ご先祖
ファミレスでは白銀さんにシラをきり通した。
ティーと相談した結果、調べまわった人たちからも記憶が消えて、あの姉弟だけになるなら放置してもいいだろうって結論に至ったから。
忙しい両親とは何年もまともな会話もなく、疎遠だって話だから、そっちも多分平気。
その分自由にはしてて、転校も自分で決めたんだとか。
身近にはメイドとか使用人くらいらしい。私の周りを探ってたのもその人達だったそう。
わからないのは、召喚や転移を体験してるのか…どうなのかって所。
正直これに関しては全くわからない。だって初対面だし。
魔力を感知しかねない相手に魔力ドームを使って鑑定はできないから、詳細はわからないまま。
こっちは鑑定魔道具を使って見てやるつもり。
うちの事を散々嗅ぎまわったんだから此方も遠慮はしない。
他に可能性としてあるのは、うちのご先祖…と言うか、お祖母ちゃんの両親。
彼方此方へ世界を渡っているって話だし、お狐様の話から推測するに、地球にも来ていた可能性がある。
だからって此方に子供を残した?その子孫?
これに関しても否定できない部分がある。
稀に生まれる白銀の髪をした人。病弱で長く生きられない。
白銀の髪色はセイントドラゴンの特徴だし、これが王妃様みたいなある種の先祖返りで、こちらの環境に合わない、それこそシエルの魔力不調に近い症状が出てたのなら…。
ただ、私が病院で治した数人の男の子にそんな魔力不調なんていう状態の子はいなかった。
そうだったとしたら、治そうと原因を探る時に確実に気がつく。
だいたい魔力があったかどうか、それすら気にならなかった時点で、魔力不調はあり得ない。
病気に関しては治療したから把握してるし。
でも、長い時を過ごすうちに地球の人と交わった結果、魔力不調とは違う形で体に不具合が出るようになった可能性は否めない。それこそ、不治の病として…。
実際、治した数人の子は全員何かしらの難病だったと記憶してる。
結局はどれもこれも憶測でしかなく、なんの確証もない。
本人に聞ければいいのだけど、それはイコールこちらの事も話さざるを得ないわけで…。
そんな危険はおかせない。
こそこそ嗅ぎまわるうえに、大きな会社の令嬢なんて、知られたら何があるかわからないもの。
個人として信じるに足るか、判断できる程の付き合いもない。
…ちょっと待って。まさか転入してきた理由って…。 (ママだろうね、確実に)
最悪だよ。ロックオンされてるじゃん!
取り敢えずうちの子達にも相談して、対策を考えないと。
帰宅した私は、両親を含め全員に今日の出来事を報告。
病院で私がやらかしたのが発端だから、責任は感じるけど…。
「取り敢えずアスカは鑑定の魔道具で見てみるしかないんじゃないかしら」
「魔道具なら余程敏感じゃなければ鑑定されても気が付かないし、そのつもり」
「転入生ってのは噂で聞いたし、明ちゃんからは生徒会から要注意人物に指定されたって聞いたよ…」
転入初日で要注意人物…。 (ウケる)
さすがにちょっと申し訳なくなってきたよ。
「うーん。私もわかんないな。祖父母に会ったことも一度しかないからね」
「ナツハも会ってはいるんだな」
「本当に一度だけね。それから世界を渡ったはずだから…でもー」
「ん?」
「ほら、ドラゴン同士の場合、浮気とかって可能性は低いんだよね」
「つまり、こっちで誰かを孕ましたとかって話か?」
「アナタ、言い方! 子供もいるのよ!」
「すまん…。だけどよ、他種族の女に手を出さない訳ではないんだろ?」
「そこで私を見ないでくれる? 確かに元とう様はそういう事をしようとしてたみたいだけど!」
ああ、リアの父親は村々を回って女の人にちょっかい出してたんだっけ。 (ナンパなヤローだ!)
「仮にだ、他種族に手を出したとして、子供はできるものなのか?」
「できるでしょう。私がアスカやユウキを産んでるんだし、もっと言ったら私達姉妹だって生まれてるんだよ?」
「確かにな。でも俺が言いたいのはそういう意味じゃなくてだな…」
「つまり、父さんはドラゴンの契約みたいな結婚から外れた関係でも子供ができるのか?って話?」
「それだよアスカ。 契約外だとどうなるんだ?って思ってな」
「別に普通に出来るよ? 例えば私がアナタ以外の人と、ってなっても出来るし」
「やめろ! 頼むからやめてくれ…。寝取られは耐えられん」
「自分はすぐ浮気するくせに!」
「うぐっ…」
両親は取り敢えずほおっておいて…。
「つまり、母さんのお祖父ちゃんが此方で浮気か、或いは恋人がいて、その間に生まれた子孫って可能性があると?」
「考えたくないけど、絶対にないとも言えないかなー。一度会っただけだから祖父母の人となりまではしらないしね」
だとしてもあくまでも可能性の話だよなぁ。
「こちらに子供を残していった可能性は?」
「それもないとは言えないでしょうね」
魔力不調とか大丈夫だったのだろうか…。 (ママのママは平気だし)
あ、そっか。
「アスカは見てもドラゴンの血が流れてるとかわからないのかしら?」
「無理だね。わかってたら母さんのだって気がついてる」
「確かにそうね。私なら見たらわかるけど」
「え?」
「気にかけてなかったら見逃すような微量なのでも、疑って見てみたらわかると思うわ」
「でもリアー、王妃様の気がつかなかった」
「あ、あれは想像もしてなかったし! それもあったから、今ならわかるかもって事よ!」
かも、なのね。 でもそれでも有り難い。
一番は先祖返りみたいになってる弟の方を見れたらいいけど、会わせてとも言いにくい。
「あともう一つ。ねえ、母さん」
「うん?」
「勇者召喚、つまり父さんを召喚した方法は…」
「祖父母が大元だね。私はお母さんから教わったけど」
「例えばだけど、そういう勇者召喚の方法をあちこちに伝えたのが世界を渡ったドラゴンだったりしない?」
「わかんないよそれは。他にだって世界を渡ってる人はいるでしょ?」
確かに。アルディエル母様の世界の元魔王達だって渡ってるって話だったなぁ。
「でもさ、僕や姉ちゃんが喚ばれたのは関係がないとも言い切れなくない?何かしらの縁はあるんだしさ」
「うーん…。例えばだけど、喚ばれた世界の召喚方法がわかれば、私でも見たらわかるよ?」
「姉ちゃん!」
「うん、師匠のところだね」
アルディエル母様の所は喚んだ暗殺組織が壊滅させられてる。母様の事だから資料を残してる可能性もあるけど、こちらは要確認。
アクシリアス王国とかフィリアータのは、母さんの故郷だから、確実に縁があるのはわかってる。
となるとやっぱり師匠のところで教えてもらうしかない。
メリアさんが読み解こうとしたぐらいだから、現存してるのは間違いないし。
「でも見せてもらえるかはわからないよ? 国家機密だろうし」
「皇帝陛下の婚約者が何言ってんの?国も教会も顎で動かせる姉ちゃんが」
「やめて…。そんなつもりないから」
「でも事実ー」
「ティー?」
「きゃー! リズ逃げるよ!」
「待ってなのです! ずっと難しい話ばかりだからおいていかないで欲しいのです!」
それはごめんよ…。レウィも寝てるしなぁ。
シエル?あの子は忙しいからね。地下で作業してるよ。
根を詰めすぎないように気をつけてあげなきゃな。 (その辺はみんな見てるから)
そっか。有り難いね。




