした。 (きたー!)
うちの子たちがみんな揃ってそういう反応なのは何なの? (戦うママはレアだし)
うーん、そうだろうか。でも、聖さん達に異世界っぽさを見せられるのならいいか。
そんな訳で王妃様を始め、うちの子達の見守る中、いつかユウキと手合わせをして破壊した訓練場に。
今回は抜かりなく全体へ魔法防壁を張り巡らした。
もう破壊したくないのもあるし、当然みんなを守るためでもある。
「さて、まずは近接で手合わせを願おうか」
「わかりました」
武器はお互い同じ剣。
「合図は私がするわね」
「頼む!」
ギルドマスター、やる気満々だなぁ。 (わくわく!)
「はじめ!!」
王妃様の合図と同時に、真っ直ぐに突っ込んでくるギルドマスター。
ユウキとの戦いで、受けに回るのは懲りたらしい。
横凪に振るわれた剣を受け流す。当然、直ぐに対応されて返す剣で斬りつけられる。
今度は受け流さずにまともに受けると、かなりの重さの斬撃で火花が散り、剣にダメージが入る。
訓練用の同じ得物だから、コチラだけ魔力で強化する訳にもいかず、斬り結ぶたびに刃が欠けていく。
「くっ…全く手応えがないっ。勝ち筋が見えん!」
「…そろそろ武器が限界なので、ごめんなさい」
「なにっ!?」
斬撃を受け流しながら踏み込み、柄尻で鳩尾を突く。
「うぐっ…くぅ…」
加減したとはいえ、ギルドマスターも大概タフだよね。 (剣ぽいってしてステゴロ…)
そうなると私も答えなくてはいけないじゃない…。 (ママは剣を地面にザクー)
振るわれる拳を払いつつ、スキをみつけてはボディに叩き込むも、止まらないギルドマスター。
「っ…はぁ…くっ…こんなものか?」
「煽られてもノリませんよ」
「そこはのってくれ! 終わらん!!」
あ、そういう意図なの? (ギルドマスターも不器用)
どうしたものか…。 (必殺技みせて!)
なによ、必殺技って。 (なんかこう、派手で吹っ飛ぶやつ!)
ふむ…。
「魔法防壁は張りますが、派手に吹っ飛びますからお覚悟を」
「へっ!?」
ギルドマスターを魔法防壁で覆い、氷魔法で作った…様に見せかけたエフェクトだけの巨大な拳。
実際は単に拳を振るっただけ…。 (うおーーー!)
砕ける氷と共にぶっ飛んでいくギルドマスター。 (アレは死んだわ)
怪我さえさせてないから! 人聞き悪いな。 (見た目は派手だから)
ティーの希望でしょう。 (うむ。すごかったの)
周りもあまりの光景に悲鳴やら、ユウキからは非難の声。
「姉ちゃんやり過ぎ!! 大丈夫なの!?」
「見た目だけよ」
私の言葉を裏付けるように、ぶっ飛んだ先で起き上がり、ピンピンしているギルドマスター。
「なるほどな。派手な演出最高だ!」
お気に召したらしい…。ノリいいなギルドマスター。
「…ユウキ、お姉ちゃんを疑ったらだめ…」
「アレは焦るって!」
スピネルは冷静に見てたらしいね。
もう一人、冷静に見守ってたのは…。




