資料って大事だよね
王妃様からの返事を確認するためにも、魔道具の設置してあるギルドマスターの執務室へ向かう。
今回もユウキと美亜ちゃんはお留守番。
どんな魔道具なんだろう?気になる。
お手紙が転送されるとかならわざわざ魔道具のある所に私が行かなくてもいいはずだし…。
「ここが私の部屋だ、少々散らかっているが気にしないでくれ」
「は、はい」
一抹の不安が…。
扉を開けた室内は書棚に仕舞われず、本や書類が散らばり大変なことになっていた。
「足の踏み場が…」
「いや、すまん。さっき魔獣の情報を探すのに慌てていてな」
あぁ〜。 だからってこれは…
「片付けてもいいですか?書類とか踏んでしまいそうなので」
「いや、申し訳ない。落ち着いたら職員と整理するから適当に避けてくれ」
「そうですか」
魔法ですぐ終わるけど…。
「もしかしてアスカ様、魔法ですぐに終わったりしますか?」
さすがアリアさん、わかってる。
「ですね、希望があればそれで纏めたりも出来ますよ」
「…アスカさんの規格外は体感したが、驚いてばかりだよ。ならば頼めるか?」
規格外って…。これは魔王時代に先代以前の残した膨大な資料を整理する過程で作ったからなぁ。
「何か希望の並びとか、纏め方あります?」
「魔獣やモンスターの系統ごとに纏めて、あいうえお順にできたらありがたい」
「わかりました」
あいうえお順って…多分翻訳スキルかなにか魔法が働いてるのかな。 (ドヤァ)
ん?なにか聞こえたような…。
「どうかしたか?」
「あ、いえ。では終わらせますね」
部屋に魔力を拡散…
本や書類の読み取り。種類ごとに纏めて。 …あれ?この魔獣って…。これ関連だけ別にしておこう。
よしっ。あいうえお順に書棚に収納〜。
イメージ通りに本や書類が収納されていく。
これ覚えてから家でも片付けや、洗濯物仕舞うのも楽なんだよね。
「これは壮観だな。本が勝手に書棚に戻っていくとか…」
「はい。少し楽しくなりますね」
「ははっ、城勤めの騎士様もアスカさんの前では童心に帰るようだな」
二人が楽しそうで何よりだよ。魔法は便利で楽しいものであってほしいね。
「終わりました」
「すまないな、手数をかけた」
「あと、コレなんですが…」
「うん?魔獣の資料か…これがどうしたのだ?」
確証はないんだけど、どうも引っかかる。
「この魔獣の資料、恐らくこっちの手記も同じ魔獣のものだと思うのですが、幾つか特徴が当てはまるので」
「見せてくれ」
数冊の本と何枚かの手書きの資料を手渡す。
「ふむ…確かに言われてみれば。いや、まさかこれは!」
「はい、恐らくは。ただ今までに人が襲われたっていう記述はないんです」
「そうだな、家畜や小型の魔獣が狙われるようだ」
そうなんだよね。人里に出てくることが少なく、家畜が狙われた時も人が来たら逃げたみたいだし。
「ただ、襲われた家畜の状態が…」
「ああ、よく似ているな。怪我の割に出血が少なく、助かるかもと獣医が治癒を使ったが効かず、か」
そのまま数日ほどは意識のないまま生きていたらしい。
「人を襲った記録がないから除外していたが…。いや、助かった」
「いえ、たまたま見つけただけなので」
「ほとんど手がかりが無かったからな。感謝する。 では手紙を送らなくてはな」
あっ! そうだよ。本題それだよ。
「では、お願いします」
「うむ、確か広げた書類にこれを当てればいい、だったな」
デスクの上にあるライトだと思ってたのが魔道具らしい。
私の書いた手紙に薄赤い光が照らされる。
やっぱりデスクライトじゃん!
「これで城に書類の内容が届くらしいのだが…本当に届いてるのかわからんな」
確かに。
お手紙の内容は大まかに言うと、未確認の魔獣がでて、冒険者が大怪我した事。
仲間を逃がすために一人残った冒険者の救助に向かうのに、ユウキが参加しても大丈夫か?
そんな感じだね。
「ライトが消えてしまいましたね」
アリアさんも首を傾げてる。
「消えたら書類はどかす、だったな。アスカさん、これはお返しする」
「はい」
王妃様へ宛てた手紙を受け取る。
しばらくして…
「デスクが光りだしましたよ」
アリアさんの声に私もギルドマスターも慌ててデスクを見る。
「おお、向こうの手紙がこっちに映し出されてるのか」
「えっと…」
“アスカちゃんが行くっていうのかと思ったわ〜。
それは流石に問題があるけど、今ならまだユウキ君ならぎりぎり?
すでに準国賓扱いになってるからあまり推奨はできないのだけど、状況が状況だからね。
手助けしてもらいたいのも本音なの〜。
ただし、ギルド証を発行して一人の冒険者としての参加ってことにしてね。
周りには普通の冒険者ってことで。
前例を作っちゃうと色々問題があるからこれが限界。
アスカちゃん達には迷惑かけちゃうけどお願いできるかしら?
城からも何人か向かわせたから、タニアちゃんの采配で使ってあげて。
融通きかなくてごめんなさいね。
アスカちゃん、うちの冒険者を救ってくれてありがとう。
夜にまた詳しい話を聞かせてね”
と言う事らしい。
やっぱり私が治療した事の情報は伝わってたね。
アリアさんがお城へ使いでも出してるのかな? それにしては早い気もするけど…。
「ふむ、ならば私はユウキ君のギルド証発行の手続きをしてくる。普通の冒険者と言うなら試験が必要だしな」
うわ、このギルドマスター、ニヤ〜って笑ったよ。
絶対自分が試験で戦う気だ…。
「ユウキ君へはアスカさんから伝えてくれるか?試験の準備でき次第、人をやるから待っていてくれ」
「わかりました、じゃあ部屋に戻りますね」
「うむ、城からの救援は騎士様に対応を任せてもいいだろうか?」
お城勤めならアリアさんの知り合いかもしれないね。
「はっ、任されました。アスカ様、暫くお傍を離れることをお許しください」
「はい。大丈夫です、部屋で待ってますね」
「はっ、では」
アリアさんはギルドの外で待つみたい。
私は部屋に戻りますか。ユウキや未亜ちゃんに説明しなきゃだし。




