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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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メリアさんが召喚術式を読み解いたメモ書きの本も見せてもらったのだけど、本当に細かく調べてあった。

あまり詳しくない私でもわかるくらいに…。


ここでもやっぱりというか、想いの強さってのが大きく影響してて。

先ずは召喚者と相性のいい相手。

こういう目的で、こんな人が来てほしいっていうような想いに左右される。

だからこそメリアさん達は、私とユウキを必死に思い浮かべて、再度喚び寄せたらしい。


還りに関しては、召喚者が送還する。或いは召喚者の死亡、又は喚ばれた目的を果たせば送還される。

メリアさんが読み解けない部分も当然あって、そっちは母さんが教えてくれた。

「これはサインだね」

「サイン?」

「術式を開発した人の、だよ」

「ああ。識別するためか…」

私が召喚獣を喚ぶ時は、契約者を識別するために自分の名前を思い浮かべて伝えるようにしてる。

対してこれの場合は、いつ、誰が使うともわからないスクロールとして託す術式だから。




「ここをイジっちゃうと、喚べなくなるように細工してあるね」

「なんて名前なの? 母さんにとっては祖父母だよね?」

「これはサインなだけで名前ではないよ。んーわかりやすく言うならパスワード」

「なるほどね…」

「名前を聞いたのは幼い時だから覚えてないなぁー」

母さんが祖父母に会ったのって、かなり昔だもんね…。 (ドラゴンスケールやっべーの)

だねぇ。ちょっと想像できない。


「そうだったのですね…。そこだけどうしても規則性も何も無く、理解できなかったんです」

「無理もないよ。”そういうもの“だから」 

「じゃあ母さんもこれと同じものを使ったの?」

「うん。だから、これに限ってなら理解してる。 つまりね、私と夕夜は出会う運命だったの!」

「他の人は?」

「戦力的に人数が必要だったからおまけ?」

酷い…。未亜のお父さんや隣のおじさんは完全に巻き込まれた人か…。


「じゃあ、母さんたちが頻繁に喚ばれてたほうは?」

「あれは多分違う。似て非なるものだよ」

確かにあれはこの術式と違って、かなり広範囲へ魔法陣が展開されたもんな。

お祖母ちゃんが改良したものって可能性もないとは言い切れないけど…似てたし。


取り敢えず、曾祖父母達がある程度異世界に干渉してたのは間違いない。

意図まではわからないけど…。後は子供連れだったのも分かった。

聖さんの家が四百年ほどの歴史があるとすれば、1600年代。つまり江戸時代初期…。

その頃に日本に来てた可能性か…。 (有名人だったりして)

どうだろう。ある程度、財は成してたんだろうけど、わからないね。

あの時代に銀髪とか目立つだろうし、偽装なりしてた可能性もある。 (そっか!)



せっかくお邪魔したからと、母さんが聖女様にも会っておきたいって言い出したせいで、師匠が急遽呼びに行ってくれた。

お忙しい聖女様は準備に時間がかかるだろうと言われて、待ってる間にツキに会うため、外に出てきた。

「精霊がすごいね」

母さんは見渡しながらそう言う。精霊巫女だからしっかり見えてるのは当たり前か。

「ここの子達は私にも見えてるよ。 ツキー!」

「ママ…!」

ふっと現れたツキが抱きついてきたから受け止めた。


「いつもありがとう。無理してない?」

「平気。みんな手伝ってくれてるから」

「いろいろな精霊がいるもんねー。いないのは光くらい?」

「…ママ、この人は?」

「私の母親だよ」

「…!!」

びっくりしたのかツキは私に隠れてしまった。



「ごめんね、驚かせて」

しゃがみ込んでツキに目線を合わせてくれて、そう言う母さんにふるふると首を振るツキ。

怯えてるというわけではなく、人見知りしてるだけかな。

「ツキ、光の精霊だけはいないの?」

「闇精霊が先に集まってきてくれたから…」

「うん?相性が悪いとか?」

「相性というか、相反するものだからね。どちらかに偏るか、バランスを取るかでしか共存は難しいよ。ほら、教会に闇精霊がいないのと同じ」

母さんにそう言われてなるほど、と納得してしまった。

聖女が使う魔法は聖魔法…つまり光属性に分類される魔法が基本だから、精霊もそちらが集まりやすいわけだね。

かと言って別に闇精霊が悪というわけではないのは、スピネルを見てる私はよく知ってる。

教会だって腐敗しきってるところもあるんだから、精霊で正悪の判断なんてできない。

あくまで武器も精霊魔法も扱う人次第。悪人なら精霊側が愛想を尽かすかもしれないし。 (悪人でも聖魔法使えるの?)

使えはすると思うよ。聖魔法に関してなら、効果はガタ落ちするだろうね。 (ママも闇落ちしたら…)

光に属する魔法は効果が落ちるかもしれないね。というか闇落ちなんてしません! (知ってるの!)



ここの場合は、闇精霊と縁のあるシャーラが見回りをしてるからだろう。

つまり、バランスを取るためには…

「ツキ、光の精霊にも力を借りたい?」

「うん…。植物の成長が早くなるから。でも集まらないの…」

「そっか…。わかったよ」

しょんぼりしているツキに、永続的な祝福をかけてあげた。 (ママ聖女キター!!)

嬉しそうね? (聖女なママかっこよかったし!)

それはありがとう。


「アスカ…何したの今!」

「祝福をかけてあげただけ。光の精霊が集まりやすいようにと思って」

「はぁ…。うちの娘、まさかの聖女だった…」

話してなかったっけ。 (かも?)

せっかくツキに会えたし、お菓子を渡して話をしてたらそこそこ時間も経過。



お城に戻り、急遽登城してくれたイアリスさんとも顔合わせをした。

此方も師匠のようにガチガチに緊張してたけど…。 (カッチンコッチン)

「まさかアスカ様のお母様がおみえになるとは…お待たせして大変申し訳ありません」

「突然だったからごめんね。娘の恋人に会える機会だったから少し無理を言ってしまったの」

「いえいえ! こちらこそご挨拶が遅くなり申し訳ありません!」

「お忙しいのにありがとうございますイアリスさん。母が無理を言って…」

「とんでもありません! 本来ならば此方からご挨拶に伺わなければなりませんのに…」

とは言ってもそれは無理だからこそ、母さんもこのチャンスを利用したんだとは思うけどね。

この国の中枢を担う三人だし…。普通はおいそれと会うことさえ不可能な人達だ。

…自分で言っといてなんだけど、メンバーやっばいな。 (今更感すっげー)

私にとってはものすごく身近な人達だったからね…。



「あらあらあら…お客様?」

突然部屋に入ってこられた方、そしてこの声…。 (妄想特急到着でーす)

もうね、嫌な予感しかしない。 (諦めも肝心)

だねぇ…。大切な人のお母様だものね。







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