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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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指名



新人なのに、王族専属のメイドにさせられた私は、ネネアさんと使用人エリアに戻り頭を抱えてる。

「どうしましょう…」

「王妃様と王女様のご指名ですから、私達メイドでは何もできません」

「では、王族専属になるとどのようなスキルが必要になるのか教えて下さい」

「そうですね…お茶やお食事の用意、お風呂でのお世話…後は身を呈してお守りできるだけの武術の嗜みでしょうか」

お茶やお菓子はまだいいとして、お風呂はわかんないな…。


「キサラさんは料理の腕も問題ありませんし、武術に関しても私がお教えするような事はないと思いますが…」

「お風呂でのお世話に関してはわからないのですが…シャンプーとかですか?」

「ええ。着替えのお手伝いなどもですね」

ハードル高っか!!


「…私で練習しましょうか」

「お願いします…」

それはそれで緊張するけど、大丈夫かな。



使用人用のお風呂で一通り教わったのだけど、同性とはいえ本当にハードルが高い。

「極力お相手を見ないようにしなければなりませんから、気をつけてください」

「わかりました…」

いっそ目を閉じてやったほうがいいくらいか。 (うっかりちゃっかりにならない?)

ならない! 魔力で感知できるし大丈夫。 (つまんねーの)

ネネアさんで練習しても問題なくできたからね。

これならイケる。 (はたして…)



明日からに備えて、早めに夕食をとって休もうとネネアさんに言われ、一緒に食堂へ。

賄いと思えないくらい豪華な夕食を食べながら、少し世間話を…

「ネネアさんはなぜメイドさんに?戦闘もかなりの腕ですよね?」

「姉が元近衛騎士なのはご存知ですよね?」

「はい。お会いしましたし、戦闘を挑まれて刃も交えました」

「姉は相変わらずですね…。 私は姉のような戦闘センスもありません。かと言って王宮魔術師になれるほど魔法の腕もないのです」

そうだろうか?かなりの魔力量だし、あれだけ氷の槍を飛ばせるのならこちらでは相当だと思うけど。


「せめて王族の方の盾になれるようなメイドになろうと、王族専属の座を目指していたのですが、このような形でそれが叶うとは思いもしませんでした…」

「もしかしてユリネさんって王族専属ですか?」

「ええ。普段のお優しい姿からはそうは見えないかもしれませんが、あの方はかなりの戦闘センスの持ち主です」

そういえば、狩猟大会でも当たり前に戦ってたな…。

ステータスが上がったからかと思ってたけど、それだけじゃなかったのね。 (ママも押し倒してたし)

あったねそんな事も。 隠してたのか〜。でも、それも仕方ないか。

いざって時盾になるのなら、普段は普通のメイドさんを演じているだろうし。 (能ある鷹は爪を隠す?)

まさにそうね。


「ここにいましたかネネア。王妃様から伺いました。専属になったと…まさか新人まで指名されたとはびっくりしましたが…」

この声! (キター!)

「ユリネ様! お疲れ様です」

「お疲れ様です」

「貴女が新人ですか?」

「…はい。キサラと申します。よろしくお願い致します」

バレませんようにバレませんように…。


「ネネア、どのような理由があろうと、指名された以上覆る事はありませんが、新人のミスは教育係の責任です。心するように」

「はいっ!」

「…新人のキサラさん。貴女も精一杯頑張ってください。何かあれば私も力になりますから」

「ありがとうございます」

「……?どこかで会いましたか?」

「い、いえっ!!」

「そうですか? 何故か知らない人の気がしないのですが…」

お願い、気のせいって事にしといて!


「そ、それよりユリネ様、私に今一度心構えをご教授ください!」

「貴女に教えることはもう何もないですよ。大丈夫です。自信を持っていつもどおり仕事をこなせばいいのです」

「は、はいっ! ありがとうございます」

ユリネさんってやっぱりすごいメイドさんだよね。 (まぁ…)


食事のトレーを持ってきたユリネさんは向かいの席に座るから、私は気が気じゃない。

「久しぶりにお会いできたのに、いつの間にやらお帰りになられたのか、ほとんどお話もできませんでした…」

「ユリネ様の想い人ですか?」

「ええ。お忙しい方なのは理解していますし、私も仕事がありますから仕方がないのですが…」

…ごめんね。ユリネさん…。


「アリア様は何か仰られてませんか?」

「はい。あの子は昔からそういった事を口に出す子ではありませんから」

「近衛騎士様ですものね…」

「姉夫婦には王妃様からお手紙が出されたそうなのですが、ユリネ様の方は?」

「うちも同じですよ。両親は大喜びしてました。この国で救国の英雄といえば知らぬ者はいませんし」

「…ですよね」

目の前で自分の話をされてる気まずさよ…。 (耐えるのだー)

頑張る…。


「キサラさん、貴女恋人は?」

「…います。大切な人が」 (目の前にな!!)

……。

「そうですか。言っておきますが、アスカ様に惚れるのだけは許しませんから!」

「はい…」

自分だからありえないって…。 (ぶふっ、それウケる!)



「ネネアもですからね!」

「畏れ多くてとても…。 ユリネ様は今お幸せですか?」

「ええ、それはもう。身分も違いますし、とても相手になどされないと思っていましたから」

「しかし、次期国王陛下と同じ方を…というのは色々と複雑ですね…」

「お相手がアスカ様ですし、他にもドラゴンや、現職の皇帝陛下もみえますから、もう私も深く考えるのをやめました。自分の想いさえしっかりしていれば問題はないのですよ」

自分の想い…か…。


「二人は明日から慣れない仕事なのです、早めに休んで備えなさい」

「はい、ありがとうございます」

「お先に失礼します…」

なんとか乗り切った…。


食器トレーを厨房に返し、食堂を出てやっと一息。

ネネアさんとも別れて個室へ戻ると、何故かアルフィーが。

「おねーさま、きちゃいました!」

「もう夜も遅いのにダメじゃない。王妃様が心配するよ?」

「つれていってください!」

「じゃあ行こうか」

そう言ったのだけど見上げて動かないアルフィー。

察した私は抱き上げる。 (ずるいー!)

お部屋までだから。 (むー)

「ふふ〜。さすがおねーさま」


嬉しそうに今日の事とか話してくれるアルフィーを抱いて、王女様エリアへ。

「アルフィー! いないと思ったらこの子は!」

「せんぞくだからいいのです」

「アスカ様も叱ってください!」

「これくらいなら別に…」

「甘やかしてはいけません!」

まだアルフィーは幼いんだし、これくらいのわがまま許されるでしょう。

人間ならまだ一歳にも満たなくて、話さえできないのに…。 (そう言われたら確かに!)


「シルフィーはアルフィーくらいの年齢の時何してた?」

「え?そうですね… って…そんなの覚えていません!」

「アルフィーってしっかりしてるし、お話もできる賢い子だけど、まだ幼いんだよ。甘えたいときもあると思うよ?」

「…はい。つい忘れがちですがアスカ様の仰る通りですね…」

「もちろん悪いことをしたり、危ない事をしそうなら止めて叱るなりしなきゃいけないけどね」

「ええ…」

「シルフィーねーさまもあまえたいのですね!」

「私は…! はい…。せっかく近くに居られるのに一緒にいられる時間が限られてますから」

「それはごめんね…」

「ですから、専属なのです! 明日からが楽しみです」

「たのしみー」

私は不安しかないけど…大丈夫かな。








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