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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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アスカ修行する



「着替えはこちらになります。お城にお仕えする私達は、常に身だしなみにも気を使わなければなりません。毎朝チェックしますから、気をつけてくださいね」

「はい」

王妃様に紹介されたメイドのネネアさんは、見た目は少し厳しそうな、それでいて物腰は優しいお姉さんだった。


見習いのメイドでも一人一人にしっかりと個室もあり、不自由しないのは流石アクシリアス王国のお城。

「キサラさんは得意な事はありますか?」

「こういう経験は初めてなので、正直私に何ができるのかわかりません。ご迷惑をおかけします…」

お城でアスカって名前を出してしまうと髪色を変えて化粧をしていてもバレかねないと言われた。

そのための偽名。名字をモジッてキサラにした。


「構いません。できもしない事をできると見栄を張るより余程いいですから。では、明日はまず一通りの仕事をやってみましょう。その結果で見極めます」

「お願いします」

「ここはお城ですが、王族の方は皆様とてもお優しい方ばかりです。失敗しても大丈夫ですからね。私もフォローします。硬くならず、程よい緊張感が維持できるようになれるといいですね」

「頑張ります」



今日は慣れるためにと、使用人エリアの案内をしてもらった以外は、注意事項を教えてもらった程度。

それでも、慣れない事はやっぱり戸惑うし緊張する。

個室に一人になって、ようやくホッとした私は、メイド服に着替えてみた。

姿見も置いてあるから、身だしなみのチェックもしっかりとできる。

「大丈夫かな…ユリネさんの着てる感じを真似てみたから平気だよね?」

静かな部屋に独り言が響く。

こんなに静かなのはいつ以来だろうか…。

寂しくもあり、もういっそ新鮮でもある。


夜には共同のお風呂も使えるから、しっかりと身奇麗にしておく。

クリーンを使ってもいいのだけど、今回はカタチから入ろうと思い、緊急でもなければ極力魔法は使わない事にした。

お城には当然アルフィーもいるから、しっかりと魔力隠蔽してるし…。



夜もぐっすり眠り、翌朝は早めに起きてメイド服に着替え、髪もアップに纏めた。

ベッドも整えて、キレイにしておく。

朝食は食堂へ行けば食べられるみたいだけど、今日はいいや。


二度、三度と鏡でチェックしていたらノックの音。

「起きていますか?」

「はい! おはようございます」

扉を開けたネネアさんは…

「身だしなみは……大丈夫ですね。自身の部屋も整えてありますし、初日から完璧です。それを維持できるようにしましょう」

「はい」

「朝食は済ませましたか?」

「大丈夫です」

「では早速仕事ですよ」

ネネアさんに案内されて、まずは掃除から。


見習いの私は、使用人エリアで基本を学ぶ。

窓の拭き掃除から床の掃除…

「お城は調度品などがあり、こちらのエリアのように簡単ではありませんが…。貴女には教えることがないくらいですね」

「ありがとうございます」

「お掃除はオッケーです。次は厨房に行きましょう」

上手くこなせてるようで良かった…。


ここは使用人の人達の賄いを作る為だけの厨房らしい。

併設された食堂では、交代でメイドさん達が食事をしてるそう。


まずは洗い物。

普段からしてるし、難しくもないね。

「大丈夫そうですね。調理経験はありますか?」

「家族のための食事くらいなら…」

「では、何か一品作ってもらいましょうか。材料はここにあるものを好きに使っていいので、やってみてください」

そう言われて、材料の確認。

流石に見慣れないものもあるし、鑑定で成分確認だけはさせてもらったけど、調理は自力で。

魔力ドームも今回は封印。


ひき肉にトマト、玉ねぎにニンニク、チーズや卵もある。

香辛料や調味料も充実してて、色々作れそうで楽しくなってきた。

あとこれは、板パスタ?じゃあラザニアでも作ろう。

そう思い、記憶通りに手早く調理。


魔力ドームを使わない分、普段より手間と時間はかかったけど、失敗はしていない。

こちらにもいつの間にか魔道具オーブンが設置されていて驚いたけど、使い慣れてるからありがたい。

簡易モデルってことは、王妃様がグリシア王国から購入したんだろうなぁ。言ってくれたら作ったのに…。


十数分で、オーブンからいい香りが。そろそろかな…。

取り出したラザニアは程よくチーズがとけて、焦げ目もつき美味しそう。

うん、大丈夫だね。 (ごくっ…)


「………」

「完成しました」

「何者です?貴女は…」

「見習いです…」

「そうですか…。頂いても?」

「はい。お口に合うといいのですが…」

ネネアさんは丁寧な所作で一口。


「…おいひぃ…なにこれぇ…」

なんだろう、同じような反応をどこかで見たような?


味見だけかと思ったら、しっかりと完食してくれて、作った側としては嬉しい限り。

「大変美味しかったです。どこで料理を学んだのですか?」

「生まれ故郷で…」

ネットのレシピを元にアレンジしてますとは言えない。


「洗い物に、料理も問題なしと…。次は庭に行きましょうか」

ネネアさんと行ったお城の庭は、以前ハンバーグパーティをした広い場所。


「こちらは王族の方々がパーティ等を催されたりもするので広くなっております。今日は使用する予定もありませんので、少し休みましょうか」

「いいのですか?」

「もちろん予定のない時限定です。私はここを散歩するのが好きなので、一緒にどうですか?」

「お供いたします」

心地のいい気候が続くアクシリアス王国では、こうやってのんびり過ごすのもいいよなぁ。

未亜と見た黄金色に輝く穀倉地帯を思い出す。


「キサラさんはどうしてメイドになろうと?」

「理由は色々とあるのですが…自身を鍛え直すため、です」

「鍛えるですか…武人のような言い方をしますね?」

女性としての経験を積みたいとはいいにくいし…。


「しかし、今のところ非の打ち所がありませんよ?どれをとっても見習いレベルなどではありません。料理などはプロ並みと言えます」

「褒めていただいてありがとうございます」

「なにか隠してるでしょう?」

うっ…まさか初日で疑われるとは。


「王妃様の推薦ですから何かあるとは思いましたが…まぁいいでしょう。言いにくいこともありますからね」

「すみません…」

普段から細かい事に気を使い、鋭い洞察力を持つメイドさんを騙すのは無理があったか。


「貴方なら本城へ入っても問題はないでしょう。午後からはそちらで本格的な仕事にはいります」

「はい!」

使用人エリアのような心構えではダメだと、そう言われている気がして、改めて気を引き締めた。











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