新たな拠点
島に関しては権利書にサインをして、正式に私達家族のものとして自由に使わせてもらえるようになった。
手続きに奔走してくれたピナさんには感謝だね。
アキナさんは夕波陛下から話を聞いていたそうで、くれるって言ってるんだから貰っちゃえーと。
両親に関してはもう諦めたようで、時々お邪魔させてください、とすっごい低姿勢。
そういうのは止めてって言って、止めるのに随分苦労した…。両親にあんな態度をされたら悲しくなるよ…。
島の場所はハルナさんの島の近くで、島そのものが私有地になるから、誰も無許可では上陸できない完全なプライベートエリアになる。
とはいえ、もちろん対策はするつもり。何があるかわからないし、戦えない子もいる訳だから。
一度見てみたいと言うみんなを乗せてドラツーで現地へ。 (発着場もいるの)
みんなの計画書にそれも書いてあったね…。
「うわー…本当に広い! お姉ちゃん、ここ全部?」
美亜の言う通り、上から見下ろしても相当広いな…。
「うん。でも海はみんなのものだからね」
うちの子たちは大丈夫だと思うけど、ゴミとかを海に捨てたりしないようにだけ徹底しておこう。
海の中はいじらないつもりだし。 (そうなの?)
小さな魚達も泳いでたでしょ? (うん、その子達の住処だから)
そう。私たちが貰ったのはあくまでも島で、海は使わせてもらうだけ。 (了解なのー)
上陸した後は、みんなでここにはあれを、こっちにはこれ…って木の棒で地面に書いてる。
私は基本の建物というか、ゲートを設置する家だけはぱぱっと建ててしまうつもり。
「ますたぁ、みんなだしてあげて〜ここなら広いからいいわよね〜?」
「そうだね、チョコ、クッキー、ラムネおいでー」
出てきたみんなといつも通りスキンシップをしたら自由にしててもらう。
「キャンディ、勝負です!」
「いいわよ〜ますたぁの前で泣かせてあげるわ〜」
「くっ…私のそんな姿をお見せする訳には!」
いきなり模擬戦か。広いからいいけど…。加減のできない子達でもないし。
私はティーとリズを連れてみんなとは離れ、少し奥まった島の中央付近にある林の傍に移動。
探索で見る限り動物くらいしかいないから、この林も間伐程度の手入れだけにしよう。
「この辺でいいかな」
「お母様、何するのです?」
「取り敢えず寝泊まりできる家を作るよ。何もないと困るでしょ?」
「リズ! ママのすっごい魔力動くから見てよう」
「はいなのです!」
リズを見ててあげてね。 (あーい!)
これでドラゴンの里でもらった資材も使い切るけどちょうどいいか。
必要な魔道具等も設置。その中には当然、島全体を覆う魔法防壁も。
部屋数や設備も最低限で、豪華なものでもない。
「凄いのです…お母様かっこいい…」
「ティー達のママすごいよねー!」
はしゃいでるうちの子可愛い。
ここを拠点に本格的なものを作っていけば…
「ちょっとアスカ!? 一人で作ってしまうのはひどいわよ…」
「みんなでやろうって話したのにー」
「ちゃんとわかってるから。リアもティアも落ち着いて」
「お姉ちゃんひどいよ…」
「未亜も話を聞きなさい。ここは開拓拠点! 何もないと作ってる間の寝泊まりどうするの!」
「え、アスカちゃん。ドラツーがあるじゃない。あれではダメなの?」
「快適だよね。かっこいいし!」
麻帆と奈々の言いたいことはわかるけど…。
「ドラツーは移動手段として使うこともあるから、動かせなくなるのは困るのよ」
「ティー、ドラツー飛ばせなくなるのやー!!」
「そうなのね、それなら…」
「お、おう…ティーちゃんドラツー好きだねー?」
「当然!!」
ゲートに関してはまだ計画段階で、魔道具もこれから設計するし、まだ今は保留だな…。
「取り敢えず中を見てみてね。必要なものは追加するけど、あくまでも仮拠点だから」
みんなもそういう事ならと納得してくれて、なんとか落ちついた。
「キャンディ、マスターが前以上にとんでもなくなってます」
「私達は力の一端を受け取っているのだから〜わかってたでしょ〜?」
「ですけど、間近であの魔力の動きは飛び上がりました」
「私は慣れたわ〜」
酷いなぁ。でも…
「驚かせたのはごめんね」
「いえ! 惚れ直しました。決意が揺れそうなくらいに…。本当にもうですよ!」
なんで私はノアに怒られてるの。 (怒ってはないかと)
そう?それならいいけど。
見て回ったみんなからは、仮の拠点ならこれで充分だと言われて、ここは完成。
「アスカ、何もない部屋があったわ。なにか置くつもりよね?」
リアは鋭いなぁ…。
まだ計画段階だからと前置きをして、ゲートに関しても説明。
好きに行き来できるのなら便利だと概ね好評。
「それって私達も?」
「勿論奈々と麻帆も自由に来れるようにはするけど、うちの家を経由するのは変えられないからごめんね」
「それは当然よね。わかったわ」
「ますたぁ、私達はずっとこっちで出ててもいいのかしら〜」
「もちろん構わないけど、私が常にここにいるわけでも無いけどいいの?」
「ん〜それなら、ここにますたぁが来たら喚んでもらえたらいいわ〜」
だよね、召喚獣の子達はそう言うと思った。
「姉ちゃん、それって家についてる地下への空間扉みたいなもの?」
「そうそう。その認識で間違ってないよ。違うのは時間のズレを修正する術式と転移の術式を追加でいれるから、定期的に私が魔力の補充をしなきゃいけないかな」
「…私も通れる…?」
「当たり前だよ。スピネルもユウキと好きな時に来ていいからね」
「ありがとう、アスカお姉ちゃん…」
「ねえアスカー。その魔力補充って私達には出来ないの?」
「出来るけど、かなりの魔力が必要よ?」
「私達はドラゴンなのよ?その上で更に増えてるの! それに何人もでやれば平気じゃないかしら?」
「だよねー」
「うーん…なるべく魔力効率はよくするつもりだけど、その返事は完成してからでいい?少しでも危険なら許可できないからね」
「それでいいよー」
これは徹底的に効率化しないとだめだな。
ゲートに関しては一旦保留。
そろそろ一度帰ろうと説得して、アキナさんにご挨拶と両親を迎えにドラゴライナ王国へ。
ただ、両親はこちらに残るそうで…。早く家を建てるためのお金を稼ぐんだと張り切ってた。
まだ続くお祭りの屋台で頑張るらしい。
ユウキとスピネルもギルドで仕事をしたいと言うから置いてきた…。
レウィまで取られちゃったな。あちらで父さんと朝の散歩にでも行くのかもしれない。
なので私達だけで自宅へ転移。
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出発した日の夕方には帰ってきたから、奈々と麻帆はうちに一泊してもらって、こちらに慣らしてもらう。
体調も見ておきたいし…。
ただ、やっばりというか何というか…この二人だけはコチラへ戻ると本当に一般人になるんだよな。
称号はついたままなのに。
本当にこの称号やスキルって、未だに理解の範疇を超えてるわ…。




