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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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ノアとキャンディ



最後にたどり着いたのは執務室。

おそらく私が魔王時代に一番長く過ごした部屋だろう。そして一番辛い思い出のある部屋。

「ここでしたね…私が最後に魔王様と過ごしたのは…」

「うん…」

私が執務テーブルで仕事をしていたら、飲み物を持ってきてくれて…突然倒れたんだよね…。


「またここで魔王様…いえ、マスターとお会いできるとは思いませんでした」

「私もだよ。あの時は本当に悲しかったから…今はまたノアがいてくれるって思うと、ここの悲しい思い出も変わってくるね」

「最後に抱きしめて頂いた温もりは今もはっきりと覚えています。お姿が変わられてもお強い魔力は変わらず…いえ、さらにお強くなられましたね」

「そうだね、あれから色々とあったから」

懐かしい執務テーブルの椅子に座ると、ノアが前のようにお茶を出してくれた。

そんなノアの行動…最後の記憶を揺り起こされる光景に限界だった。


「ノア!」

「ま、魔王様!?」

「もうあの時のようにいなくならないよね?」

「…はい。大丈夫です。私の体温感じませんか?」

「感じるよ…温かい。あの頃のまま」

ノアはまたここにいるんだ、そう思ったら嬉しいのと、かつての悲しい記憶がごちゃまぜになって…堪えようとした物も堪えられず…。


「ちょっと妬けるわ〜」

「お可愛らしくなられて…」

抱きしめてる私を撫ぜてくれるノアの手付きは優しくて…しばらくそのまま甘えてた。



「ありがとうノア」

「いえ! 以前の魔王様も素敵でしたが、今のマスターも素敵です」

「ますたぁ〜?もう! 浮気はだめよ〜?」

「浮気…?まさかキャンディ!?」

「ようやく受け入れてもらえたのよ〜羨ましい〜?」

「……私は戦闘メイドですから!」

「ノアはやっぱりメイドがいいのね?」

「はいっ! 落ち着きますから」

ファリスもノアに再会したら喜ぶだろうな…。

師匠であり、母親でもあったから。会わせてあげないと。




魔召界でまさかの再会をした私は、ノアに離れてからの話を聞かれるまま話してあげた。

その間も執務室には色々な召喚獣の子たちが出入りしてて、かつての魔王城とは似ても似つかないほんわかした癒やし空間になってる。


目を光らせてる厳しいファリスもいないからな…。

山積みの書類にへこたれて、サボろうものなら叱られたり。なんてことも無い。

ある意味、私にもファリスは母親みたいな人だったのかもしれないと、今ならそう思う。

ロウは…父親というよりお爺ちゃん。厳しいファリスを止めてくれて、自由時間をくれたり。

誰より心配症でもあったけど。


「ねえノア、覚えてる?私がノアの姿を借りて魔王城を抜け出した時の事」

「ええ、もちろんです! ロウ様が見てられないくらい心配なされて…ファリス様もオロオロと、普段からは考えられないくらい心配されてましたから」

「あのファリスが?」

「ええ。ロウ様より取り乱しておられましたから」

ちょっと想像できないな。戻ってきた時にはこれでもかってくらい叱られたから。


「お二人にとって魔王様は魔王様であり、なにより大切なお子様のような存在だったのだと思いますよ」

「そっか…」

長い時を超えて、二人のことをノアから聞けるとは思いもしなかった。


「それにしても…キャンディ?魔王様にベタベタしすぎです!」

「なによ〜。今日はますたぁと私のデートの日だったのよ〜?貴女のために時間を空けてあげたのだから感謝してほしいわ〜」

「魔王様、いえ! マスター?本当にキャンディを受け入れられたのですか?」

「うん、そうだね。随分長く待たせてしまったけど」

「いいのよ〜。こうしてくっついても嫌がられなくなったもの」

「以前でしたら物凄く抵抗されてましたよね!?」

確かにな…。ねっとりと絡みつくように触れてくるキャンディは苦手で嫌がってたのを覚えてる。

ノアはそれを身近で見てたから。


「今はキャンディも触れ方がいやらしくないというか、抵抗感もないよ」

「満たされてるもの…前は触れさせてももらえなかったから〜チャンスがあれば必死だったのよ」

「今はキャンディも恋人だからね」

「だからってそんなにいちゃいちゃしなくてもよろしいかと思いますが!」

「…やっぱり妬いてる〜?」

「くっ…私はメイド、メイドなんです!」

ノアは最強の戦闘メイドだけどね。


正式に私の召喚獣となったノアには、現世で召喚した時に家族を紹介する約束をした。

「現魔王様にもお会いしたいですし、噂のティー様にもぜひお会いしたいです。当時から居たとは仰られましても実際にお会いしてはいませんし…」

「そうだね。でも、リズには自由な未来を選ばせてあげたいから、魔王って呼ばないであげてね」

「了解致しました!」

あの子が自ら望んでそうなるのならその時は魔王と私も呼んであげればいい。

だけど今は…。


魔王城を再現してくれた魔召界の子達にもう一度お礼を伝え、現世に戻る。

「ますたぁ〜」

「行き来には必要なの?」

「ええ。繋がってないとだめなのよ〜」

まぁ、もう抵抗感もないからいいけど…。


またキャンディからの熱い抱擁と、触れるだけの優しい…

「キャンディ!? 嘘…あの魔王様が?あり得ません!!!」

ノアの叫び声と共に魔法陣の光に包まれて移動。




「おかえりママ!」

「お母様! おかえりなさいなのです!」

戻ったのは行きに居た部屋のベッド。

そういえば私すっごいラフな部屋着で行ってたな…。

寝起きにそのままだったから仕方ないけど。

久々の再会になんて格好してたんだ私…。


「お姉ちゃん、おかえりなさい。ティーちゃんから少し聞いてるけど、特別な場所に行ってたんだよね?お話聞きたいな…リアちゃんも聞きたがってたよ」

「うん、話してあげるよ。でも、リアは?」

「ティアとねー、王妃様に呼ばれてお仕事!」

「お仕事?」

「ドラゴンのお二人に意見を聞きたいからって言ってたの…」

そう。何かトラブルではないのね。 (違うよーもしかしたらアクシリアス王国からもドラゴンが飛ぶかもしれないからーって)

あぁ。なるほどね。了解。ありがとねティー。 (しばらくママと話せなかったから寂しかった!)

だね…。

「ティー、おいで?」

「ママ!」

飛びついてきたティーを抱き止める。

いつも以上に甘えてくるから、好きにさせてあげよう。

「…お母様」

「リズもね?」

二人を抱きしめてると本当にホッとするな…。


「私達がいてもやっぱりお姉ちゃんは違うね」

「この光景を見ちゃうとそう感じちゃうわね」

「あんなに遊んであげたのに!!」

「見ててくれてありがとね。奈々、今日は泣かさなかった?」

「もちろん!」

「協力して遊ぶゲームにしたからよ」

何してたの? (ママが買ってきてくれた面子と独魔!)

活用してくれたんだね。 (奈々とリズが組んでがんばったけど、ティーと麻帆ペアには…)

勝てなかった? (加減した! ティーは泣かさないので)

そっかそっか。ありがと。


リズも楽しかったようで、どうやって遊んでたか話してくれた。

「今度はお母様と組んでみたいのです!」

「それはズルい! 絶対誰も勝てないよね!?」

「奈々にはうちの子を泣かした仕返ししなきゃかな」

「ふっふー覚悟するのです奈々!」

「誰か味方は!?」

「仕方ないわね…」

「麻帆〜! でも頼りないな!」

「じゃあ一人で頑張りなさい」

「うそうそ! 見捨てないで麻帆様〜!」

「ええい! 鬱陶しいから絡みつくな!」



そんな感じにみんなと遊んでたら、ティアとリアも戻ってきた。

「アスカ、戻ってたのね!」

「何してたのか教えてよー!」

「話すから。二人の帰りを待ってたんだよ。 まずはお仕事お疲れ様。大丈夫だった?」

「ええ。本当に話をしただけだもの」

「ドラゴンでも種によって強さも違うから、そういうのをねー?」

ルナドラゴンのティアとリアはドラゴンの中でも強いほうよね。 (うんうん。今はさらに割増ドン! だけど)

う、うむ…。


キャンディにも協力してもらいながら今日の出来事を報告。

みんなも会いたいと言うからノアを喚ぶ。


「おいで、ノア」









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