商売繫盛
本丸で開かれたのは豪華な海鮮バーベキューで、新鮮な魚が本当に美味しい。
野菜やミノウシといった肉類もあり、よりどりみどりだからうちの子達が大喜び。
夕波陛下とも打ち解けたのか、以前のように険悪な雰囲気もなく、談笑しながら食事をしていてホッとする。
陛下が落ち着いたからだろうか…?もしくは、キャンディかアリアさんから話を聞いたからとか?
どちらにしても私は離れていたほうがいいかもな。火種になりかねないし。
ティーとリズを連れて、みんなから少し離れた場所で食事。
用があればうちの子たちなら寄ってくるだろう。
そう思っていたのだけど、真っ先に近づいて来てくれたのはハルナさん。
「久しぶりやね、アスカちゃん」
「ご無沙汰しています」
「もうかりまっかー?」
「ぼちぼちやなー!」
ティー、なにそれ…。 (商売人への挨拶?)
そんなの聞いたことないよ! ノリいいなぁハルナさん。
「実際はボチボチどころか大儲けやけどな!」
そう言って笑うハルナさん。何で儲けたんだろう? (ひとぉーつ、ママの寄贈した展示!)
何が始まるのよ…。 (ふたぁーつ、ママの考案した魔道具)
まだあるの? (みいーつ、魔道具の講習会)
もうないよね? (よぉーつ、………)
なに…? (三つだった)
あ、はい。
展示って…人魚の住処から引き上げた海戦国時代の貴金属類よね? (そうそう)
魔道具は海で使うあれ? (それもだけど、一番人気は…)
何…? (シャワーとドライヤー!)
あぁ…。グリシア王国でも王妃様が欲しがったくらいだから、こっちでも人気かー。 (あれ目当てにお客も増えて、予約でいっぱい!)
ハルナさんの上機嫌はそれが原因なのね。 (宿泊客しかショップに入れないから)
ショップって魔道具の? (そうそう。展示を見に来た人が、海で試運転してた魔道具を見て、それが街に伝わってすごい魔道具がある! って騒ぎになったから、パニックにならないようにって)
なるほど。さすが商売人。入場制限みたいなものをしっかり考えてるんだね。
ハルナさんから既に私の取り分がギルドへ振り込まれてるからと、明細も頂いた。
…何これ。 (ゼロがいっぱい)
「多すぎませんか?」
「何言ってんの! しっかり契約どおりやから」
「そうですか…ありがとうございます」
「儲かってんのに何をしけた顔してんの! ここは笑うとこや」
「あはは…」
使いみちがないからちっとも笑えない! (ハハッ)
よし、後で街に行って散財しよう。そうしよう。
アルフィーも街に行きたいって言ってたし。 (ティー達もー)
一緒に行こうね。もう何でも買ってあげるよ。 (おおー)
…何でもは言いすぎか。 (ちぇー)
ほしいものあるの? (んー別にない!)
食材とかでもいいし、買ってなにか作ろうかな。 (それがいい!)
はいは〜い。
バーベキューの間にも、アキナさん、王妃様、夕波陛下とで様々な話が進んだらしく、私も夕波王国側の船に取り付ける旗の正式な依頼を受けた。
折角だから、一番中心になるシエルと一緒に仕事を受ける。
「条件はそれで構わないのじゃ。よろしくお願いする」
「わかりました。こちらの要望を聞いていただいてありがとうございます」
「あ、ありがとうございますなの…」
私達が出した要望は、夕波王国の服飾関連のお店での買い物。
紹介してもらうだけのつもりだったのに、請求は全て夕波王国持ちという太っ腹なもので…。
「欲しいものを欲しいだけ買うといいのじゃ。街の経済も回るのじゃからな」
そう言ってはくれてるけど、もちろん加減はする。
「遠慮なぞしなくてよいのじゃぞ? こんな事で恩が返せるとは思わんのじゃが、これくらいはさせてくれぬと妾の面目もたたんのじゃ」
「ありがとうございます」
お見通しか…。店側にも話は通しておいてくれるそうで、その店へはピナさんが案内してくれる。
「街の店などは全て把握しておりますからお任せを」
「お願いね」
さすが忍び。 (生まれ故郷だし)
そうだったね。
バーベキューがお開きになった後は、シルフィー、アルフィーの二人と街へ行く事になった。
「アスカ様、お願いします」
「はい。絶対に守るから安心してね」
みんなは付いてこないのかと思ったら、なにやら話し合いをして決まったそうで…。 (今日は二人のターン)
次もあるってことね? (そゆこと)
りょーかい。
護衛もつかないらしいから、責任重大だな…。 (魔道具はつけてるし) ❲私もいるのよ〜❳
それでもだよ。少しの怖い思いさえさせたくはないからね。 (さすママ!) ❲妬けるわ〜…❳
「じゃあ行こうか?」
「はいっ!」
「おねーさまおねがいします!」
右手はシルフィー様に腕を組まれ、左手はアルフィー様に繋がれて自由はないけど、嬉しそうな二人を見ていると何も言えない。
「どこか見たいところはある?」
「やはりユリズ・シーでしょうか、海岸がきれいだとティアから聞きましたから」
「おねーさまのまどうぐで あそんだとききました!」
そういえば羨ましがってたんだっけ。
街の店を少し覗きながら、ハルナさんの作ったという大きな橋を渡り、ユリズ・シーへ。
遠くで魔族の人たちが並んで頭を下げてたから手を振っておく。
前みたいに走り寄って来なくてよかった。二人もびっくりするだろうし。 (月から邪魔しないようにと通達がいってるの)
そうなのね…。ありがとう。 (ピナさんに伝えとくの)
ティーもありがとね。 (にゅふふー)
海岸では何組かのお客が水上バイクにのっていたり、ビーチチェアで寛いでいたりと、地球だと見慣れた光景になってる。
「あれがアスカ様の考案された魔道具ですか?」
「そうだね。欲しかったら作れるよ?」
「すごい! でもうちのおうこくでのるのは、さむそうです」
「そうですね、この国ほど暖かくもないですから…」
「アクシリアス王国は年中通して心地よい温度だものね」
「海の水はとても冷たくて…」
「あたたかいうみで およぎたいです…」
ユリズ・シーの中にある店で水着も売ってないかな? (あるよー)
魔道具のお店は宿泊客限定って聞いたけど普通の店なら利用できるよね。
普通のお土産とかもあるだろうし。




