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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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身バレ



「今日は新鮮な良い魚が入ったのですが、魚はどうしても煮る、焼く、と調理法が限られてしまいまして」

「生食もありますよね?」

港町で王妃様に連れて行ってもらったお店でお刺身の盛り合わせとかあったし。

港で上がった魚に寄生虫対策をしっかりしていたのも見たから間違いない。

雷魔法でバリバリって…所謂パルス殺虫みたいなのをやってた。



「アルフィー様はお好きなのですが、シルフィー様は生は苦手とされていまして…」

「そうですか…では、避けなければいけませんね」

嫌いなものを無理に食べさせるのはダメ。絶対! (ママの個人的な希望です)

厨房にあるのはマグロのような大きな魚と、以前ドラゴライナ王国で購入し、蒲焼きにして好評だった魚。


「先ずは生の場合で飾り付けと、アレンジをしてみますから試食してみてください」

赤身の刺し身は薔薇のように飾ったり、タタキ風にしてみた。

港の食堂でみかけた醤油みたいなのも厨房にあるから、美味しく頂けるはず。

「キレイですね…このように飾る方法があったとは」

「ここで魔法は使っても平気ですか?」

「ええ、私達も調理に使用しますから」

なら大丈夫ね。基本的な調理に使うくらいは魔法を行使してもバレたりはしないでしょう。


トロの様な脂のノッた部位を火の魔法で炙って、塩とレモン汁で出してみた。

「こちらも試してみてください。表面だけ炙って香ばしくしてあります」

「……刺し身のようですが、炙ったことで旨味が増しましたね。これは…画期的です!」

「爽やかな酸味とも合いますね。美味しいです!」

「でも、これは食事される方の目の前で炙るのが一番なので、お出しするのは難しいかもしれませんね…すみません」

「キサラさんがお持ちした時に目の前で調理して差し上げては?きっと喜ばれます」

「大丈夫なのですか?王女様の前で魔法を使用しても…」

「問題ないですよ。むしろ喜ばれるかと思います」

「アルフィー様は魔法を見られると喜ばれますし」

じゃあそれでいくか。


「完全に火を通してしまうのでしたら、そちらは揚げてみましょう」

「揚げるですか…?」

「ええ。下味をつけてから、衣を着けて揚げるのですが、揚げる時間次第で半生にもできますし」

説明しながらカツのように衣を付けての半生と、しっかり火が通る様に一口サイズとでわけて調理。


揚がったものをザク切りにしてだしたら、お二人に好評だった。

完全に火を通したほうは少しパサつくから微妙な反応…。

「火を通し切る方はソースに一手間加えましょうか」

ゆで卵を使い、タルタルソースを作成。

マヨネーズはとりあえず手持ちを使ったけど、作り方もメモしておく。


「これは…!」

「他にも使えそうですね」

さすが料理人。マヨネーズの可能性に気がつくとは。

「こちらは脂身の少ない部位に乗せて、炙りに利用しても美味しいと思います」

「やってみます!」

一度見ただけで火加減完璧。さすがプロ。


最後は蒲焼き。

タレは多めに作ってしっかり浸しながら直火焼き。

香ばしい香りがすごいわ。 (もーげんかい!! 食べたいの…)

夕食の時、シルフィー様の部屋に来たら? (その手があった!)

普段から時々お邪魔してるんでしょ? (うん! アルフィー様の遊び相手とか)

ならいいでしょう。持っていくよ、三人分。 (やた!!)


「すごくいい香りがするのですが…」

「おしろじゅうにとってもいいかおりがしてます!」

シルフィーとアルフィーが厨房に来てしまったね…。


「お二人の夕食にお持ちしますから」

「楽しみです!」

「……アスカ?」

ティア!?どうしてここに。王妃様のところにいたんじゃ… (料理に気を取られてて見逃したっ!)

それは仕方ないね。


「私食べたことあるから知ってるよそれ!! この香りは間違いないよー。なんで変装してるの?」

「えーっと…これは教えていただいたレシピで」

「それで誤魔化されると思う?」

「ティア、こちらへ!」

「ちょっと、シルフィー!?私は聞きたいことがあるのにー!」

シルフィーに連れて行かれるティア。

ごめんよ…。

「シルフィーねーさま、まってくださいー」


「…アスカ?どこかで聞いたお名前のような…」

「ええ、どこでしたっけ…」

「人違いですから! それより私にもなにか教えて下さい」

「え? ええ。普段作っているもので良ければ…」

「是非お願いします」

お二人から教わったのは魚の煮付けや、パイ包みなど、私の知らないもので、すごく勉強になった。


「とても美味しいです…煮付けってこんなに味が染みてホロホロになるんですね」

「一度冷ますと、冷めていくときによく染みますよ」

「あれだけの腕を見せられた後に美味しいと言ってもらえるとこちらも自信がつくわ」

「私はレパートリーが少なくて…本当にありがとうございます。家族にまた美味しいものを作ってあげられそうです」

帰ったらうちの子達に作ってあげよう。



夕食用に、お互い教え合いながら調理。

ネネアさんも合流して、手伝ってくれている。

今夜は王族の方が全員食堂に集まるそうなので、炙りもその場で行う。

お二人もすぐに炙りはマスターされてるから、今後、他のものでも試してみると張り切ってた。


食事のセッティングは当然ネネアさんもいてくれるから安心。

「そろそろお食事を運びますが…ものすごくいい香りですね?」

「仕上げは食堂でしますから、ネネアも手伝って!!」

「は、はい!」

大忙しの厨房担当のお二人の気迫にネネアさんも慌ててカートの準備。

「私もお手伝いします」

「では、カトラリーを出してください」

「はい!」

「それと、今日はティー様もアルフィー様と一緒に居られますから」

「お客様も居られるときいていますし、多めに用意していますから大丈夫です! ティー様が夕食時に居られるのは珍しいですね?」

「お昼はよく一緒に遊んでおられますからね」

「アルフィー様と本当に仲がよろしいですから」

へぇー。ありがとねティー。 (…怒らないの?)

どうして?怒る理由もないし、アルフィーは喜んでるんでしょ? (うん、遊ぼーって迎えに来てくれるの)

ならいいじゃない。王妃様達も何も言わないのに、私が咎めることなんてないよ。 (よかったのー)

私そんなに叱ってる…? (ううん。たまーに?)

悪い事をした時だけでしょう。 (えへへ…)

すぐに持っていくからいい子に待っててね。 (はーい!)


カート数台で料理を運び込んだ食堂には、ティーだけじゃなく王子夫婦やティア、アキナさんとスノウベルさんまでいて、一瞬頭が真っ白になった。

そういえば来てると言ってたね…。お客様ってアキナさん達か。


手分けしてテーブルに並べて、炙りも厨房担当のお二人が始めてる。

「まほうだー!」

「そうね。 珍しいことしてるわね?」

そう言いながら王妃様は私を見てくる。 作ったのが私だってバレてるなぁ…。


「今日、城中にしていた良い香りはこれか!」

「王様、それと違うよー。 あのいい香りはあっちの」

ティアは私を少し睨んだあと、蒲焼きを指差す。


「そちらも仕上げに炙りますからお待ちくださいね」

「キサラさんも手伝ってください! 量が多いのでお願いします」

「はいっ直ぐに!」

仕上げに炙りながらタレにつけるとすごい香りが。 (わくわく!)


「へぇ〜これは美味しそうだね!」

「…でも、この香り私知ってる。何処かで…?」

スノウベルさんはどこで知ったのだろう? (ドラゴライナではお隣さんだし)

香りが流れていってたのか。


飾り付けも好評だし、トロの炙りはシルフィーも挑戦して、美味しいと言ってもらえた。

半生だけど平気だったらしい。

「こちらも大きい方は半生ですから、苦手な方は小さく揚げた方を、こちらのソースでお召し上がりください」

タルタルソースもたくさん作ったからね! (んっまぁ…さすがママ)

「これすごくおいしい! これだけでたべれます!」

マヨネーズやタルタルソースはカロリー高いから気をつけないとな。

厨房担当のお二人にもそれは伝えてあるから、たまにしか出ないと思う。



視線を感じて振り向くとアキナさんとスノウベルさん。

お二人で内緒話ししてるから、あれはバレてるな…。

ティアは美味しいものが食べられてるからか、そっちに集中してるけど。


「ここ迄していたら今更よね?アスカちゃん」

王妃様!?

「やっぱり!! 何してるのうちの王女は!」

「…王女はメイドしてる?」

「そうなんだけど、私は理由を聞きたいなー?」

王妃様、何もここでバラさなくても…。 (セクハラで王女二人に叱られたから)

その仕返し!?酷い…。

 

結局みんなの前で変装を解く羽目になり、食堂は大騒ぎに。

「救国の英雄様…」

「あのハンバーグの開発者…」

ハンバーグは私のってわけでは。 (ママオリジナルなのに?)

そうだけど、元々あるものだからなぁ。


「私も説明聞きたいんだけどー。ティーからは大切な用事だって聞いてたのに!」

なんて説明したの? (ママはどうしても外せない大切な用事ができたから帰れないって)

そう…。ありがとね。


いい笑顔の王妃様には怒っていいよね? 私、被害者なのに…。











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