夢への一歩
帰りの馬車の中でも、シエルから必要になる家具をリストアップしてもらい、それらを王妃様経由で発注。
店舗用にはL字のカウンターや、ガラスケースなど私が用意する物もシエルの希望を聞いた。
これは早くみんなにも教えてあげなきゃね。 (どうなったかワクワクして待ってるの)
また直ぐに行くと思うし、その時はみんなで行こうね。 (楽しみ!)
お城では、お勉強の終わったシルフィー、アルフィーが待ち構えてて、しばらく一緒に過ごした。
王妃様の計らいでアリアさんユリネさんも一緒。
みんなお店の話を聞きたがったからシエルが楽しそうに説明してた。
”絶対お店に行きます“ってシルフィーは言っていたけど、大丈夫なのだろうか。
普通、お城には店側が出入りするものだとおもうのだけど…。まぁどうしてもの場合はアリアさんもいるし、私が護衛してもいい。
帰り際に、色々と心を砕いてくれた王妃様にお礼を言い、島へ転移。
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ーー
海岸のプールでは、うちの子たちが遊んでる声がする。
見に行くと一番はしゃいでるのは奈々。
遊ぶときに限っては、最近リズも奈々と仲良くしてる感じがする。 (対戦じゃなければ…)
加減しないからな奈々。しないというか出来ないともいうけど。 (不器用)
遊びには全力なんだよあの子…。
「あ、おかえりアスカちゃん」
「アキナさん。こちらに来てたんですね」
「うん。ほら、嫁たちを交代で遊ばせにね?」
なるほど、家族サービスみたいなものか…。
あ、丁度お願いしたい事もあったんだ。
「前にお話した、服飾素材のお店の件なんですが…」
「ああ! それならピナに資料を渡してあるから案内してもらうといいよ」
「ありがとうございます。丁度店側の目処も立ったので…」
「へぇー。それはおめでとう! 私も見に行きたいな」
「是非! と言いたいところですが、無理はしないでくださいね?」
「だねぇ。 嫁と要相談、かな」
国のトップだし、色々と難しいんだろうなぁ。 (一番大変なのは誰を連れて行くかだと思う)
そっち!? (ママが関わるところは面白いって話題だし)
コメントしづらいな…。 (ココもそうだし)
お、おう…。
未亜、リアは私達が帰ってきたのに気がつくと、直ぐにお店の話を聞きに来たから、シエルがまた説明してる。
服に関してはあの二人が一番関心が強いし。
店はオープンすればティアにお世話になるからそっちは私が報告しておく。
「アスカー、もうそんなに話が進んだの?」
「そうだね。ティアは本当に店番とかして大丈夫なの?」
「もちろん。国内にいるのが仕事みたいなものだからね」
「そっか。じゃあ居住スペースはティアの希望も聞くね。ここみたいに転移扉も置くから」
「それは嬉しいよー! ここにも繋ぐ?」
「うん。そのつもり。こことうちの自宅だね」
グリシア王国とドラゴライナ王国は今のところ保留。
うちの子たちだけで行く理由があまりないってのもあるし。
説明の終わった私は、店舗用のカウンター等の家具や、転移扉の魔道具などを作成しておく。
ただ、大きく魔力が動いたからか、みんな見に来てしまって…。
「さすがお母様!」
リズは私のこういう作業を本当にキラキラした目で見てくれる。うん、可愛い。
ティーは危なくない距離を見極めて傍にいるようにしてくれてるし、ありがとうね。 (ふふーん)
シエルに確認しつつ、一通り完成。
翌日には転移扉も設置して、家具を置くためにみんなを連れて店舗に行った。
配置等も相談して決めたり、居住スペースや各種便利魔道具も設置。
シエルとティアを連れて、取り敢えず顔見せのつもりで近隣の店舗へ挨拶にも行った。
のだけど…。
どのお店でも私の顔が割れてて、めちゃくちゃ驚かれた。
いや、こっちもびっくりなんですが…。 (新年の挨拶でみんな見てるし)
おおう…。なんてこった。 (シルフィーの婚約者だからね!)
それは否定しないけどさ。まぁでも、私の身内の店舗ってわかってもらえればその方がいいかもね。 (そなの?)
だって良からぬ事を考える輩も減るでしょ。後ろには確実に王族がいる訳だし。 (言うてママも…)
ま、まぁ…それはそれとして。 (ふふっ。王家御用達)
実際それに近いから。店に国の紋章もつけるよう言われてる…。 (おおう…)
オープンはこの夏休みの間にして、しばらくは私達も出入りするし、二学期が始まって以降はお留守番になる子達が気分で出入りするでしょう。
基本はティアがいてくれるから、受注受付の書類等も、アクシリアス王国基準の物を用意してもらってる。
今日だけでも、既にショウウィンドウ前には人が集まってる。
入り口にはCLOSEの看板をつけてあるから、あれが裏返り、OPENになった時がシエルのお店、しいては夢の第一歩となる。
ま、その前にシエルとはドラゴライナ王国のお店に仕入れに行かなきゃだけど。 (未亜、リアはついてくみたい)
いいんじゃないかな。私はあくまでも付き添いだしね。
「姉ちゃん、ちょっといい?」
私と同じように見守っていたユウキ。改まってどうした…。
「なにか相談事?」
「いや、これ使ってほしくてさ」
手渡されたのはアクシリアス王国と、ドラゴライナ王国のお金。
「スピネル、レウィとギルドで稼いだんだよ。僕もほら、シエルの兄で、みんなは家族だし」
「…ありがとうね。そういう事なら預かっておくよ」
「そうして。これくらいしかできないからさ」
「充分過ぎるよ。二人にもお礼言っておいてね」
「わかってる」
少し照れたようにそう言うユウキ。
何より気持ちが嬉しかった。
シエルの夢が、みんなの力で動き出す…それが本当に素敵だと思えるから。
よし、仕入れに行くか! (おー!)




