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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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あの場所で…



明日はキャンディと出かける予定だけど、”私達”って言ってたから、チョコ達も一緒ってことよね。

となると、街には行けないし、どこへ行こうかな。

あの子達みんなが心置きなく居られる場所か…。なかなかに難しいな…。

「ますたぁ。行き先は私に任せてほしいの〜」

「いいの? あてがあるのね?」

「ええ〜! 明日のお楽しみよ!」

どこへ行くのか見当もつかないけど…、楽しみだな。



翌朝、寝てたら重みを感じて目を開ける。

…キャンディにのしかかられてるな。

「おはよぉ〜ますたぁ」

「おはよ。随分刺激的な起こし方ね?」

「ええ〜。さぁ、行くわよ〜」

「いきなり!?ちょっとまっ…」

「んっ……」

最後まで言わせてもらえないまま口を塞がれて、魔力の動きに流される。

な…に!? ❲大丈夫よ〜私に身を任せて〜❳

わかったよ…。


転移とか移動系の魔法に近いけど…。

キャンディを中心に広がる魔法陣。

え…これまさか!? ❲さすがね〜思ってる通りのものよ〜❳

本当にまさかだよ。私が行って大丈夫なの? ❲みんな喜ぶわ〜❳

それならいいけど…。

行き先は魔召界。召喚獣しか入れないと思ったよ。 ❲普通はそうね〜でもますたぁは特別❳


キャンディと話してる間に移動も完了。

目を開くとチョコ、クッキー、ラムネが出迎えてくれた。

甘えてくるから撫ぜてあげながら、周りを確認すると、すごい数の召喚獣の子達が…。

「お邪魔するね」

鳴ける子は返事をしてくれるし、何人かキャンディの様に話せる子は”いらっしゃいませ”って言ってくれた。

「人でここに来たのはますたぁが初めてよ〜」

「本当に良かったの?」

「この光景を見ても心配かしら〜」

「ううん…」

みんな歓迎してくれてるし、敵意なんて微塵も感じない。

召喚科で見かけた子達もいるし、バカ共から開放した子達も…。元気そうで良かった。



「こっちよ〜」

うちの子達に案内されて魔召界を歩く。

景色は自然豊かな場所って表現がぴったりで…。

遠くには山もあるし、森や川、反対側には海もあって地平線が見える。

人工物が殆どないのは、人型の子が圧倒的に少ないからだろうな。

見た感じキャンディみたいな、おそらくサキュバスだろう子達くらいしかいない。


それにしても…パレードの大行進みたいになってるんだけど。

「みんなますたぁに会えて嬉しいのよ〜」

「私もみんなに会えて嬉しいよ。びっくりはしたけどね」

小さな子達は足元をちょこちょこと走ってて可愛らしい。


「どこに向かってるの?」

「この森を抜けたら直ぐよ〜」

行き先は内緒ってことかな。


今回は流石にティーも来てないのか話しかけてこない。

まだ寝てるだけの可能性もあるけど…。

プリンがこちらにいれば、喚んだ時に伝わるのだろうけど、ティーは異世界にいる間、ほぼプリンと一緒にいるからなぁ。

昨夜も一緒に寝てたはず…。

小さくなって頭に乗せてたり、ティーの上を飛んでたりといつも仲良くしてるのを見てる。


「キャンディ、私がいないとティーが心配するかもしれないのだけど…」

「話してあるわよ〜あの子がますたぁにべったりなのはわかってたから交渉済みよ〜」

「なるほどね」 

こちらにティーは来れないから、前もって話をしたってことか…。


見慣れない植物や木々の間を通り抜け、森の中を歩く。

木の上にも色々な召喚獣の子がいて、見ているだけで楽しい。

「もうすぐ森を抜けるわ〜」

キャンディの言うように前方が随分と明るい。


森を抜けて、そこで私が見たものは…何処か懐かしい、見た事のあるような建物だった。

「キャンディ、これ…」

「懐かしいでしょう〜?」 

「どうしてここに…」

「みんなで作ったのよ〜」

目の前にあるのは私がかつて魔王だった時に暮らしていた、魔王城そのものだった。

曖昧だった記憶も鮮明になるくらいに、よく再現されている。


「私達みんながますたぁと出会った思い出の場所だから〜」 

「うん。そう…だね」

チョコ、クッキー、ラムネ、最後にキャンディ。全員を召喚したのもこの城の中庭だった。

そして長い時を一緒に過ごしたのも…。



城内もみんなが案内してくれるけど、記憶も鮮明になった私には勝手知ったる城。

どこに何があるかなんて手に取るようにわかる。

「よく再現したね?」

「これだけの数がいるのよ?しかもこちらでは制約も縛りもないもの〜」

それはそうか。

召喚獣として喚ばれてると召喚者の能力に縛られるし、契約の内容によっては殆ど力を出せなかったり、なんてパターンもあり得る。


「まずは〜やっぱりお茶よね〜!」

「じゃあ執務室?」

「それだとみんなが来られないから中庭に行くわ〜」

「大きい子もいるもんね」

いくら魔王城が大きく、様々な魔族に対応するために扉や廊下、部屋が大きくても執務室に大勢はいるのは不可能だ。

その点中庭なら、召喚をしたりもしてたくらいだからとてつもなく広い。


城内を通り抜け、中庭に出ると懐かしさと同時に見慣れないものに気がついた。

「あんなのなかったよね?」

「ますたぁとゆっくりお茶をできるようにテラスを用意したのよ〜」

「わざわざありがとね」

召喚したり、模擬戦をしたりもするから、よくある城の中庭のように花壇や噴水みたいな装飾は一切なかった。

そんな中庭に、小ぢんまりとしたテラスと、囲むように周りにだけ花が植えてある。


メイド服を着た子が一人、頭を下げて出迎えてくれた。

「ここの用意はこの子がしてくれたのよ〜」

「そうなんだ…キレイな庭だね。ありがとう…。ただ、この花だけはすごく見覚えがあるんだ…」

ここへ来るまでに森で見かけた植物は全く未知のもので、見慣れたものは無かったのに。


「これ…私の執務室の窓から見えるようにって…あの子が植えてくれてた花よね…」

魔界にも当然花はあるし、花を愛でる人達もいる。

この花を植えてくれた子もそんな一人だった。

白い小さな花を沢山つけ、窓を開けると爽やかな香りを風が運んでくれた。


「…ノア」

私が引き取り、ファリスがメイドとして育て…何故か最強の戦闘メイドにまでなった子。

そして、魔王時代に唯一私が看取った家族。

「まさかだよね?」

「覚えていてくださったのですね…魔王様」

顔を上げたのは記憶にあるノアによく似た女の人。

ただ、記憶と違うのは膨大な魔力。

あの子には殆ど無かったから…。

それでも…私がノアを見間違えるはずがない。



「久しぶりだね、ノア」

「魔王様!!」

駆け寄ってきたノアを抱き止める。

「本当に久しぶり…また会えて嬉しいよ。 でもどうしてここに?」

「私が望んで転生しました。また魔王様に会えるようにと…今度こそ強い魔力を備えて、お仕えしたいと…」

そんなに思ってくれてたんだね…。


「でも、もう私は魔王ではないよ?それに、あの世界ももう…」

「はい。それは皆さんからお聞きしています」

「それでも私に?」

「はい! 私が仕えるのは前世も今世でも魔王様お一人だけです! どうかお傍に…」

再会は本当に嬉しいし、気持ちも嬉しい。

でも…また私に縛ってしまっていいのだろうか…。

前世も最後の最期まで私に尽くしてくれてたのに…。


「ご迷惑ですか…?」

「ううん。違うよ。気持ちはすごく嬉しい。でも、ノアは自由なんだよ?したい事をしていいの」

「私の望みは魔王様に仕える事、それだけです!」

「ますたぁ、受け入れてあげて〜?ますたぁにまた仕えたい、その一心でここへ転生までしたのよ?」

「…ノア、本当にいいのね?」

「はいっ!」

「わかったよ。じゃああちらへ戻り次第召喚を…」

突然、足元に広がる魔法陣。

え…? なんで勝手に契約の魔法陣が!?


「へぇ〜此方だとますたぁになる人が同意すればそれだけで契約成立してしまうのね〜」

確かに今のは正式な契約の魔法陣だった。突然でびっくりしたけど…。

「くっ…ぅ…すっごいです…これが魔王様のお力…っ…!」

悶えるノアはちょっと見てられない。


「鍛えてあげたけど〜やっぱりますたぁの力を受け取るにはまだ未熟だったかしら〜」

元々ノアは魔力に恵まれてなかったからな…。

フラフラしてるノアを座らせてあげて、様子を見る。

…特に不調があるわけではないね。良かった…。


正式に契約してわかったのはノアの種族。

「キャンディ、ニンフってなに?」

「簡単に言えば妖精種ね〜。その子はドリアデスよ〜樹木のニンフなの〜」

「だから魔召界にはない花を咲かせられた?」

「そういう事よ〜さすがますたぁ、理解が早いわ〜」

「まさか、この為にみんなで魔王城を再現してくれたの?」

「ええ〜。再会するには相応しい場所が必要でしょ〜?」

「ありがとう…本当にありがとうみんな、大変だったでしょ」

「楽しかったわ〜みんなで一つのことをするのもね〜」

チョコ達からも楽しかったって感情が伝わってくる。

感謝しかないよ、本当に…。


ノアが落ち着くまで中庭でみんなと過ごし、色々な召喚獣の子たちも紹介してもらった。

みんな当たり前に触らせてくれるから、撫ぜてあげたり抱き上げたりとふわもふを堪能。

未亜が羨ましがるだろうな。


「魔王様、お手数おかけしました」

「アスカだよ、ノア。私の名前。これからはそう呼んで」

「そんなっ! 恐れ多いです!」

ブンブンと首を振って拒否された…。

「じゃあ〜ますたぁとか、ご主人様でいいんじゃない〜?」

「魔王様は魔王様なのですが…」

「私は今娘がいてね。その子が現魔王だからややこしくなるんだよ」

「そうなのですか!?それは不味いです…」

ノアは頭を抱えて悩んでる。


「では、マスターと。そうお呼びします」

「それでいいよ。キャンディもそう呼ぶもんね」

「これで慣れちゃってるもの〜」

仕方ない、諦めるか。


その後はノアの案内で、懐かしい魔王城を歩いて回った。







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