海戦 2
お昼過ぎには小型船八隻を残して、中型船もすべて航行停止。
これでトゥルーグラス島の勝利が確定したわけなんだけど…。
ティーの映すカメプロの映像は、船同士の手旗信号を捉える。
あー…やっぱり不満が出たか。 (読めるの?)
うん、読めるね。多分翻訳スキルのせいだと思う。 (なんてー?)
“ワレ、サイセンモトム ハナシアイキボウ”
”ハナシアイニハ オウジル“
”ワレラモ“
って感じ。 (ほー)
納得してない大型船から再戦の希望がされて、小型船は再戦には応じないけど話し合いには応じるって事かな。 (動けないのに…)
あー。それならそろそろ来るとおもうよ。 (あ、魔族の人たち!)
うん。小型船に解除魔法の砲を積んでるから、止まってる船に一発でも当てたら動くようになるよ。 (いつの間に…)
時間経過で解除されるとはいえ、もしもがあるからね。海戦の途中で嵐とか、海魔獣とか…。 (あー)
ティーとそんな話をしていたらファリスからの転移通知。
まぁくるよね。
「アスカ様。これから代表がトゥルーグラスに集まり話し合いが行われますので、ご来賓の方にも御同席をお願いしたく…」
「あーそれなら私が行こうか?ユウナミ、アンタも来なさい」
「俺もか!?」
「ドラゴンなんだから何かあっても対処できるでしょ。私と行くよー」
アキナさんに言われて拒否権もなく連れて行かれる先代様。
当然私も行かなきゃだけど。 (ドラツーおろすー?)
いや、転移するからいいよ。 (あーい)
護衛にとスノウベルさんとシラユリ様も同行する事になり、私の魔道具で転移。
アキナさんが地上の様子を知らないのだから当然だね。
トゥルーグラス島に転移して港に移動すると、すでに各島の船が入港していた。
そのまま港で話し合いになるらしく、集まった各島の代表が、私達の見守る中話し合い。
ストレンジリンクからはライオン獣人の男性が数名、スケイルアイランドからはトカゲ獣人の女性数名。
内容としては、小型船が有利すぎて大型船が不利すぎるっていう、見たまんまの意見。
スケイルアイランド側はある程度善戦はしたからか、負けたのが悔しくはあるけど不満はないそう。
「ルールはこちらが決めていいというものでしたよね?魔砲そのものもすべて規格は同じです」
「そこだ。おかしいだろ! こっちのは当たらねぇのにそっちのはバンバン当たるんだぞ?」
「クジで決めたのに。それは言いがかりだと思うのだけど?ましてや一番先に選んだのは貴方達でしょう」
「スケイルアイランドはどっちの味方だ!」
「どっちも何も、事実を言っているだけです」
「なんだと!? …よし、ならうちとスケイルアイランドで勝負だ!」
「良いですとも」
「あ、あのー、うちは…」
「正式な挑戦に関してはトゥルーグラスが勝利したのだから、審判をお願いします」
「そうだな!」
なんだこれ…。
目的が変わってしまってないか? (まぁまぁ)
私達としては本来の目的が果たせたからいいか。 (うん)
ストレンジリンクは、未だ魔砲に不正があったのでは?とか言うから、スケイルアイランド側のはからいで、トゥルーグラスの船に積んでいた黄色の魔砲をストレンジリンクの大型船に。
大型船に積んでいた赤い魔砲をスケイルアイランドの中型船に積みなおし。
アキナさんや、先代様ご夫婦は成り行きを見守るだけで口は出さず。
そんな中で私が口を出せるわけもなく…。
審判をするならと、トゥルーグラス側の偉いさん数名と、ファリスをドラツーへご案内。
びっくりしてるのは諦めてファリスに丸投げする。
私はコクピットへ行ってティーと打ち合わせ。
「船内放送で内容をみんなに伝えてもらえる?」
「らじゃー! これで納得するかな?」
「どうだろうね。アキナさん達も呆れてたから、最悪口出しする事になるかもね」
「海戦の意味…」
「まぁ本来の目的は果たせたわけだし」
「あ、そっか!」
交易を始める時に、元首国となるのがトゥルーグラスだと不安だからっていわれて始まったもので、それ自体は勝利して終わったのだから問題はない。
これ以降はただの延長戦というか、本来やらなくてもいいものだし。
ストレンジリンク側も、納得すれば黙るでしょう。 (だといいね)
…ね。
ティーの船内放送で説明がされて、軽い昼食を頂いてる間に魔砲の積み替え等が終わり。
審判をするトゥルーグラスの小型船が青い魔法を上空に打ち上げた。
それを合図に海戦の延長戦が始まる。
「全く。うちの王女が発案した魔道具に不正があるとかいいだしてさー」
「許せませんね。お嬢様はそのような不正は決してされません!」
アキナさんから話し合いの様子を聞いた皆さんはご立腹で…。 (ピナさんの意見がみんなの答え)
信用があるのは有り難いけど、なんだかくすぐったい。
大型船対中型船の戦いはどうなるんだろう。
先代様達のお話から察するに、中型船を使うスケイルアイランドが有利そうだけど…。 (風が強くなってきたの)
みたいだね。帆が大きく膨らんでる。 (次回、海戦後半!)




