市場通り
ギルドから外に出ると日が少し傾き、数時間もしたら夕暮れだろうタイミング。
時間的に市場が混むかなぁと思いながら、前を歩くアリアさんについて行く。
しばらく歩くとギルドのあった通りより、広い道に出る。
ただその両脇には沢山の店が並び、客を呼ぶ声や買い物客の声で大賑わいだった。
「アスカ様、買いたいものが決まっておられるのでしたら、そちらへ向かいますが」
「えっと…卵、ミーチ、野菜類に香辛料です。あとはチーズがあれば…」
アリアさんは市場まで把握してるのね。流石!
「では、まず野菜を。少々混みますのでお気をつけて」
「わかりました。あの、手を繋いでもいいですか?はぐれそうで…」
「は、はいっ! ぜひ!」
「ありがとうございます」
左手でアリアさんと手を繋ぎ、右腕には未亜ちゃんがしがみついてる。
これならはぐれたりしないよね。 それくらい賑わってるんだよ。
もしもの時は魔力辿ればいいけど…初めから対策しておくに越したことはないからね。
少し歩くと野菜や果物がいっぱい並べられたお店にたどり着く。
「わあ…すごい! お姉ちゃん見たことないのがある。でもなんとなく似たようなのもいっぱいだね」
「ほんとだね、あっ、これ色は緑だけど玉ねぎっぽい。 すみません〜触っても大丈夫ですか?」
一応お店のおじさんに断りを入れる。
「おう、…えらいべっぴんさんだなぁ。好きなのじっくり選んでくれ」
「ありがとうございます」
手に取って確認。物には鑑定使えるからこれが玉ねぎ代わりで大丈夫そう。
「お姉ちゃん、これジャガイモかな?めちゃくちゃ大きいけど…」
「ホントだね、種芋…にしても大きいね」
私の知ってるジャガイモってせいぜい手のひらサイズだけど、コレはスイカくらいある。
「おう、それなぁ…調理さえ気をつければ上手いぞ?見た目で敬遠されてるのが勿体なくてな」
「芽と、色、皮ですか?」
「おお〜知ってたか! いや〜珍しいな。分かってるなら問題ないな」
知ってるのは小さいジャガイモの方だけどね。
「じゃあこれとこれください」
玉ねぎらしきものと、ジャガイモらしきものを選ぶ。 他にもサラダに使えそうな野菜も購入。
「よっしゃ! サービスしとくぜ」
「ありがと〜」
そう言って渡されたのはもう一個のスイカ大のジャガイモ。
ありがたいけどコレ、ストレージなかったらキツかったよ?
麻袋のようなものに野菜を詰めて渡してくれる。
受け取ろうとしたら
「私が」
ってアリアさんが受け取ってくれた。
八百屋さんを後にし、アリアさんから荷物を受け取りストレージに仕舞おうとしたら
「市場で手ぶらなのも不自然なのでこのままで」
アリアさんにそう言われ、結局荷物を持たせたままになってしまった。
「ストレージ持ちは珍しいですか?」
気になったので聞いてみた。
「そうですね、城の騎士団にも数人だけです。魔力に影響されるので容量も多くはありません。魔道士団にいる一人は容量が多いですね」
「なるほど…。アリアさんも持ってますよね?」
鎧を持ち運んでるみたいだし。
「いえ。私のは王妃様から支給されてるマジックバッグです」
「さすが王妃様ですね」
「はい。近衛騎士は皆支給されるので助かっています」
元賢者様はやっぱり凄かった。
「お姉ちゃん、それって私も持てる?」
「マジックバッグ?」
「うん、あったら便利かなって」
「そうだね、一応私も持ってるからすぐに渡せるけど…」
「ホント!?」
「ただ…バッチぃよ?盗賊団を捕まえたときに没収した物だからね」
「…それはやだね」
「でしょ?中身は持ち主に返したから空だけどね。 時間があるときに作ってあげるから、鞄を探そうか?未亜ちゃんが気にいるデザインのがいいでしょ?」
それが一番いいと思うんだ。見た目を好みの物に出来るっていうのは大きいからね。
魔石を外付けしなきゃいけなくなるけど…。
「でもいいの?大変なんじゃ…」
「そんな手間でもないから大丈夫だよ」
「貰ってばっかりで私お姉ちゃんに何もお返しできてないのに…」
そんなことないのになぁ。
「未亜ちゃんにはいっぱい助けてもらってるし、これからもきっと私が心配かけると思わない?」
「うーん…心配するのは当然だし。家族だもん」
「でしょ?家族なんだから遠慮しなくていいの」
「わかったよ、お姉ちゃん! ありがとう」
「ん、なら後で鞄も見に行こうね」
私達のやり取りをニコニコしながら見てたアリアさんが、
そっちの案内も任せてくださいって張り切ってた。
「この辺に精肉店があったと思うのですが…」
アリアさんが周りを見回しお店を探す。
あ、あれかな?それっぽい看板がある。漫画肉みたいな絵が描いてあるし…
「アリアさん、あのお店ですか?」
私が指を指した方を見て頷く。
「そうです、良かった…。移店でもしたのかと思いました」
かなりの人混みだし、見渡しにくいものね。
見つけたお店に三人で向かい、私と未亜ちゃんは店内へ。
「あ、涼しい〜」
「ホントだね、お肉扱ってるからかな」
「いらっしゃい、生肉置いてるからねぇ。魔道具で冷やしてるのさ」
やっぱり。店番をしてる元気なおばちゃんが教えてくれる。
「なにか探し物かい?」
「はい、ミーチを…」
「あいよ、どれくらい包むんだい?」
そうだなぁ…、ユウキが結構食べるし。ストレージなら腐らないから。
「今どれくらいありますか?」
「そうさね、ここに出てる分と、後は加工すればだけど、そんなにいるのかい?」
目の前のケースに色々な種類のお肉が並んでて、ミーチは…見た感じ数キロ?
「じゃあここに出てる分を全部貰えますか?」
「はいよ〜。数時間は保冷ができるようにするけど、早めに冷やしておくれよ?」
「わかりました」
お金を払い受け取る。これだけあれば足りるでしょ。 (どうだか…)
「お姉ちゃん、これ香辛料かな?」
「うん?」
未亜ちゃんは壁際の棚を見ているね。
「お嬢ちゃんよく知ってるね、肉料理に合うものはウチでも置いてるのさね」
なるほど、ありがたいね。見てみよう。
「未亜ちゃんよくみつけたね、ありがとね」
「えへへ」
これはコショウかな?岩塩もあるし、こっちは乾燥バジルっぽいなぁ。
これなら私のオリジナルがここでもできそう。
見つけた香辛料も一緒に買って受け取る。
あ、そうだ。
「すみません、卵ってあります?」
「卵は扱ってないねぇ。 向かいに鳥の専門店があるから、そっちに行くといいさ」
おばちゃんが真向かいにあるっていうお店を教えてくれる。
「ありがとうございます」
「ウチの妹の店だから、あっちも贔屓にしておくれよ」
これがホントの姉妹店か。
「わかりました。また来ますね〜」
「あいよ! ありがとね」
お店の外で待っていてくれたアリアさんに説明し、向かいの店へ。
こっちは新しくできたばかりらしい。
向かいの紹介できたって言ったら卵1個サービスしてくれた。
これで大体はそろったかな?
パン粉は作ればいいし。 (チーズ忘れてるよ…)
よし、じゃあ未亜ちゃんの鞄を探しに行きますか。
そろそろ夕焼けになってきたし、あまりゆっくりは出来ないけどね。




