ステッキの大会準備
アクシリアス王国の方はもうしばらくかかるそうなので…。
グリシア王国の週末に合わせて、みんなとお屋敷に転移。
ステッキの本格的な試合が始まると聞いて、うちの子達が黙っているはずもなく。
ただ、今回はあくまでも見学。
私は、こちらの大切な人達との時間を取るためでもある。
屋敷内の清掃をしてくれていたメイドさんに、私達が来たことを伝えてもらったら、メイド姿のストレリチア様が私に用事があると、直ぐに会いに来てくれた。
「アスカ様のご意見も聞かせてください!」
ストレリチア様がそう言ってテーブルに広げたのは、ステッキの試合を行うフィールドの図面。
「学園の生徒や、実際に学園祭で遊んだ人達からの意見も取り入れて完成させたのですが…」
「それでしたら、私よりうちの子達のが適任かと思いますよ。一番遊んでるのもあの子達なので」
「そういう事でしたら是非!」
今回、同行してるみんなにも図面を見てもらう。
「こんな平面ではわかんないわね…ここが高いの?低いの?それすらわならないわ」
確かに…。部屋の間取り図みたいなのではわかりにくいか。
都度、ストレリチア様が説明をしてくれてはいるのだけど、それでは全体の把握ができないっていうのも仕方がない。
広い庭に出て、ストレリチア様の説明と図面を元に魔力ドーム内に立体のフィールドをミニチュアで再現してみた。
「さすがだよアスカー。これならよくわかる!」
「へぇーよく出来てるわね。学園祭の時より面白そうだわ」
「私なら、ここに陣取りたいな…」
スナイパーな未亜は、早速いい場所を見つけたらしい。
「どうでしょうか…?」
「いいと思うわ。後は実際に使ってみない事にはわかならないわね」
「だねー。遊んだ人から聞いて手直ししていくしかなくないー?」
「それもそうですね。ですが、皆さんの意見を聞けて安心しました!」
明日から始まるってタイミングだし、今から手直しがあったとしても、できる事には限界があっただろう。
「ティー達は大人しいね?」
「だって! すぐに遊べないし」
「なのです…」
今回は見学だけって言ってあるしなぁ。
だから、ドラゴライナ王国のギルドで仕事をしてるユウキ達も来てない。
「…それでしたら今から少し現地を見てみますか?」
ストレリチア様のそのセリフにみんな食いつく。
最終確認もしてはあるけど、経験者に見てもらいたいからと言われては、私も反対する理由がない。
お屋敷から馬車で向かったのは、街の中心地。
よくこんないい場所が確保できたなぁと思ったら、元々は公爵家所有の土地だったらしく、それも差し押さえられて国へ返還。
ならばそれを国民みんなの娯楽のために使おうって国王様の一声で決定したらしい。
元々、贅を尽くしたパーティー等をするために広く取られていた庭園と屋敷だったらしく、庭園はフィールドに変更。
屋敷は改装して参加者の控室だったり、運営の本部にもなっているそう。
どおりで池やら林やら充実してるはずだわ。
そこに起伏をつけたり、隠れる場所とか、学園祭で調整を重ねた物を元にパワーアップしてる。
短期間でよくここまで仕上げたものだよ…。
早速うちの子たちは走り回って、実際に自前のステッキで撃ち合ってみたりと楽しそうにしてる。
「明日は観客も入りますし、ステッキの即売会も予定してます」
「観客席も結構な規模ですもんね」
「ええ! 絶対に凄い人になると、魔道具科の皆さんも口を揃えてそう言われましたから」
魔道具科のみんなも協力してるのか。だったら…
「私にもなにかできることありませんか?私も魔道具科の生徒ですし…」
籍は置いたままだからそう名乗ってもいいよね…。
「いいのですか!? 実はアスカ様にお願いしたいことがありまして…」
ストレリチア様のお願いというのは他でもない、学園祭でも使用したカメプロの貸し出し。
「いくつか設置して、観客席から大きく見えたら盛り上がるのではと思いまして」
「それくらいなら構いませんよ」
「本当に助かります! それと、今回の大会は兄と弟が主導しているのですが、あの…えっと…」
「なにか景品をだしますか?ストレリチア杯にはあったのに、無いのもよくないですよね?」
「そうなんです! …お願いできますか?」
「もちろん。私にできる範囲にはなりますが、ストレリチア様のお願いなら叶えますよ」
大喜びしたストレリチア様は、今も運営の準備をしているというお二人を呼びに行かれた。
明日から大会の始まるステージを走り回っていたみんなも、満足したのか戻ってきた。
「学園祭の時のより広いし、それなりに楽しめそうよ」
一通り見て周り、実際にステッキも使ってみた皆の感想は、概ねそんな感じで…。
「それなりなの?」
「だって…私達はアスカが全面協力した市街地をコピーしたものや、森のフィールドを知ってるんだよー?」
「あれと比べちゃうとね?お姉ちゃんってやっぱり凄いって実感したよ」
ドラゴライナ王国のかぁ。 (あっちは気合の入り方も凄いし)
まぁね。お祭りってのもあってアキナさんも全力だったし。
それでも、このフィールドで戦ってみたいっていうのはみんな共通なようで、参加できるようになったら来るのは間違いないだろうな。 (当然!)
そんな話をしていたらライアン様と一緒にストレリチア様が戻ってきた。
「アスカ様! お久しぶりです」
「お久しぶりです、ライアン様。あれからお身体の調子は如何ですか?」
「痛みもなく、絶好調です!」
顔色もいいし、さらに背も伸びてるから、その言葉に嘘は無いんだろうな。良かったよ…。
ライオネスト様は総責任者として手が離せないらしく、景品はライアン様に一任されたそう。
ちょうどティーの持っていた光るライトスティックタイプが気に入ったと言われたから、それをうちの子と被らないよう色やデザインに気をつけて作成した。
1チーム五人っていうルールに合わせて五つ。
優勝したチームに送られる。 (二人とも大喜び!)
少しでも盛り上がりに貢献できるのならいいけどね。
カメプロの方は、最終確認をしていたライオネスト様と合流して、相談しながら設置。当然隠蔽して私以外には見えないし、動かせなくしてある。
モニター代わりのものは、ボードレースの時に使用したものを再利用。
始めは、カメラ側を私が飛ばそうかとも言ったのだけど、固定でいいと言われて。
それならせめてと、運営本部側で集中制御できるようにしたから、任意でいつでも映すものを切り替えられる。
最近、ティー用にカスタムしたスマホ型を大きくしたパッドサイズのものをカメラの数に合わせて設置。
実際に写ってる映像を確認しつつ、そのパッドをタッチするだけで巨大モニターに表示。
二回タッチでオフにできるから、操作も簡単。
巨大モニターに映してるカメプロの数に合わせて自動で画面割もされるから、当然すべてを映すと一つ一つは小さく、少なくすれば大きくなる。
フィールドそのものも、何面かに分けて同時進行で試合をするから仕方ない。
護衛や見張りは騎士科、カメプロの操作は魔道具科の先生お二人と先輩達だから安心。
カメプロについては権利としてしっかりと保証はされているけど、私以外誰も作れないものだから、他国に権利のある魔道具を借りてるという扱いで、術式は非公開らしい。
カメプロの説明を再度したのけど、やっぱり意味がわからないって先生二人が頭を抱えてた…。
魔石の加工がそもそも出来ないらしいから仕方ないね。 (粘土みたいにコネコネ出来るのなんてママくらい)
みたいね…。イメージ通りの形に組成し直してるだけなんだけどな。
解説用の拡声魔道具もここに設置されてて、解説の人はボードレースの時と同じ人。
初めて顔を合わせた。
声に聞き覚えがあると思ったら、魔法学園のエリアに拡声魔法で放送をしている事務の先生だった。
実際に話してみても、よく通るいい声をしてるから納得。
報告をまとめながら最終確認をしているライオネスト様。
何かできる事がないかとそばにいたのだけど…
「ここまでしてもらえたら充分だ。本当にありがとう」
「いえ…。私もここでお手伝いしても…」
「いや、明日は妹の事を頼む」
「そうですよ! 明日は私達とのデートの約束です」
そういう事ね…。 (こっちはもしもの為にティーがみとく!)
ありがとう、助かるよ。 (ふふーん!)
うちの子達にも話は通っているそうで…。
私は明日、ストレリチア様、モルチアナ、サラセニアと過ごさせて貰えるらしい。 (楽しんできて!)
ありがと。リズの事よろしくね。 (ばっちし! プリンもいるし)
そうね。私もキャンディとノアを喚んでおくよ。 (おー! リズの新しいママ)
う、うん。そうなるのかな!?




