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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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過去と秘密



「やらないから! そんな契約でみんなを縛りたくない!」

「なんでよ? 婚約者なんだからいいじゃない」

「そもそも私もドラゴンの血をひいてるんだから、いずれはそういう契約になるでしょ?なのに今する必要ある?」

「リアちゃん、これはお姉ちゃんが正しいよ」

「仕方ないわね! ただし、その転入生と契ったら許さないわよ!」

「やらないって…」

多分気が付かないし。仮契約ならもしやっちゃったとしても、どちらからでも一方的に解除できる。


リアはこういう事にやたら敏感に反応するよね。 (ドラゴンだし)

そういう理由? (契約にこだわる)

なるほど、なんか納得。


「取り敢えず、それを使うのは最終手段よ。私が転入生がドラゴンの血を引くものか確認してからよ! うちに連れてきなさい」

「聖さんを!?」

「他にどうするのよ?」

確かにリアの言うとおりだけど…。

うちはみんな髪色やら日本人離れした子ばかりだからなぁ。 (こっそり見てもらう?)

応じてくれると思う?リアが…。 (……無理!)

でしょう?堂々と相対するのがリアでしょ。 (ママはリアをよくわかってる)

真っ直ぐで素直な子だからね。



とはいえ、いきなり家に呼ぶのも不自然だから、何れ機会があったら…って話で纏まった。

でも、気になる…。曾祖父母が関係してるかもしれないのなら余計に。 (……)

それとなく聞いてみるくらいならしてもいいよね? (まぁ…)



翌日、お昼休みに聖さんも一緒だったから、家族の事を聞く足がかりにと、弟さんについて少し話を振ってみた。

「私も奈々も弟がいるけど、聖さんの弟さんはいまいくつ?」

「今年10歳ですわ。ただ、長く入院していたせいで、年相応にはとても見えませんけども…」

「え!?入院してたの?」

「ええ…。今はもう元気なんですけどね」

聖さんはチラッと私を見た。

「そうなのね…。でも元気になったのなら良かったじゃない。私は一人っ子だから兄弟って憧れるわ」

「麻帆、弟なんて生意気なだけだって! アスカのところもそうでしょ?」

「うちはそうでもないかな。頼りになる弟だよ」

「なにそれ! アスカってブラコン?」

「違うって!」

「わたくしは…ブラコンかもしれませんわね」

しまった…。悪い事言っちゃったかな。


「まぁ私も生意気だとは言ってても大切な弟だとは思ってるよ!」

「私もだね」

「…ありがとうございます。殆ど会わない両親と違い、弟が唯一の家族のようなものですから」

その辺は前の私と同じだな。この話を聞くと、聖さんが私を探し出し、転校までしてお礼を言いに来てくれたのも納得してしまう。 (弟想い)

うん…。冷たくして申し訳なかったね。


雰囲気的に家族について聞けるような状況ではなく、この話題はここで終わってしまった。

聖さんの様子から、とてもじゃないけどこれ以上踏み込めない。

「文化祭には弟を呼んであげたいのですわ。今まで何処にも連れて行ってあげられなかったですし…」

「いいお姉ちゃんしてるじゃん!」

「ええ。素敵だわ」

「そんな…。これも全部アスカさんのおかげで…」

ちょっ! (あははっ)


「どういうこと!?」

「アスカちゃん、またやらかしたの!?」

麻帆、酷い…。 (その通りなんだよなぁ)

すみません…。


結局、二人にも説明するはめになり。

元々、奈々を治したのは知っていた二人もびっくりだよね。私もこんなに尾を引くとは思わなかった。

とはいえ、自業自得なんだけども。

「やっぱりアスカさんには特別な力があるのですね!」

「おまじないはすごく効くわね」

「だってアスカは…むーーー!!」

慌てて奈々の口を塞ぐ。何言おうとしたこの子! (魔王とか?)

アウト! いっぱいいっぱいアウト!! (ティーにいわれても…)

はい…。


「誰にも言いませんわ。うちの者にも弟にも口止めはしてありますから、ご心配なさらずに」

「ありがとう…?」

聖さんは私を超能力者か何かだと思ってるフシがある。 (あながち?)

こちらなら確かにそうかもだけどね? 




放課後は今日もみんなで寄り道をしつつ、駅まで聖さんを送り届けた。

そのまま駅で解散したのだけど、暫くしたらスマホの通知。

「聖さん…?」

”駅で待ってます“か…。

行くしかないね。


急遽、駅にUターンした私は、聖さんと合流。

駅近くのファストフード店に入った。


呼び戻されたのは何かと思ったら、改めて弟さんのお礼のため。前はしらを切り通したからね…。

「恩人のアスカさんに、しっかりとお礼が言えて嬉しいです!」

いい笑顔で言われちゃうと、もう否定もできない。

「元気になって良かったよ」

「はいっ! あの、それとは別ですが…なにか聞きたい事があるのではありませんか?」

「っ…」

「恩人のアスカさんにならなんでも答えますわよ?」 

「じゃあ…答えたくない、嫌な質問だと思ったら答えなくていいからね」

そう前置きをして、ご先祖様について聞いてみた。


「白銀家の記録が残っているのは江戸時代初期、口伝で伝わるお話はこうです」


…………


江戸時代初頭、その頃ご先祖様は狩人をしていた。

山に獲物を狩りにでかけた折に、白銀の髪を持つ人たちに出会う。

最初は山神様に出会ってしまったかと思い、怖くて腰が抜けたそう。

だけど、何かされるでもなく困っている様子だったので、相手が山神様なら…と、丁寧に対応したらしい。


山神様一家の男の子が一人、体調を崩していたらしく、狩りの時に使う山小屋に案内して、一家で世話をした。

その時に、ご先祖様の娘さんが一番甲斐甲斐しく世話を焼いたそう。

「体調不良を治す唯一の方法が、山神様と娘が交わる事だと言われたそうで…」

「交わる?」

「えっと…その…恋人や夫婦がする様な行為ですわ」

「ああ! ごめん…。契を結んだんだね?」

「そうです!」

つまり、曾祖父母が連れていた仔ドラゴンが魔力不調か何かになってて、現地の人と契約したと…。

ドラゴンの契約なら確かに魔力不調も改善されそうだなぁ。


「その娘が産んだ子供が、また美しい白銀の髪を持つ男の子だったそうで、後に土地の権力者の娘と結ばれ、その時に白銀(しろがね)という名字を頂いたそうです」

「山神様たちは?」

「体調が戻られてからは一度もお姿を見る事はなかったそうですわ」

転移したのか…?


「息子は商才に恵まれていて、一代でかなり大きな商家にまでしたそうですわ」

一代といってもドラゴンハーフの寿命だから、どうなんだろうか。

というか…

「その話、口伝って事は門外不出だったんじゃ…」

「アスカさんはこのお話を聞いても、わたくしを疑ったり嘘つき呼ばわりもされませんのね」

「え?」

「このお話をおおっぴらにしない大きな理由は、白銀家が山神様の血を引いている、という部分にあります」

「うん?」

「当時なら、畏れ敬われる事はあっても…」

「現代ではそうはいかない?」

「ええ…。精々、家の箔付けの為の作り話として聞き流されます。なのでわたくしも祖母から、人には話さないように、と教えられたのですわ」

「やっぱり話したらだめだったんじゃ…」

「アスカさんならかまいませんわ。弟の命の恩人ですもの。それに…お友達ではありませんか」

「そう…。ありがとう。 じゃあ…私も一つ秘密を教えるね」

「秘密…ですか!?よろしいのですか?」

「私を信じてくれた聖さんを私も信じたいからね。友達、でしょ?」

「はいっ!」









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