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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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魔大陸



地図もなく、聞いただけの情報だけど、魔国ヴィヴィーアージュのあるという方角。

そちらの海岸線へ行き、魔族の上陸したであろう港や浅瀬を避けて人のいない断崖絶壁へ。

周りに誰もいないのをもう一度確認して小型のドラツーを作成。

ティーと二人で乗るだけだから最低限の装備。

小型にしたから、普段より速度も出るんじゃないかと期待してる。

いつものドラツーは島においたままだからね。

「ママ、もう乗っていい?」

「いいよ。また飛ばすよね?」

「うんっ!」


ドラツー内部は二人乗りのコクピットだけっていう簡素なもので、戦闘機に近い。

ティーの好きそうなコンソールは作成してある。見た目だけのものだけど…。 (これ好き!)

それは何より。

二人で前後にタンデムで乗り込む。

当然パイロットのティーは前。

私は後ろの席で探索を使いながら索敵のサポート。


「周りに誰もいないし、出発していいよ」

「あいあいさー!」

隠蔽されたドラツーは音もなく飛び立ち、凄まじい速さで海の上をゆく。

海獣やらはいるようだけど、船とかは特にいないし気を使う必要もない。

まぁ、飛んでるのはかなりの高度だから、下の事はあまり気にしなくてもいいのだろうけど、もしもがある。



移動中に、今回の勇者でもあるティーと色々相談しておく。

喚ばれたとはいえ、本来は部外者であり、力のある私達が介入する以上、よく考えなくてはいけない。

それこそ師匠の教えに背くような事をしてはいけないし、なによりティーにそんな事をさせたくない。

「どうするのが正解なの?ママ…」

「正直ね、”これ“っていう正解なんてないんだよ。ティーがどちらかに加担すれば、必ずそちらに勝利をもたらすだけの力があるのはわかるよね?」

「うん…」

「だからこそ、そういう時は自分の心に従うといいよ。今まで経験した事、見聞きしたものや、感じたもの、それらを踏まえてティーがどうしたいか。それが一番大事」

「ティーが決めるの?」

「勇者として戦いに参加する以上、相応の責任は発生するの。当然、敵となった相手からは恨まれる。どうしても嫌なら私が引き受けるけど、ティーはどうしたい?」

「……頑張る。ティーも勇者だから!」

「ん。じゃあ私は全力でサポートするからね」

私の気持ちだけで言うなら、ティーにこんな重荷を背負わせるのは本意ではない。

けれど、それよりもティー自身の気持ちを優先してあげたい。

しっかりとティー本人に勇者の称号がついたのも何かの縁なんだろうし、責任や重荷なら一緒に背負ってあげればいいんだから。


全部私がどうにかしようとしてしまったら、父さんに何もさせなかった頃の母さんと同じになってしまう。

私の子であり、相棒でもあるティーが自ら考え行動するというのなら見守るのも私の努め。

まぁ、かっこいいティーを見たいっていうだけの親バカと言われたらそれまでだけど…。



小型ドラツーは高速でもかなりの時間海の上を飛び、大陸が探索に入った。

目視でも大きな港らしきものが見える。

船は小型の物が数隻しか停泊してない。というかそれ以前に…

「ママ、なんか変…」

「うん。植物が殆どないね」

異世界は現代と違い、手付かずの森か多く、緑豊かなのが毎回のこと。

それは都市部も例外ではない。

科学技術が発展してないからなのか、魔力があるからなのか理由はわからないけど、どこもそうだった。

この世界も喚ばれた国の周辺はそうだったし。

だけど、この大陸は緑が本当にない。

岩場が剥き出しになり、山も土と枯れた大木や倒木しかないのは異様な光景だ。

魔族も殆どいなくて、探索範囲にかかるのは数人。


取り敢えず、その数人が固まっているエリアへドラツーを飛ばしてもらい、上から見てみるも無人の街と城のような建物があるだけ。

当然、城下街にも緑の植物なんて一切ない。これはあまりにも異常だ…。

「ティー、下へ降りてみようか」

「はーい!」

ティーは悩むことなく城の敷地内にある広場へドラツーを降ろした。

確かに手っ取り早い。どうせ誰もいないし、もしもの場合でもドラツーは隠蔽されてる。


「ママ、ティー行きます!」

「よしっ、行こうか」

二人でドラツーを降りると、直ぐにこの大陸が異常に陥っている原因がわかった。

「ちょっと気持ち悪いの…」

「ティーでもキツイか…。ちょっと待ってね」

魔力ドームで覆い、濃すぎる魔力からティーを護る。いつもの魔道具では想定すらしてない状況だから仕方がない。


「ママはへーき?」

「うん、自前の魔力が高いからね」

魔力のある世界では、魔力が無くなってもそれはそれで不具合があるけど、濃すぎるのもまた問題になる。

ある程度なら魔獣が強く大きくなり、植物の成長が早くなって巨大化する等、場合によっては有り難い状況になるけど、何事も限度を超えれば…。


「お城にいる人たちはママ並みの魔力持ち?」

「そんなことはなかったけどなぁ…。多分何かしら対策をしてるんだと思うよ」

私がティーにしたのも対抗手段の一つだし。


「本当にだーれもいない!」

「多分街の人たちも耐えられないから、全員が戦いに行くという名目で移動してるんだろうね」

この街の周辺にも魔獣はおろか、城下街にも人っ子一人いない。

どおりであちらの大陸に魔族がひしめいていた訳だ…。

見かけた幼い雰囲気だった魔族も、本当に子供だった可能性がある。


城へ入るにも、守る兵士のいない城なんて侵入するのは容易い。私達は堂々と正面から侵入。

城内にも当然兵士なんていないから、そのまま纏まっている人たちの元へ向かう。

「……」

前を歩くティーは何かを考え込んでいるようで、口数も少ない。

無理もないか。これからラスボスと対面するかもしれないんだし。



暫く城内を進み、おそらく玉座のあるであろう部屋の大きな扉の前についた。

「ティー、大丈夫?」

「うん! どうするか決めた!」

「わかったよ」

どういう決断をしたかはわからないけど、私だけは最後までティーの味方でいよう。

そう決意して、扉を開くティーの後ろ姿を見守る。


「な、何者だ!!」

「こんにちわー。勇者でーす!」

ギギーっと重々しく開く扉と比べて軽いなっ! ティーらしいと言えばらしいけど。


「チッ…古の話は事実でしたか! 魔王様をお守りしろ!」

数人の魔族、しかもかなりの魔力持ちが魔王を守るように前に出た。


「戦うのー?それでもいいけど、先ずは話し合い!」

「「は!?」」

ティーの突然の申し出に、あっけにとられて固まる面々。

本気で戦えば勝てないのを自覚してしまっているからこそ、ティーの申し出は意味がわからないのだろう。


「そのようなだまし討ちを…」

「えー?そんな面倒なことしなくても…」

そう言ったティーが消えて、相手の人数、四人に合わせて四人の分体が全員に武器を突きつけた状態で現れて止まった。

「こうやって直ぐに倒せるのに?」

「くっ…。殺せっ…」

魔王らしき女性がそう言って力なく項垂れた。


「話し合い! 先ずはここの状況を教えて?なんかおかしいもん」

ティーは武器と分体をしまうと、相手を見渡しながらそう言葉を続ける。

相手もここまで力の差を見せられて尚、下手に出られては頷くしかない。


「何を話せと? 侵略した理由なら…」

「魔力が多すぎてヤバいんだよね? そうなってる原因はなに?」

「それは…」

「何故、敵にそのような情報を教えねばならんのだ!」

「ティーとママはよその世界から無理やり呼ばれただけ。だから敵と決まってるわけじゃないよ?」

「そんな戯言が!」

「…おやめなさい。 お話しますわ。この大陸を蝕む異常な量の魔力、その原因について…」

「魔王様!!」

「よいのです。ここで敵対しても我ら魔族に未来はない。違いますか?」

「「「………」」」

それからティーと一緒にこの大陸について話を聞いた。










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