母は強し
突然現れた皇太后様。
母さんは当たり前のように談笑しててびっくりする。 (会話が成り立っててやべー)
本当にね…。あの方と普通に会話ができるのは凄いよ。
皇太后様と入れ替わるような形で、無理やり予定を開けただけだったイアリスさんは急いで帰っていかれた。 (逃げた!)
違うって。
本当にすいません…。聖女様は忙しいよね。 (真の聖女様に呼ばれたら無視できない)
その設定なんとかならないんだろうか。頭痛いよ…。 (ママの像もできてるのに無理があるの)
はぁ…やれやれ。
頭を抱えてたら師匠に引っ張られて、ソファーに座らさせられた。
となりにはちゃっかりメリアさん。
「おいアスカ、せめて事前に一言くらい言ってくれ。母親をつれてくるとか頭が真っ白になったぞ」
「すみません師匠。勇者召喚に関しては母が直接確認するしか方法がなくて…」
「アスカ様のお母様もやはりドラゴンなのですか?」
「完全なドラゴンにまではなれませんけど、ハーフには。母の妹は完全なドラゴン化が出来る方ですね」
「見た目ではわからんな…」
「私も母から話してもらうまで知りませんでしたし」
皇太后様と話してる母さんを見ながらそんな話を師匠とメリアさんとしてた。
盛り上がってるから邪魔できないし…。
「ところでアスカ様、どうして突然召喚について調べるような事を?」
「それがですね…」
ここ最近の出来事を二人にも話して聞かせた。
「なるほどな。 確かに関連性を疑う気持ちはわかる。が…手荒な真似をしてやるなよ?相手は素人なんだろ」
「もちろんそんな事をするつもりはありませんよ。うちの家族に危害を加える、とかそんな人ではないと思うので」
「お話を聞く限りご本人も魔力がある事を自覚してなさそうですね」
「ええ、おそらくは…」
「だったら尚更下手なことはせず、穏便に済ませるほうがいいだろう。下手に突くと大事になりかねん」
「ですが…アスカ様が不安になるお気持ちもわかりますし…。あ、それでしたら!」
メリアさんは何か思いついたように、本棚へ行き、アレコレと手に取り眺めてる…。
何を探してるのだろう?
「これをお使いください」
戻ってきたメリアさんに渡されたのは、懐かしいスキル書を数冊。
所謂、読めば新たなスキルを覚えられるっていう便利アイテム。
一度使うと同じ本は二度と使えない…というか使う必要がない。
読んだからって消えたりもしないけど…。
初めてこちらに呼ばれた時にも何冊か見せてもらったなぁ。 (今回のはなんのスキル!?)
えっと…催眠術、傀儡化、隷属化…不穏なのばっかり!! (ヤバっ)
でも一つ、有り難いものが。 (う?)
血の契約。 (それも不穏!)
これは使い方次第では今回の謎が解けそうなんだよ! (えー?)
「これだけお借りしていいですか?」
「勿論です。他はよろしいのですか?」
「ええ。使うこともありませんから」
「メリア、それらは禁書扱いだろうが! ったく…。アスカ、わかってると思うが…」
「間違った使い方はしません! 見せてくれたメリアさんや鍛えてくれた師匠を裏切ることはしませんよ」
「ならばいい。だかな? そこは恋人を裏切ることはしない、と言ってほしいものだがな?」
「…大切な師匠とメリアさんの信頼を裏切るようなことはしません。嫌われたくないですから」
「そうか! なんかいいなこのやり取り」
「ええ。なんだか恋人っぽいです…」
恥ずかしくなるから堪忍してください…。
母さんと皇太后様の話が終わるのを待って、自宅に転移。
随分待たされたけど…。 (早く帰るとか言ってた本人が…)
時間戻しちゃうしいいよ。私も師匠達と話せたし。
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帰宅後、母さん達と夕食の仕度をして、みんなには食べながら報告。
「お姉ちゃん、その血の契約ってどんなスキルなの?」
「本来の使い方としては、いわゆる契を結ぶものだね。血で結ばれた兄弟姉妹、みたいにね」
「それを使うっていうの!?私達がいるのに! ちょっとアスカ!」
「リア、落ち着いて話は最後まで聞いてね。これはお互いの同意が必要なのは当然だけど、血族…つまり血の繋がりがあるとわかるのよ」
「つまり、姉ちゃんはそれを使う過程で転入生が親戚どうか判断すると?」
「うん、ユウキの言うとおり。勿論契約を本当に結ぶつもりなんてないよ」
だいたい、魔法やスキルを知らない人には、契約を持ちかけても感知すらできないんだから。
一方的にスキルを発動させて確認するだけ。 (もし同意されたら…)
ないない。仮に感知したとして、同意する理由がないでしょ。 (フラグにしか聞こえないの)
それがフラグになりそうだからやめて!? (くふふ…)
不安になってきた…。
まぁでも、このスキルで結ぶ契約はあくまでも仮だから。 (仮?)
同意した上でしっかりと儀式までして、初めて正式契約だね。 (正式になるとどうなるの?)
それこそ、ドラゴンの結婚の契約や、召喚獣との契約に近い物だよ。 (すげー)
だからこそ禁書扱いだったんだろうね。ただ皇族としては使わざるを得ない時もあるんじゃないかなぁ。 (例えばー?)
跡取りに恵まれなかった場合とか?もしくは他国から政略結婚の体で嫁いできた相手を縛るため。
密偵だったりとかでも裏切ったりできなくなるからね。 (なるー。じゃあ仮なら?)
特別な相手、程度かな。親友や恋人みたいな。 (ふむふむ!)
みんなに言わないでよ!? (多分手遅れ…)
……。




