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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第八章

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寄り道



夕焼けに染まる街を歩く帰り道。

見知ったお店の前を通ったから、二人に許可をもらって立ち寄る。


「すみません〜」

「いらっしゃ…ってこの間のお嬢さんじゃないか。またなにか欲しかったのかな?」

「いえ、お約束のものを見ていただこうかと…」

「ほう…」

目つきが鋭くなった店主に、白鞘に納めてある刀を手渡す。


そっと抜いた刀身が鈍く光る。

刀ってこの瞬間が好き。


刃を上に、店の明かりへかざしながら睨めるように見てるから、ちょっと緊張する…。


「…いい腕してるね。これだけの重ねの厚さなのに肌がきれいで観賞用にも耐えうる、しかもバランスもいい…」

私が扱いやすいようにはしてあるしなぁ。


「今、ちょうどとある人が来てるから、その人にも見せていいかい?」

「かまいませんが…」

誰だろ…。 (お客か職人?)

どちらかだろうね…。


刀を持って裏へ行ってしまったから、暫く店の刀を見てた。

「お姉様、これって…」

「刀袋だね。拵の保護だったり、仕舞っておくときに入れておいたり、持ち歩くときに入れたりもするよ」

シエルは服以外でも興味を示すと真剣だから、またなにか思いついたのかもしれない。



「お嬢さんかい、これを打ったのは」

「は、はい」

少し強面のお爺さん…。 (職人っぽい!)

かな?


「試し切りをしてもいいか?」

「かまいませんが…」

「店主、用意してくれ」

「はいよ」


裏へ回るというので、私達もついていく。 (わくわく!)

水に浸してあった巻き簀をセッティングする店主。


「お母様、何が始まるのです?」

「私の作った刀の切れ味を見てみるんだよ」

「それは楽しみなのです!」

興奮気味のリズは危なっかしいから抱き上げておく。 (あんなのバッサリだよねー)

どうかな。いつもの魔刀とは違うし…。


刀を抜いたお爺さんから一種の覇気みたいな圧が…。

鍛えられてるな。 (武士!)

いや、職人であってると思うよ。


袈裟斬りに振り下ろされた刀は… (斬った?)

うん。 ほら、落ちるよ。 (時間差!)

ズズっとズレた巻き簀は中程から転げ落ちた。


残りの部分を逆袈裟、袈裟と斬り、刃を見てる。

「ふむ…刃こぼれどころか傷さえつかぬか…どんな鍛え方をしたらこんな…」

すみません。魔法です…。


鞘に納めた刀を返してくれたから、受け取ろうとしたのだけど…。 (はなさねぇ!)

「あの…?」

「いや、すまない。これを譲っては貰えないか?」

「すみません。武器は知らない相手に渡したくはないので…」

「そうか…」

なかなか離して貰えなくて、已む無くストレージへ放り込んだ。


「良いものだっただろう?」

「うむ…魔刀に関しては話を聞いても理解の範疇外だったからな。こちらならと思ったが…」

「そっちもですかい」

「あぁ。確かに鍛えてある筈なのに、肌に一切その痕跡がない。普通はどれだけ丁寧な仕事をしても鍛え肌に、痕や癖なりが出るものだろう」

「ま、それが誰が打ったか見極める一つの手段ってくらいには流派の癖があるものですな」

「きれいすぎるんだよ。始めは鍛え物かさえ疑った。どんな鍛え方をしたらあんなにきれいな肌になるのか…一定でムラがない」

魔法だし…。なんかごめんなさい。


「そうだ、一つ提案なんだが」

「はい?」

「近々、先代様への献上刀の募集が始まるのだが、出してみないか?」

「私の刀をですか? でも…」

「なにか後ろ暗いことでもあるのか? 自分で打ったというのは本当か?」

そんな言い方しなくても…。魔法で作ったから言いにくいだけで。 (むかつくじじーだ)

それは言い過ぎ。



「無礼ですね。黙って聞いていれば! 私はお嬢様が実際に打たれてるのをこの目で見ていました」

ピナさん!? (忍ぶのやめたらしい!) 


「ほう…、どうだった?」

「言うとでも? 既にこの事は夕波陛下、ドラゴライナ王国女王陛下に報告がいっています。発言に気をつけなさい」

「なっ…」

「貴方が謀ろうとしたのはドラゴライナ王国継承権第一位の王女様ですよ!」

私騙されそうだったの? (ゆるせねぇ!)


「別に騙すつもりはない! それだけの腕があるのなら、刀がお好きな先代様に見ていただきたいと…」

先代様、刀好きなんだ。 (そういえばいっぱい持ってた)

へぇー! ちょっとみてみたいな…。 (ユリズ・シーに置いた展示の中に、失われたと思われてた名刀が混ざってたからハルナさんに売ってくれーって言ってたっけ)

そうなの? (アスカちゃんからの預かりものやから絶対に売らへんで! 名刀ならみんなに見てもろたほうがええやろ! あんたが持ってったらしまい込んでまうやん! って)

ティーのね?ハルナさんのマネがうますぎる。 (ふふん)



「もし謀って懐へ、と考えているのなら改めなさい。我々を敵に回しますよ。何者か察しは付きますよね?」

「…俺も職人だ! 確かに欲しいがそんなことはせんわ!」

「と言っておりますが、どうれさます? 常に誰かをつけて見張らせますから」

「そんな手間かけるのなら出さないよ!」

「いえ、是非出してください」

えー…。


結局、ピナさんの熱い要望で出す事になったのだけど、店に預けるのはピナさんが嫌がるから、そのままピナさんに預けた。

「確かにお預かり致します…。書類等の準備はお任せください」

嬉しそうね、ピナさん。 (気持ちはわかる)


少しトラブったし、待たせてしまったシエルと未亜に謝って店を出た。

「あのじじーゆるせねーのです!」

「こら、リズ。言葉使い悪いよ?」

「だってティー姉も言ってたのです!」

「ティー…?」 

「気をつけます…」

お願いね。


「でも、お姉ちゃんの事を疑ったのは私も許せないなー」

「なの…お姉様がそんなことするわけないの…」

「ありがとう。みんながわかってくれてるから私はそれでいいよ。ピナさんがハッキリ言ってくれたし」

どうなるかはわからないけど、ピナさんが嬉しそうだったからいいか。


その日の夜には書類を持ってピナさんが来てくれたからサインだけしておく。

ただなぁ…。

「ねぇ、ピナさん。私は魔法を使って作ってるけど大丈夫なのかな?」

「お嬢様が言わんとしておられることはわかりますが、どの職人も全力…つまり自身の持てるすべての手段を駆使して刀を打ちます。それは当然魔法をも使うということです」

「じゃあ私のもズルにはならない?」

「もちろんです。お嬢様の技術なのですから」

「そっか、そう言ってもらえて安心したよ」

後ろめたさがなく出せるのなら一番だし。


サインした書類をピナさんに渡し、あとはお任せになってしまうけど…。

「確かにお預かり致します。 お嬢様の技が知れ渡るのは楽しみです。ふふっ…」

悪い笑顔してるけど大丈夫か…? (主が評価されるのは嬉しい)

ふむ…。出して恥ずかしいものにしたつもりはないから、後は先代様が気に入るかどうかだね。

さて、どうなるやら…。 (明日は奈々、麻帆の相手ー)

だねぇ。リアとティアは地球の方で出かけたいって言ってたし。 (こっちは目新しくないし)

それもそっか、あの子達には国は違えど出身地だものね。 (そうそう)


というか、連日お城のお屋敷にお世話になってるけどいいのかな? (アキナさん達もだし)

そちらは話し合いもしてるからでしょう? (関係者だから)

連日遊び歩いてるけどね…。 (それはそれ!)

お礼だけはちゃんとしないとな。材料も買ったし。 (またママはー)

ティーも食べるでしょ? (もっちろん! たのしみー)


 



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