その助け船は乗っていいものか
助っ人ってだれ? (来てのお楽しみ!)
探索も使ってないからわからないのに…。 (魔法使わない縛りなんだから使うの禁止!)
えー。わかったよ…。
氷の槍を躱し続けていたら、訓練場に駆け込んできた小さな影。
「アルフィー様! 危のうございます! すぐに訓練場の外へ!」
「メイドさんなにしてるのー?くんれん?」
「アルフィー、ここはまだ入ってはだめだとお母様に言われているでしょう!」
「だってーおねーさまが」
「お姉様…? アルフィーは何を…。アルフィーがそう呼ぶのは一人だけの筈ですが」
王女様二人かぁ…。 (これで大丈夫そう!)
果てしてそうだろうか?
「お二人ともお逃げください! 王族を狙う間者です!!」
ネネアさんは二人を庇うように移動して、更に苛烈になる攻撃。
やむを得ず魔法防壁でガード。
「おねーさま! くんれんならアルフィーにもおしえてほしいのです!」
「…まさか本当にアスカ様!?」
「はい…すみません。ちょっと事情がありまして…」
「まさか王女様方にまで取り入っているとは! これは…刺し違えてもここで確実に仕留めます!」
そう言って更に魔法を放とうとしたネネアさんは、シルフィーに思いっきり頭をはたかれて、体制を崩す。
「シルフィー様!? 何をなさるのです!」
「それはこちらのセリフです! 私の大切なフィアンセを仕留めるですって?アスカ様にネネアが敵うとは思いませんが! 言うだけでも許せません!」
「は、はい!? シルフィー様のフィアンセ…? その方は白銀の髪の美しい方ですよね?」
「おねーさまでまちがいないよ?アルフィーはわかります!」
あの子はどこで見破ってるのだろうか…。 (子供のカン)
…それは敵わないわ。
「アスカ様、変装を解いて頂けますか?」
「はい…」
シルフィー様に、強かにはたかれたネネアさんからの攻撃も止んでるし、大丈夫よね。
髪の色を戻し、化粧のリングも外す。
「なっ…」
「やっぱりおねーさま!」
「よく見破ったね?」
「アルフィーは、すぐにわかりました! シルフィーねーさまとはちがうから」
「わ、私だってわかってました!」
「うそだー」
「…………」
ネネアさんはそれはもう真っ青になって固まった。
「アスカ様、なぜメイドの真似事を?」
「経験の無い事を体験してみたくて…」
「…後で詳しく話してくださいね?」
シルフィーから有無を言わせない圧が…。 (やむなし)
「そんな…私は救国の英雄に刃を向けたと? 姪の愛する人に?」
「ええ! そして私のフィアンセでもあります!」
「ドラゴライナおうこくのおうじょさまでもあるよー」
「……」
ネネアさんは何処から出したのか、ナイフを自身の喉に突き立てようとしたから、慌てて魔法防壁で弾いた。
「バカな真似はやめなさい! 何をしているのです!」
「このような事態、他に私はどう償えばよろしいのですか…。 姉や姪に累が及ばないようにするにはこれしか…」
「元はといえば私の責任ですから。今日一日、色々と教えて下さりありがとうございました」
「……しかし!」
「また早とちりでもしたのでしょう?この程度でアスカ様は怒ったりしません!」
「ええ。むしろ誤解を招く様なことをしてしまい、申し訳ありませんでした。王妃様にお願いしたのも私なんです」
「ネネアへの罰は、先程私が叩いたので充分です。もしそれでもネネアが納得できないのなら、これからしっかりアスカ様に仕えなさい。私のフィアンセなのですから」
「はい…。それはもう誠心誠意お仕えさせて頂きます」
大丈夫かそれ…。 (専属メイドさんが増えた)
やめなさいって。
皆で例の客間へ戻り、事情の説明…。
「女性としての経験を積むためにメイドを、ですか…」
「おねーさまはじゅうぶんすごいです!」
「ありがとね」
膝に乗ってそう言ってくれるアルフィーを撫ぜる。
「アスカ様は何か得られるものはありましたか?」
「うん。実際、細かい気配りの方法や、今迄気が付かなかった事に気がつけたから、いい経験になったよ。ネネアさんから丁寧に教えてもらえたし」
「とんでもない…失礼はありませんでしたか?」
「ありませんでした。むしろもっと色々と教えていただきたいくらいです」
「それは堪忍してくださいませ…」
残念…。
「あら?訓練場で騒ぎがあったと聞いたからまさかと思ったけど、もうバレてしまったの?」
ノックもなく部屋に来た入ってきた王妃様…。いたずらっぽく笑ってるって事は想定内か。
「何故私を教育係に選ばれたのですか?」
「姪っ子の想い人に会いたいかな?と思ってね。人となりを見れたら姪っ子を任せるにも安心できるでしょう?」
「それはもう…身を持って体感致しました」
なーんか王妃様に遊ばれた気がする…。でも、メイドさんとしての経験はいいものだった。
「ネネアにはもうしばらく教育係をお願いするから、しっかり仕事をこなしなさいね」
「はい!? しかし…」
「拒否権はありません!」
「了解いたしました…」
あら、まだ続けていいのね。てっきりおしまいかと…。 (ママ、ティアが夕方にはそっちに帰るから気をつけてね)
わかった。ありがとね。
さて、これから私はメイドとして上手く立ち回れるのか…。
シルフィー達にもばれてるし、ティアも戻ってくるとなると、不安しかない。 (がんばえー)
善処するよ…。
「アスカ様、ぜひ私の専属メイドに!」
「おねーさまずるいです!」
「ネネアを止めたのは私なのですから。いいですよね?」
「それならさきにみやぶったのはアルフィーです!」
やっぱりこうなったよ! (あははっ)
何笑ってんのよ…。
「それなら私の専属でもいいわよね?」
「お母様!?」
「えー!」
王妃様まで何を…。これ、私どうなるの? (楽しみだー見逃せねぇ!!)
もう!!




