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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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海戦 1



目が覚め、ドラツーの窓を開けるとまだ外は暗い。

日の出から開戦ならいい時間かと思い、着替えをしてたらファリスからの転移通知。


「早朝からすみません、日の出と共に始まりますからお伝えにと…」

「わざわざありがとうね。日の出まであと一時間ってとこかな」

「それくらいでしょうか…」

私達の話し声で、うちの子たちもちらほらと起き出してるし、全員起こさなきゃな。 (任せて!)

お願いね。


“日の出まであと一時間となりました。海戦が始まります! 皆様カメプロの前にお集まりください”

ティーの船内放送のおかげでうちの子たちもしっかりと目覚め…って、寝ぼけてフラフラしてる子もいるけど、仕方ないか。

「未亜、小さい子達の事任せるからね」

「わかったよお姉ちゃん。みんなの朝ごはんはどうしよう?手持ちから出す?」

「メイドさんたちが用意してくれるって言ってたから、後でこっちにもってくるよ」

未亜は寝ぼけてるリズを抱いてくれて、シエルの事も見てくれてるから任せちゃおう。

リアはまだ寝ぼけてるし、シルフィー様は眠そうなアルフィーの面倒を見てるからな。


「キャンディ、ノア。私はここにずっとはいられないだろうから、任せるね?」

「大丈夫よ〜。それでも何かあるなら対処するなり、ますたぁに知らせるわ〜」

「お任せを! マスターはお役目を果たしてください!」

本当、頼もしいね。



メインホールへ行き、手伝いが必要そうな場所を探すも、プロのメイドさんが何人もいるわけで…。

当然私の出番などなく。

うちの家族への朝食もピナさんが運んでくれるそうだし…。


このまま部屋に戻るのも流石にだめだよね。挨拶くらいしないと。 (船長だし)

まぁそうなるのか。


どうしようかと思案していたらアリアさんを連れた王妃様が声をかけてくれた。

「おはようアスカちゃん、ここで一緒に見ましょう?」

お二人に挨拶し、誘われるがままソファーへ。

「そうじゃな、それがいい!」

私の隣には話を聞いていた夕波陛下がちゃっかり陣取る。 

何もされないならいいけどね。


アキナさんをはじめ、各国のトップもメインホールで観戦するらしく大集合。

朝食も皆さんと頂きながら、開戦を待つ。


ティーの映してくれている映像は日の出を捉え、各島の船が錨を上げるのもみえる。

まず港を滑り出たのはトゥルーグラスの小型船。

小さい船に積まれた魔砲は黄色。流石の機動力でまっすぐ戦域に向かう。


肉食系獣人の島…。こちらはストレンジリンクという名前らしい。

船は一番大型の帆船だけど、数は少なく三隻。トゥルーグラスのおよそ十分の一程。

使う魔砲は赤。


最後が水陸両用な獣人。 こちらの島はスケイルアイランド。

映像を見る限り、トカゲ系の獣人さんが多い。

こちらの船は中型船で、十数隻ほどが出港した。

魔砲は青の光が飛ぶ。



港を出るか出ないかの位置で、いきなり遠距離からストレンジリンクの大型船が魔砲を発射。

砲口から射出された赤い光は、当然まだ遠い相手の船へ届くわけもなく海に落ちる。

今回、各国の使う船そのものには差があるけど、使用する魔砲は皆同じ。

違うのは光の色だけで、射程や消費魔力も変わらないから…。


恐らくは射程を測るための試射だろうとは思う。

飛距離に関しては伝えてあるし、陸で試し撃ち等は自由にしてる筈だけど、実際に海で撃つのとは感覚が違うんだろう。

数発くらいなら魔力の少ない獣人さんでも再装填も可能だからな。



「アスカちゃん、あれはやっぱりステッキの規模が大きい版だと思えばいい?」

「はい、アキナさんの言うとおりです。違いは魔力消費が元の魔砲基準になっているので、かなりの魔力を必要とするって所でしょうか」

「なるほどねー。 あっ、小型船がそろそろ接敵するね」

トゥルーグラスの船が機動力を活かし、漸く戦域に到達した中型船団に接近、取り囲む。

数発撃った弾はどれも帆柱に直撃し、失速後停止。


停止した船は帆を畳んで戦線離脱。

本来なら魔砲くらいは使えるのだろうけど、沈めるまで攻撃する実戦とは違うから…。


そうこうしているうちに、大型船も戦域に到着。

3隻それぞれの魔砲が放たれて、赤い光が雨のように小型船に降り注ぐ。

当然何隻かは直撃し、航行停止。

次装填までの間に回り込んだ小型船が舵や帆柱へ攻撃していく。


あくまでも風頼りで動く船は、今日のような風の少ない静かな海では速度が出ない。

そうなると小回りのきく船が有利になるわけで…。

大型船団はあっという間に3隻とも動きを止めた。

悔しそうな猛獣系の獣人さん達がカメプロを通してよく見える。


これは私が思った以上に小型船が有利だったなぁ。

一斉砲撃をかなりの数の小型船がくぐり抜けたから。

船の横腹から魔砲を出す形の大型船は、魔砲の向きを変えられる範囲に限りがあるからだろう。

船の左右それぞれにずらっと配置されていたとしてもだ。

小型船なら撃ちたい方向に船を向けるか、もっと言ったら魔砲を持ち上げて直接相手に向けるだけでいいもの。

砲手が角度を微調整する程度の大型船とは自由度が違う。


「やっぱり大きな的はあっという間じゃな」

「そうね。かつての海戦の時も、大型船はいい的になってたわ」

「ブレス当てるのも楽だったからな」

夕波陛下と先代様ご夫婦たちは昔の海戦と比べてるようで、船のサイズによるメリットやデメリットを説明してくれてる。

実際の戦闘では、ある程度の機動力と頑丈さのある中型船が強かったらしい。

魔砲や魔法のある世界ならでは、なのかも。


確かに人魚達が住処にしていたのはかなり大きな沈没船だった。それも何隻も…。

だからこそ積まれていたものも多かった訳だし。 (引き取ったお宝?)

そうそう。ハルナさんが展示してくれてる物だね。




「小型船はだめなのかしら?」

「ぶつけられたら沈んでおしまいよ。接舷して乗り込んでの戦闘もできないし。今回はそういった無茶をしないから。まぁどちらにしてもこの風ではそれも難しかったとは思うわ」

「風を起こせる魔道士もドラゴンもいないようだしな」

「小型船は夜闇に紛れて船に忍び込むときに使うとか、それくらいじゃろうな」

なるほどなぁ…。


そんな話をしてる間にも、中型船と小型船の撃ち合いは続き…。

何隻か航行停止。

停止した船が邪魔になり、動きにくくなった中型船の間を縫うように小型船が動き回る。


あーもうこれは…。 (終わりそう)

だね。


あまりにもあっけなかったけど良かったんだろうか。


















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