ビーチと王女
二人を連れて近代ホテルみたいな宿泊施設に入り、店を探す。
ロビー近くに並べられた展示物を見ている人も結構いるなぁ。
好評みたいでなにより。
一階ロビーに、前には無かった魔道具の店が大きくエリアを締めていたから、ショップエリアを見つけるのは容易だった。
隣に併設されてるし…。ただ、魔道具の方はすごい混雑で魔族の人たちが行列の整理をしてる。
私達はそちらに用はないから、隣の店へ。
「ま、魔王様! ようこそお越しくださいました」
「ごめんね、宿泊客じゃないけど買い物って可能かな?」
「勿論です! オーナーのご身内ですし、それでなくても魔王様を歓迎しないわけがありません!」
他の客の手前、特別扱いしてもらうのは気が引けるけど、二人のためだし、今は有り難く乗っかろう。
「二人に合う水着とか扱ってる?」
「水着でしたら各種取り揃えております。試着もできますのでこちらへ」
案内してくれたのは女性向けの水着エリア。お礼を言って二人には自由に選んでもらう。
「好きなのを選んでいいよ。お金は私に払わせてね」
「でも…」
「私からのプレゼントだよ」
「…わかりました。ありがとうございます!」
「おねーさまありがとうです!」
楽しそうに選ぶ二人を見守る。
暫くしたらシルフィーがいくつか持って見せに来てくれた。
「アスカ様はどちらがお好みですか?」
片方は清楚な白いワンピースタイプ。もう一つは黒いビキニに長めのパレオとシャツを羽織るタイプ。
どちらも間違いなく似合いそうだけど…。
シルフィーの目線から選んで欲しいものが予想できた。
「たまには違うシルフィーも見てみたいから、黒がいいかな」
「そうですか!? ではこちらにします!」
正解だったみたい。よかった…。
「おねーさま、あるふぃーはこれがいいです!」
持ってきたのはトロピカル柄の短パンにシャツという、結構派手なもので…。
「アルフィーは本当にそれでいいのですか?少し派手ではありません?」
そう思うよね…。
「かわいいのにだめですか…?」
うん、本人が気に入ってるのならそれがいいか。
「じゃあそれにしようか。他にほしい物はなかった?」
「はい!」
お店の人に支払いをしようとしたら、受け取ってもらえず、代わりにメモを渡された。
なんだろう?と思ったら…。
”デートなんやろ?叔母でもあるアタシからのサービスや! 儲けさせてもろたから遠慮せんでええよ!”とハルナさんからの手紙だった。
いつの間に…と思ったけど月を雇ってるのならあり得るなと思い、有り難く厚意を受け取ることにした。
後でお礼言わないとね。
「さぁ、アスカ様も着替えてください!」
「えっ…」
「いっしょにあそんでくれないのですか…?」
うっ…そんなうるうるした目で見上げられると…。
「更衣室でしたらここのをご利用ください」
「ありがとう、じゃあ借りるね」
ストレージにシエルの作ってくれた水着を持ってて良かった。
水着に着替えて、二人に日焼け対策だけしてから海へ。
二人には浮き輪を手渡す。
使い方を教えてあげたけど、上手く乗れないアルフィーを抱き上げて乗せてあげる。
「おーぷかぷか〜です」
「アスカ様…」
何を訴えてるのかわかっちゃったなぁ…。それくらいいいけどね。
「失礼するよ」
シルフィーも抱き上げて浮き輪へ。
「きゃっ… すごい、浮いてます!」
あまり波は無いとはいえ、流されないよう二人の浮き輪についてる紐を掴んでおく。
ぱしゃぱしゃと遊ぶアルフィーの上げる水しぶきがエスカレートしていき、まともに被るシルフィー。
「アルフィー…?」
「しるふぃーねーさまずぶぬれー! あははっ」
「もう! お返しです!」
ばしゃーんと頭から派手に水を被ったアルフィー…
「…あすかおねーさま、しるふぃーねーさまがいじめます! おとなげないです!」
「アルフィー!?そこでアスカ様に頼るのはズルいです!」
「二人ともケンカしないで。楽しいもの見せてあげるから。ね?」
その言葉でケンカも収まったのは良かったのだけど、一言で効き目凄すぎない?
二人で”何だろう?”って楽しそうに…今の今までケンカしてたのに。 (ママパワーだし)
まぁ収まったのならいいか…。
二人を魔力ドームで包み、海底散歩へご案内。
泳ぐ小魚達に釘付けだったから、比較的浅いエリアをゆっくりと歩く。
「…魔力ドームにこんな使い方があるのですね、アスカ様は魔法を素敵に使ってくださるから…本当に楽しいです」
「あるふぃーにもできるようになりますか?」
「私でもこれは難しいですから、一緒にお勉強頑張りましょうね?」
「はいっ!」
私にわかる事なら伝えられるけど、何より魔法を楽しいものだと思ってもらえて、喜んでもらえたのが一番嬉しかった。




