街の色々
もう数日、夕波王国でお世話になり…。
王妃様の夕波王国でのご用事も一端終わり、船での帰路。
当然私達も護衛として乗るつもりだったのだけど、王妃様が早くお城へ帰らなくてはいけないと、転移での移送を頼まれた。
船はテスト運行を兼ねて、本来の乗組員だけでの航海をしながら、帰国するそう。
「アスカちゃんのおかげで海竜達の護衛もあるから安心だわ」
「まず襲われることはありませんものね」
「ええ。嵐等への対策もバッチリだし、安全性の確認もとれたから…後はあの子達に任せるわ」
そちらは王妃様の作られた魔道具のおかげだと思う。
「アスカ様とのんびり船旅ができるかと思いましたのに…」
「おふね…」
シルフィーとアルフィーは行きも帰りも転移だからつまらなさそう。
「また乗ることもあるかもしれないわ。今は我慢して頂戴」
王妃様にそう言われて渋々諦めた二人と、アリアさん、ユリネさんを連れてアクシリアス王国へ転移。
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「ありがとう、アスカちゃん。また必ず顔を出してね?」
「はい。何かありましたらティーに言付けてください」
ベッドで丸まってるドラゴン姿のティーがピクって動いてて可愛い。
シルフィーに熱烈なハグをされて、アルフィーともハグ。
お二人は、またしばらくお勉強だと王妃様に言われてしょんもりしてた。
結構長い期間夕波王国に滞在してたからな…。
「アスカ様、昨日は楽しい一日をありがとうございました」
「私はアスカ様のお部屋で、お越しくださるのをいつでもお待ちしています」
アリアさん、ユリネさんともハグをしてお別れ。
夕波王国へ転移。
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ーー
私達も一度帰ろうと思っていたのだけど、ピナさんに止められてしまった。
「お嬢様。明日、先代様ご夫婦から時間をとっていただきたいと…」
「まさか…」
「いえ、現夕波陛下関連ではありませんからご安心を」
「そう?わかったよ」
なんだろう?お二人は仲直りできたのかな。
明日まで暇になってしまった私達は、みんなで街へお出かけすることにした。
「アスカちゃんがお土産にくれた本、すごく面白かったわ。私も実際に見てみたいのだけど…」
「麻帆は本当に好きだよねー、そういうの。勉強みたいで私はヤダ」
「勉強だなんて私は思ってないもの」
「絶対おかしい!」
性格の差が…。
「私も見せてもらったけど、ちょっと見てみたいわ」
リアのそのセリフに奈々以外は頷くから、多数決で行くことに決定。
展示をみんなで見て回ってるのだけど、渋ってた奈々も結局は楽しんでる。
「ね、アスカ。社会見学思い出すね」
「あー、言いたいことはわかる」
小学生の時に行った記憶があるな…。 (どこに行ったの?)
お菓子工場。帰りにお菓子ももらえたよ。 (ほぇーでもティーはママが作るのを見てるほうがいいの)
そっかそっか。また何か作るね。 (わほーい!)
リズは私が近くにいるのなら安心なようで、今は未亜に抱かれてる、
「ほらリズちゃん、これ見て。お姉ちゃんがくれた人魚の雫だよ」
「本当なのです!」
「こんな展示されるようなものをもらってたんだねー、私達」
「ねえ様、そこはほら、アスカだからよ」
「私も貰い物だからね?」
ノアにもアクセサリーや武器を作ってあげなきゃな。
展示してある文献を見ていた麻帆に呼ばれて、何かと思ったら…。
「これ、アスカちゃんが見てきた、沈んだ船の事じゃない?」
「かもしれないね…」
戦時中に、財宝を盗んで逃げた家臣がいて、そのせいで資金繰りにこまり、敗戦した家があったと。
この家紋、確かに見覚えがある。
金銀財宝の詰まってた箱に書いてあったな…。この鳥の羽根みたいな家紋。
その家はとっくに滅亡してるんだ…。
埋蔵金伝説として未だにトレジャーハンターが探し続けているお宝らしい。
持ってるな私。 (いっぱい拾った!)
うん、夕波陛下に受け取り拒否されてしまったのは、こういうトレジャーハンターがいるからか。
見つけた人のものになるからこそ、トレジャーハンターも探してるわけだね。
持ってるやつ、どうしたものか…。 (国の取り決めだし持ってれば?)
正直扱いに困ってるんだよね。
明日、先代様とお会いできるのならもう一度確認してみようかな。
展示を見て回ったあとは、露天で小腹を満たしてからお散歩。
連日夕波王国の街に出かけてるから、そこそこ地理にも詳しくなってきた。
今日はピナさんがアキナさんとドラゴライナ王国へ帰国してるから案内もないけど、なんとかなってるし。
それでもやっぱり大きな街だから行ったことのないエリアはあるわけで…。
どう見ても”花”の人たちが経営してる大人なお店だったりが並ぶエリアに入ってきてしまった。
「ねえ様がどんどん進むから変なところに入っちゃったじゃない!」
「だって、華やかな雰囲気でキレイだったから!」
うん、ケンカしてないで戻ろうか?
二人のケンカを止めてUターンしようとしたのだけど、まるで迷路のように入ってきた道がわからなくなった。
探索を使っても、本当に道がない…。 (とりこまれた!)
まさにそんな感じ。
幻術の類なら私は効かないはずだから、物理的に本当に道を塞がれたな…。
「ようこそアスカ様。サービスしますよって…みなさんで寄っていかれませんか?」
そう声をかけてきたのは見覚えのある狐の獣人さん。 (花のお頭…木に引っかかってた)
やっぱりか。
「すみません、子供もいるので…」
「承知の上です。その辺の配慮はお任せを」
敵意があるわけでもないし、大丈夫かな?
興味の有りそうな子もいるし…。 (未亜、奈々は興味津々)
ティアも気にしてるよね。
折角なのでお言葉に甘えて、案内されるままお座敷にお邪魔した。
豪華な食事等を出してもらって、私の隣には花のお頭…。
リア達が警戒してたから、ティーに事情は説明してもらってある。
「突然のご招待、不作法であい済みませぬ…」
「いえ、びっくりはしましたけど」
「前回の事でお礼をさせて頂きたく思いまして」
「うちの子達に随分こっぴどくやられてませんでしたか?」
「いえいえ…誰一人ひどい怪我もなく、結果的に陛下からの手厚い保証も受ける事ができるようになりましたから」
話を聞くと、花の人達もお店での収入しかなく、年齢的に引退するような人達は収入がなくなり困っていたそうで…。
「現役の者から幾らかは回してはいても、限度がありますよって…」
その人達だって自分の生活があるものね…。
今はこういったお店の傍ら、客から得られる情報を引退組が纏めて、鳥が陛下に持っていってるそう。
忍びのあるべき姿になったって事だろうな。
「アスカ様はウチがお相手いたしますから…別のお部屋へ」
「えっと…そういうのは遠慮しておきますね。お気持ちだけ受け取らせてください」
すごいびっくりされたけど、私には大切な人達がいるしね。 (一番人気だから断る人いないし)
詳しいね? (忍びは調査済み!)
うちの子のがよっぽどプロの忍びだわ…。 (ティー忍者推参!)
それはいいとして…未亜達はお店のお姉さん達に何を教えてもらってるのかな? (聞かないほうがいいの)
何となくそれはわかるけど、聞かないのも怖いような。
「なるほど、お相手がたくさんみえはるんね…そらウチではかないまへんなぁ」
急に訛ったお頭は楽しそうに笑う。
やれやれ…。みんな、そういうのはまだ早いと思うよー? (と、言いたいけど怖くて声に出せないママ)
…うるさい。 (八つ当たりダメ)
それはごめんね。
リズはシエルが抱いてくれて、聞かせないようにしてくれてるのだけは配慮なんだろうなぁ。
ただ、ティー! どうして未亜たちと混ざってる!? (バレたっ)
会話してて危うく見逃すところだったわ。 (コソコソ…)
私から逃げられると思ってるティーはまだ甘い! (きゃーー!)
逃走をはかったティーは魔力ドームで確保。 (無念…)
「みんなもそういう話をティーに聞かせないでね?」
「でもお姉ちゃん、ティーちゃんが一番詳しいよ?」
「どーいうことかなぁ?ティー…」
「ひぃーーー!」
本当にこの子は! (ぎにゃーー! ママお慈悲を!!)
流石に今回はもう慈悲はない!! 甘やかしすぎたわ。 (た、助けて…誰かー!)
その日、アスカの魔力ドームに包まれ、物理的に逃げる事も分体に意識を移すことさえも出来なかったティーは、後にこう語った。
「ガチギレしたママの魔圧はちょー怖かったの…。どんな手を使っても逃げられなくてママのヤバさを体感したのー…。 もうお説教はヤダ…ママのお説教ちょー怖い…。でもちゃんとごめんなさいしたら、ぎゅーってしてくれた! ママのぎゅーは幸せになるのー!」




